推しの還暦夫婦が教えてくれたその魅力
大好きなクライマー夫婦がいます。ノブさんとミチピン。50代の終わりからクライミングをはじめたご夫婦です。
中学校で出会って、18歳のときから付き合って、結婚してから40年になるまさにオシドリ夫婦。子育ても一段落して、これから夫婦で何をしようかと、マラソンや水泳などに挑戦して、たどり着いたのがクライミング。楽しみや健康のために始めたはずが、ときには夫婦揃って国内の大会に出場するほど。還暦を過ぎた今でも元気に壁を登っています。
ノブさんはマラソンや水泳、ロードレースも柔道もボクシングも挑戦してきた寡黙で穏やかなマッサージ師。ミチピンは快活そのもの。「この前ぽっちゃりおばさんが近づいてきたと思ったらぶつかっちゃって!大声で謝ったら鏡のアタシだったの!やだ〜!!」などエピソードが絶えません。2人とも陽のエネルギーに満ちていていつも元気をもらえます。
「クライミングは、誰でも一緒になって楽しめるのがいい」とノブさんは言います。ノブさんとミチピンが特別な才能に溢れていたわけではなく、クライミングは、老若男女問わず、誰もが取り組むことのできるスポーツなのです。
自分と向き合うスポーツ
みなさん、クライミングをやったことはありますか?
オリンピック種目になってから、ニュースやCMで筋骨隆々な選手がスパイダーマンみたいにダイナミックに飛んだり、天井みたいな場所を腕一本で体を支えている場面を見たことがある方も多いと思います。体を鍛え上げた若いひとたちの特別なスポーツ、そんなイメージがある方も多いのではないでしょうか。
オリンピックでは順位が決まる競技スポーツですが、普段楽しむクライミングは、水泳やマラソンと同じ様に、誰かと勝ち負けを競うものではありません。なので背格好も性別も年齢も関係ありません。
クライミングは誰かと競うものではなく、自分一人と向き合うスポーツなのです。
「このレベルのルートを登ろう」と自分で挑戦することを決めて、自分で試行錯誤しながら、ときには教わりながらゴールに向かっていく。「絶対ムリ!と思っていたけどやってみたらちょっと登れた!」とか「体の動かし方を変えたらゴールまで行けた!」とか、自分のためだけに少しずつレベルを上げていく達成感はひとしおです。
クライミングジムでは、初心者も上手い人も一緒になって、壁に向き合っている人へ「ガンバ!」と声を掛け合います。誰かの挑戦を讃え合います。「できた!やった!」という小さな成功体験が、クライミングジムには溢れています。
ノブさんとミチピン
ノブさんとミチピンは、2人とも視覚障害者です。ノブさんは全盲で、ミチピンは弱視(ちょっとだけ見える)。
「私たちみたいなオジさんオバさん、しかも障害者がクライミングをしているんだから、自分にもできるんじゃないかな、やってみようかなって思って欲しい。だってこんなに楽しいんだから!」と、ミチピンは言います。
クライミングは、障害者も健常者も基本的なルールは変わりません。だから障害者も一般のクライミングジムに行って楽しむことができます。目が見えなくても、片腕がなくても、麻痺があっても、車椅子ユーザーでも。クライミングジムでは、障害者も健常者も、初心者も上手い人も一緒になって、壁に向き合っている人へ「ガンバ!」と声を掛け合い、挑戦を讃え合います。
「クライミングは、誰でも一緒になって楽しめるのがいい」と、ノブさんは言います。
クライミングの懐の深さを教えてくれた、そしてその魅力を体現しているノブさんとミチピンが大好きです。推しです。