ヤンゴン環状線の中で3歳の息子が寝てしまったという絶望
電車に乗っていたら、3歳の息子が寝てしまった。
まあ、よくある事ですよね。少し面倒だけど、絶望するほどの事でもない。
日本ならね。
ある日、ふと思いついて息子と2人ヤンゴン環状線に乗って帰宅する事にしました。
たまたま外出先の近くに駅があったのと、帰宅までの時間に余裕があったためです。
ご存知ない方も多いかもしれませんが、ヤンゴンには環状線があります。日本から寄贈されたJRの古い車両を使っているので、車内には日本語の表示がそのまんま。昔ながらの友人に、遠い国で再会したような気持ちになります。
ヤンゴン環状線の時速は20kmほど。線路が日本ほど整備されていないため、安全に走れる限界がその速度なのです。
また、ホームのない駅も多くあります。
ホームがないって、どういう状態だと思います?
日本で電車に乗る時には、ホームと同じ高さに電車の床部分がある状態で乗り込みます。(当たり前)床部分の下には、車輪があるため、ホームの下に電車の車輪部分が隠れています。
ホームがないという事は、車輪部分と同じ高さから、入り口によじ登らなければならないのです。また、降りる時は、飛び降りるような格好で降りなければならないという事です。
乗り込んだ駅は、たまたまホームがあったので、すんなりと3歳児連れで乗り込めたものの、降りる予定の駅にはホームがない事は分かっていました。
乗り込んですぐ、小さな子供を連れた私を見て、目の前のミャンマー人が席を譲ってくれました。息子を抱っこしながら座っていると、久しぶりの電車に興奮して疲れてしまったのか、息子がぐっすり寝てしまったのです。
これは、もしかして、寝ている息子を抱っこしたまま、電車から飛び降りなきゃいけないってこと…だよね。と、軽く絶望した私。
日本だったら、電車で息子が寝ちゃうなんて、「静かになってラッキー」くらいに思ってたな。所変われば、困った事も変わるものだわ、と考えていたら、なんだか可笑しくなってきてしまいました。
電車の中は、立っている人も多くいるくらいほぼ満員。そんな中で次々に、アボカドやふかしトウモロコシ、小さなミカンなどを売る人たちがやってきてすごい活気です。
スマホのGoogleMAPで降りる駅が次だということを確認した後、(ヤンゴン環状線は、駅についてもアナウンスなどはありません)、すぐに降りられるように出口の車両連結部付近に移動しました。
そこに陣取っていた物売りの人に「××駅で降りるんだ」と伝えると、出口のすぐそばに場所を作ってくれて「次だからね」と教えてくれました。
電車が駅に到着すると、息子を抱っこしたまま、乗っていたミャンマー人の手を借りながら慎重に電車から飛び降りて、母子2人のヤンゴン環状線の旅は無事に終わりました。
"息子と出かけて"
"電車に乗って"
”電車の中で息子が寝たけど”
"家に帰った"
ただそれだけなのに。冒険して、絶望して、助けてもらって。
この国はなんでもドラマになってしまう。