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【ずとまよ歴史#1】ずっと真夜中でいいのに。1年目2018年の歴史 /「秒針を噛む」〜「正しい偽りからの起床」リリースの経緯、「真夜中じゃないけど夜にするライブ」を徹底解説!

イントロダクション

 みなさんは「ずっと真夜中でいいのに。」が歩んできた、その歴史をどれくらいご存知でしょうか。この動画では初投稿作品「秒針を噛む」のMV公開からファースト・ミニアルバム「正しい偽りからの起床」リリースまでのずとまよ1年目、2018年の歴史を、当時の状況を追体験できるようまとめてみました。ずとまよの独特な世界観に魅了されている方も、最近ファンになった方も、この動画を見ればずとまよの歴史がわかります。
それではいってみましょう。

ーこれまでのずっと真夜中でいいのに。ー

激震のデビュー曲『秒針を噛む』

 2018年6月4日。この日、突如YouTubeに投稿された新人アーティストの楽曲が、多くの音楽ファンの心を掴みました。ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』。ボカロPぬゆりさんが一部作曲と編曲、アニメーターWabokuさんがMVを手掛けたこの曲。歌唱に加え、作詞作曲をも務めるフロントマン、ACAねさん。今後もずとまよ全楽曲の作詞作曲と歌唱を手がけ続ける彼女の手腕は、大きな反響と驚きをもって迎えられました。公開されるや否や、その独特な音楽性と映像美、透き通るような歌声が瞬く間に話題を呼び、再生回数は急激に増加。

一週間を待たずして10万回再生。

その翌日には20万回再生。

すぐさま50万。

20日後には100万回。

1ヶ月後には一気に200万回再生。

2ヶ月後、勢い止まらず怒涛の500万再生。

 無名の新人アーティストだった『ずっと真夜中でいいのに。』の名は爆発的に広がっていきます。ですがこの時点で、ずとまよの全貌は謎に包まれていたようです。「ずっと真夜中でいいのに。」それはロックバンドなのか、ACAねというシンガソングライターの活動名義なのか、プロジェクト名のような意味合いのものなのか。メンバーは?そして「ACAね」とは一体、何者なのか。顔も年齢も明かされていない、謎に包まれたアーティスト。今も一貫したそのコンセプトは当時から人々の興味を惹きける要素のひとつだったようですね。

「秒針を噛む」より引用

 ここで「秒針を噛む」MVの小ネタ。この背景イラスト。実はACAねさんが描いたイラストとのこと。2018年11月10日におこなれたYouTube配信でおっしゃられていたそうです。ずとまよのマスコット的キャラクター「うにぐり」くんが初出(しょしゅつ)したのもこのMVです。名付けの親はもちろんACAねさん。

ーこれまでのずっと真夜中でいいのに。ー

当時のACAねさんの投稿

 ここで当時のACAねさんが自身のSNSに投稿した言葉を振り返ってみましょう。ミステリアスなキャラクター性を印象づける謎めいた投稿が多く見られる一方で、楽曲への熱い思いを伝える投稿も見受けられました。

今ではお馴染みのリリース前の楽曲の歌詞のリーク投稿。「脳裏上のクラッカー」の歌詞を楽曲リリース前に投稿しています。

 こちらは5年後にリリースされる「花一匁」の歌詞の一節ですね。実は当時「黒く塗りつぶす僕らを」という曲名でライブで披露されていた言われています。とはいえこれが実際リリースされるのが当時から数えて5年後。ACAねさんの底知れないクリエイティビティを象徴する、まさに伏線と呼べるような投稿記録です。

 こちらは「彷徨い酔い温度」のプロトタイプ的な歌詞に見えますね。この頃から歌詞リーク投稿は数多く見られます。

 こちらは歌詞創作についての言及でしょうか。鑑賞者側の自由な解釈を容認する懐の深さが、この時点ですでに伺えます。こういったスタンスは今でも変わらないですよね。

初ライブ『真夜中じゃないけど夜にするライブ』

 「秒針を噛む」の公開から約1ヶ月後、200万再生を達成した頃である2018年7月9日、ずっと真夜中でいいのに。は初ライブ『真夜中じゃないけど夜にするライブ』を同年8月29日に開催することを発表します。このライブは完全抽選制のシークレットイベント、会場の詳細はチケット当選者のみに知らされるという、ミステリアスな演出が施されていました。

 その一部始終を当時のライブレポなどから紐解いていきましょう。

 会場となったライブハウスは代官山LOOP。こちらは残念ながら2021年5月に閉店してしまいました。キャパはスタンディングで約300人。チケット代は、たったの1500円。今では考えられない価格ですね。この日行われた初ライブでは、ずとまよらしい独特の世界観が既に感じられ、会場全体がその雰囲気に包まれていたようです。 

謎のオブジェたち

入場時に“メガネ”を手渡されてフロアに足を踏み入れると、上手側のスピーカーの上に置かれたペンギンのぬいぐるみが目に飛び込んできた。それだけでなく、ステージにはマンボウ、エイ、アカシュモクザメのぬいぐるみが吊るされていたり、小鳥の鳴き声や、砂利道を走る音、包丁で何かを切っている音など、様々な効果音がSEとして流れていたりと、ちょっと不思議な雰囲気。

ライター 山口哲生によるレポより引用
https://spice.eplus.jp/articles/207422  

 観客に手渡された『メガネ』。このメガネは視界を完全に遮る"目隠し"のようなものでした。会場には独特なオブジェが並べられ、様々な効果音が流れるなど、特異な演出が随所に施されていました。この時点で既に、ずとまよのライブ特有の、世界観の構築と観客を巻き込むインタラクティブな体験の片鱗が見られます。
 加えて、数種類の缶バッジやメッセージカードも配布されていたそうです。初ライブでありながら、単に音楽を届けるだけでなく、特別な体験を提供する場にしたいという意図がはっきりと感じられますね。

ネットの海で発見した資料
  1. 秒針を噛む

  2. Dear.Mr「F」 ※当時未発表曲

  3. サターン ※当時未発表曲

  4. 黒くぬりつぶす僕らを ※未発表曲

  5. なんでもないや [RADWIMPS]

  6. レディーレ [バルーン]

  7. 片目で異常に恋してる [ジェニーハイ]

  8. フロントメモリー [神聖かまってちゃん]

  9. Lemon [米津玄師]

  10. シャルル [バルーン]

  11. 命ばっかり。 [ぬゆり]

  12. 勘冴えて悔しいわ ※当時未発表曲

  13. 秒針を噛む

 こちらがセットリストです。「秒針を噛む」以外のずとまよ楽曲は全て未発表曲。さらにセットリストの半分はカヴァー曲が占めていました。中でも、後に神聖かまってちゃんとコラボしてカヴァー音源をリリースすることになる「フロントメモリー」や、投稿サイトにアップされてファンを喜ばせたぬゆりの「命ばっかり」、そして元素泥団子ツアーの一部公演でも演奏されたバルーンの「シャルル」などが披露されました。

ACAねさんXより引用

ーこれまでのずっと真夜中でいいのに。ー

暗転。ステージに「秒針を噛む」のミュージックビデオが流れ始めた……のだが、バンドインするタイミングでガラスの割れる音がして、映像が止まる。そして、「お手元のメガネをお掛けください」という指示が映し出された。会場がどよめく。

ライター 山口哲生によるレポより引用
https://spice.eplus.jp/articles/207422

 入場時に渡された“メガネ型の目隠し”によってライブは、観客の視界を完全に遮った状態でスタートしました。

「まだ偽りでありんす」で配布された目隠し
https://alt-graphy.com/blog/2019/01/12/zutomayo-1st-live-mada-itsuwaride-arinsu/

 1曲目は『秒針を噛む』。しかし、曲が始まっても観客は目隠しをされているため、何も見ることができません。その後、“メガネ”を外すよう指示が出され視界が開けると、目の前には笑顔のACAねさんが立っていたそうです。
 この日のライブでは、『Dear.Mr.F』について「フランケンシュタインが人間に恋する歌」とMCで補足し、また「サターン」は「遠距離の恋の曲」と説明されていました。こうしたMCの発言は、楽曲への理解や考察を深めるヒントとなるものです。このような楽曲に込めた思いを語るスタイルは、現在のライブでも時折見られますが、「秒針を噛む」以外の楽曲が全て未発表だったこの日には、特に丁寧な説明がなされていたのかもしれませんね。

「黒く塗りつぶす僕らを」ではダンサブルなビートに、オーディエンスは自然と身体を揺らし、クラップも起こっていたのだが、早口でまくし立てるAメロには〈ずっと真夜中でいいのに〉という歌詞があり、かなり重要な位置づけの曲なのかもしれない。

ライター 山口哲生によるレポより引用
https://spice.eplus.jp/articles/207422
Xより引用
リッケンバッカーが見えます

 数年後、「ずっと真夜中でいいのに。ってこぼした午前5時」と歌い出す早口でまくし立てるAメロの曲が、とあるライブで突如披露され、観客を驚かせます。しかし、それはまた別の機会に詳しくお話しするとして。
 この日のライブの本編を締めくくったのは、当時未発表曲だった『勘冴えて悔しいわ』でした。この曲について、ACAねさんは「イジめられたりしたんですけど、結果的に良い経験になったなっていう歌」とMCで補足していたそうです。
 また、「夜中にいろんな感情を抱えながら曲を作っている」というACAねさんの制作スタイルも披露され、ファンとの距離感を縮めるような一面も垣間見えました。

Xより引用

「私は真夜中がすごく好きで、夜中に悔しいことや考えさせられることを思いながら曲を作っています。これからも新曲をどんどん作っていくので、ぜひ楽しみにしていてください。」

ライター 山口哲生によるレポより引用
https://spice.eplus.jp/articles/207422
Xより引用

 アンコールでは、再び『秒針を噛む』が披露されました。観客も一緒に歌うことを促されたそうです。現在のライブでおなじみとなったしゃもじを使ったコールアンドレスポンスの原型が、既にこの初ライブで垣間見られていたのかもしれません。約70分間、全13曲で構成されたこのステージは、ずとまよが確固たる存在感を持つアーティストであることを強く印象付けるものでした。

ミニアルバム録音開始

 初ライブを終え、ずとまよは「正しい偽りからの起床」のものと思われるレコーディングを開始します。

 連日、レコーディングに勤しんでいると投稿されていますね。

れく、れっく

 レコーディングの最中に投稿されたと思われる、のろいの歌、つまり「サターン」についての投稿もみられます。

 「どうにかしてます」、というのはアレンジやレコーディングの過程でなにか試行錯誤があったということなのでしょうか。

 余談ですがこの時期に投稿されたカヴァー動画でオススメなものとして100回嘔吐さんの「NANIMONOにも成れないよ」があります。概要にリンク貼っておきます。コレは、必聴ですよ。

デビューアルバム、1stライブ発表

 2018年10月2日。「秒針を噛む」投稿から4ヶ月、初ライブから1ヶ月ほどたったこの日に2曲目にあたる「脳裏上のクラッカー」のMVが公開されました。アレンジを担当したのは、後にずとまよの常連アレンジャーとなる100回嘔吐さん。そして、映像は「秒針を噛む」に続き、アニメーターのWabokuさんが手がけています。このタッグによって生まれた新たな楽曲と映像美が、さらに注目を集めるきっかけとなりました。

 サビの急性な転調。後ろ向きとも前向きともとれる、曖昧で不思議で少し不安定で揺さぶられるような歌詞。また、「秒針を噛む」でも印象的だったカラフルで南国調にも聴こえるキレの良いピアノフレーズが、この楽曲でも際立っています。MVでは実写のストップモーションも使用、実験的なアプローチに惹きつけられますよね。カメラ持ってるニラちゃんも、なんだか印象的。
 そして同日、ファーストミニアルバムである「正しい偽りからの起床」が11月14日に発売されることが発表されます。

 さらにこの日は2019年1月11日「渋谷 CLUB QUATTRO」にて「1st LIVE 〜まだ偽りでありんす。〜」の開催が発表されました。キャパ約750人。

 「秒針」のMV公開から4ヶ月経った10月2日。この日は新曲公開とアルバム情報解禁、ライブ情報のリリースと、ずとまよが一気に動きをみせました。数日後にはファンにはうにぐりアイコンでおなじみ「ずっと真夜中でいいのに。(スタッフ)」のアカウントも開設されました。

ずっと真夜中でいいのに。(スタッフ)」Xトップ

 アルバムの発売が間近に迫った2018年11月6日、新たな楽曲「ヒューマノイド」のMVが公開されました。アレンジは 関口晶大(せきぐちあきひろ)さん、ラムシーニさん、Naoki Itaiさんと連名。彼らによる尖ったサウンドデザインは、ずとまよに新たな一面をもたらし、3曲目にしてリスナーの期待を大きく裏切る驚きと新鮮さを提供しました。
  「秒針を噛む」や「脳裏上のクラッカー」のどこか暖かさを感じるサウンドとは対照的に、「ヒューマノイド」では性急なBPMと細やかなシンセフレーズがクールで洗練された雰囲気を醸し出しています。デジタルな仮想世界を描いたかのような歌詞と見事に融合し、ずとまよの世界観を新たな形で提示する楽曲となりました。
 歌いだしは印象的なアラビア語歌詞である

レイラ サイダ サブアッタッシャル 
マラハバ マッサラーマ マダ

ずっと真夜中でいいのに。「ヒューマノイド」

「レイラ」という単語は、「秒針を噛む」のアウトロにも登場する印象的なフレーズ、「ハレタレイラ」に含まれています。この「ハレタレイラ」、直訳すると「レイラ(という人)がやってきた」となります。レイラはアラビア語や英語圏で女性の名前としてよく使われる固有名詞ですが、そのニュアンスには「夜」を表す意味も含まれるそうです。これを踏まえると、「ハレタレイラ」は意訳して「夜の訪れ」と解釈することができます。このフレーズには、終焉を意味するようにも、希望や安息、あるいは自分を取り戻した瞬間を表すようにも聴こえる、多層的な意味が込められているように感じます。また、「ずっと真夜中でいいのに。」というバンド名とのつながりも感じさせます。「ハレタ」を日本語として「晴れた」と解釈し、「夜が明けた」と捉えるのも面白いですね。
 こうした言葉の奥深さが、ずとまよの歌詞の魅力の一つです。
 では、改めて「ヒューマノイド」の冒頭を見てみましょう。直訳すると以下のようになります。

良い夜を(夜の挨拶) 17
こんにちは さようなら 何?

ずっと真夜中でいいのに。
「ヒューマノイド」冒頭歌詞の直訳

 この暗号のようなフレーズは、アラビア語の定型文的な挨拶を連続して並べたものです。挿入された「17」を意味する「サブアッタッシャル」は、年齢を示しているのかもしれません。日常的な言葉を非日常的に響かせ、異世界感を演出しているように思えます。不可思議な言語感覚が、楽曲全体の世界観をさらに深める要素となっていますね。

 MVは、この曲で初めてsakiyamaさんが担当しています。独特なタッチで描かれる緻密な線画が非常に印象的で、映像全体に独自の雰囲気を与えています。また、歌詞をリズミカルに表示するスタイルは、ボカロカルチャー特有の文法が強く感じられる点も特徴です。
 ちなみに、MVのラストで駅の向かい側に立つ女性が着ている衣装は、代官山LOOPの公演でACAねさんが実際に着用していたものだそうです。この女性をACAねさんと解釈することもできそうですね。自由な解釈の余地があるのも、ずとまよのMVが多くの人に愛され、繰り返し楽しめる理由のひとつではないでしょうか。

ファーストミニアルバム『正しい偽りからの起床』

 2018年11月14日、ファーストミニアルバム『正しい偽りからの起床』がEMI Recordsよりリリースされ、「ずっと真夜中でいいのに。」はユニバーサルミュージックを販売元としてメジャーデビューを果たしました。

ACAねさんのXより引用

 オリコン最高位週間8位、Billboard Japan Hot Albumsでは最高位週間3位とスマッシュヒットを記録。翌年発表された「第11回CDショップ大賞2019」の入賞作品に選出されるなど音楽的評価も高まりました。

第11回CDショップ大賞2019より引用
http://www.cdshop-kumiai.jp/taisho/archive/11-2019/

 この年の受賞作は、今でもマスターピースとして語られる名盤揃い。この中にずっと真夜中でいいのに。の処女作が、しかもミニ・アルバムで選出されているというのは、ファンとしてはちょっと嬉しいですよね。

 初回盤はずとまよのフィジカル初回盤で今後お馴染みとなっていく所謂「魔導書」仕様。当時は「豪華 真夜中の魔法使えそうなBOX仕様」と銘打たれていたようです。

ブログサイト「コトノハノ」より引用
【画像】『正しい偽りからの起床』初回版開封レビュー【ずっと真夜中でいいのに。】
https://cotohato.com/zutomayo_itsuwarikara/

また初回盤には特典として「Music Video アート集」と

ブログサイト「コトノハノ」より引用
【画像】『正しい偽りからの起床』初回版開封レビュー【ずっと真夜中でいいのに。】
https://cotohato.com/zutomayo_itsuwarikara/

「ACAね解説付き全曲コード譜」が封入されました。

ブログサイト「コトノハノ」より引用
【画像】『正しい偽りからの起床』初回版開封レビュー【ずっと真夜中でいいのに。】
https://cotohato.com/zutomayo_itsuwarikara/

【引用元】

 また、「真夜中じゃないけど夜にするライブ」で会場に貼られていたACAさんが描いたイラストが初回盤のうち、たった8枚に封入されていたそうです。このような、ちょっとイタズラっぽい仕掛けは、ずとまよらしい遊び心を感じさせますよね。また、この手描きイラストを思い出させるアイテムが、後のライブでも配布されることになりますが、それについてはまた別の機会にお話ししましょう。(泥団子の画像、バッジ挿入フェード)

収録曲は
「秒針を噛む」
「ヒューマノイド」
「サターン」
「雲丹と栗」
「脳裏上のクラッカー」
「君がいて水になる」

 このミニアルバム発売に際してACAねさんは各曲に対して、簡単な解説文のような投稿をされています。そちらも順を追って見ていきましょう。
まずは「秒針を噛む」

そして「ヒューマノイド」

「名付ける」「属する」といった言及が興味深いですね。難解でミステリアスな歌詞ですが、応援歌と言われると変に構えずに聴ける気がします。
そして「サターン」

 アレンジは久保田真悟さん。「正義」のアレンジも担当されたお方ですね。バラードなのにダンサブルで、どんどん展開して広がっていくかのようなメロディとアレンジが印象的ですよね。「のろいのうた」「届けない祈り」。このあたりもしっかり振り返っておきたい言及ですね。
そして「雲丹と栗」

 アレンジを手がけたのは100回嘔吐さん。効果音のような素材が散りばめられたサウンドが非常に印象的です。そして、後半の歌詞「時間が僕を何者でもなくしてくれる」という一節についてですが、私にはこれが間接的に「死」をテーマにしているように感じられます。この解釈を前提にしつつ、「終着季」「魔がさす」という解説をみると、不安定な心情を描きながらも、同時にどこか心地よさを与える。そんなずとまよ特有の多面的な歌詞の魅力を、改めて感じられる一曲だと思います。

そして「脳裏上のクラッカー」

 この解説文はかなり意味深で難しいなと思っています。とくに「誕生日の悲劇」という一文。添付された画像は、定かではないですがACAねさんの幼少期の誕生日の写真にも見えます。「悲劇」とは一体なにを指しているのか。ACAねさんのパーソナルなエピソードを推測する術はないですが、何らかのトラウマを乗り越えようとする、そんな一曲なのかもしれません。クラッカーの音はきっと「笑おう!」のとこですね。ハンドクラップみたいな音のそれです。
そして「君がいて水になる」

 アレンジは神山羊(かみやまよう)さん。ボカロPの有機酸として活動されていた方ですね。おそらくこの曲以外でずとまよのアレンジは手掛けられてないかと。ずとまよには珍しいゆったりとした8ビートのバラードで、ファンの間で非常に人気な一曲ですよね。
 歌詞も非常に抽象的で難解ながら、どこかミステリアスな雰囲気をたたえ、聴く者を引き込む魅力があります。特に、「小さな船流れ出す ただ力の抜けた光る方へ」というフレーズは、ミニアルバムのラストの曲として物語の終わりを暗示しているようにも感じられますが、同時に始まりや新たな旅立ちを象徴しているようにも聴こえます。この歌詞には、「ここからはじまるんだ」という優しい決意表明が込められているのかもしれません。
 こうした一つのフレーズに多面的な解釈を可能にするのが、ACAねさんの歌詞の大きな魅力ですよね。聴く人それぞれの心に異なる物語を紡がせる力を持った一曲だと思います。

 制作陣のみなさまも確認してみましょう。「秒針」「ヒューマノイド」「脳裏上」のピアノには西村奈央さん。これ以降もずとまよのライブ出演などで関わっていかれる方です。レコーディング・ミキシングエンジニアとして眞武亨さん。いまでもずとまよの音源の録音とミックスをされている方ですね。Yuri Kurihamaさん、Kohei MatsumotoさんやNaoshi Fujikuraさんは以後も、プロデューサーとしてクレジットに名を連ねています。いわゆる「ずとまよチーム」と呼ばれる方々なのかもしれませんね。詳細は不明ですが。

 圧倒的な言語感覚やメロディーセンスで紡がれる世界観が凝縮されたファーストミニアルバム。今でも貫かれているずとまよの美学が既に表れている。それが「正しい偽りからの起床」でした。

1stライブ即完、追加公演決定

 公式サイトでの最速チケット先行予約やCD購入者限定の先行販売を経て、2018年12月10日に一般販売が開始された「1st LIVE 〜まだ偽りでありんす。〜」のチケットは即座に完売しました。この大きな反響を受け、同日深夜24時ごろには東名阪ツアー「1st LIVE 〜まだまだ偽りでありんす。〜」が2019年4月に開催されることが発表されました。

ツアーの公演会場は以下の通りです:

  • 愛知公演:「DIAMOND HALL」キャパ約1014名

  • 大阪公演:「BIGCAT」キャパ約850名

  • 東京公演:「TSUTAYA O-EAST」キャパ約1300名

すべての公演のチケットが完売し、当時のずとまよの勢いと注目度の高さを物語っています。

 そしてこの頃2018年12月。ずとまよのYouTubeチャンネル登録者数は約21万人を突破。「脳裏上のクラッカー」の再生回数は450万回以上、「ヒューマノイド」は250万回以上、そして「秒針を噛む」の再生回数は驚異的な伸びを見せ、1300万回を突破しました。この驚くべき数字は、ずとまよの急速な成長と人気を象徴するものと言えるでしょう。

 改めて「1stライブ」と銘打ったずっと真夜中でいいのに。の初ライブ「まだ偽りでありんす。」は果たしてどういった内容のライブだったのでしょうか。そして東名阪ツアーはどのようなライブだったのでしょうか。怒涛の快進撃を続ける「ずっと真夜中でいいのに。」の2019年1月からの歴史は、また次の動画でお話したいと思います。
 このチャンネルはずとまよのファンチャンネルです。ライブ参戦vlogやレビュー、歌詞考察、そしてずとまよの歴史をまとめた動画などをこれからもアップしていきます。ぜひチャンネル登録お願いします。グッドボタン、コメントなどめちゃくちゃモチベ上がります。よろしくお願いいたします。

真夜中の投稿

 最後に、この頃のACAねさんの投稿で、私が好きなものをひとつ、ご紹介して終わりたいと思います。

2018年12月16日。深夜2時14分の投稿の投稿です。

つづく。

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