香港、「逃亡犯条例」改正案撤回、英国は離脱延期法案を可決
米国株式市場は反発して終了。堅調な中国の経済指標に加え、香港での情勢改善、英議会が欧州連合(EU)からの「合意なき」離脱回避に向けた法案を可決したことを受け、市場心理が上向いた。
英議会下院は4日、欧州連合(EU)からの合意なき離脱を阻止するための離脱延期法案を賛成多数で可決した。
また、財新/マークイットが発表した8月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は5月以来3カ月ぶりの高水準となった。これを受け、米株は高く始まり、上げ幅を広げる展開となった。
香港情勢を巡っては、政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が、数カ月にわたる抗議活動の発端となった「逃亡犯条例」改正案の撤回を表明した。
パフォーマンス・トラスト・キャピタルパートナーズのトレーディングディレクター、ブライアン・バトル氏は「香港の緊張が収まり安心感が出た」とし、悪いニュースが他にない中で押し上げ要因になったと述べた。
インディペンデント・アドバイザー・アライアンスの最高投資責任者、クリス・ザッカレリ氏は「月初の悲観論の一部がやや和らいでいる」と述べ、中国指標や英EU離脱問題の進展、香港情勢などをプラス要因に挙げた。
このほか、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、米景気減速の回避に向け「適切に行動する」用意があると表明。ただ今のところ、米経済は良好な状態にあるとの認識を示した。
また、米連邦準備理事会(FRB)は地区連銀経済報告(ベージュブック)で、製造業部門が世界的な景気減速の影響を受け、米経済はここ数週間「控えめ」なペースで成長したとの認識を示した。
香港、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を表明
香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は4日、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を表明した。香港を「極めて脆弱で危険」な状態から脱却させ、解決を模索するとした。
林鄭行政長官はテレビ中継で「暴力が続いていることで、特に法の統治を含む香港社会の根幹が揺らいでいる」とし、「市民の懸念を完全に解消させるため、逃亡犯条例改正案を正式に撤回する」と述べた。
その上で、社会の分断に対応し、解決策を見出すために、今月から市民と直接対話を開始することを明らかにした。
香港では、中国本土への容疑者の引き渡しを可能とする同改正案をきっかけに抗議デモが激化。3月に始まった抗議デモは6月に激化し、これまでに合計で1183人が逮捕されている。
逃亡犯条例改正案の撤回で抗議デモが収束するかは現時点では不明。ただ撤回を巡る報道で、香港株式市場のハンセン指数(.HSI)は一時約4%上昇した。
英国、離脱延期法案可決
英議会下院は4日、欧州連合(EU)からの合意なき離脱を阻止するための離脱延期法案を賛成327票、反対299票で可決した。
これを受け、ジョンソン首相は10月15日に総選挙を実施することを提案した。
法案はEUとの合意がなくても10月末の離脱を目指すジョンソン首相の動きを封じるもので、下院での承認を受け上院に送られた。
ジョンソン首相は「国際的な交渉での降伏を首相に強いることを求める議会史上前例のない法案」と非難し、「誰を首相に求めるかを国民が決める以外に下院の選択肢はなくなった」と指摘。選挙後も自身がまだ首相の職にあれば、10月31日付でのEU離脱を実現すると述べた。
ただ、議会解散には議員の3分の2の賛成が必要で、労働党の賛成が得られるかは難しい情勢。解散の是非を問う採決は2000GMT(日本時間午前5時)以降に行われる予定だ。
労働党のコービン党首は、総選挙実施は望んでいるが、離脱延期法案が女王の同意を経て成立するまで採決は行わないと表明した。女王の同意は9日にも行われる見通し。
総括
世界的懸念の2つの事項について、久しぶりにポジティブなニュースである。
香港デモは泥沼化の一途を辿っていたため、デモ縮小に希望が出てきた。
一方、合意なき離脱を力業で進めてきた英国だが、離脱延期法案によって待ったがかかった。
総選挙となるのであれば、今一度英国民の是非を確認したいところ。
あとは、米中通商協議が9月に開催されるか、またFOMCで利下げがあるかどうかがポイントである。
出展
香港行政長官、逃亡犯条例改正案の正式撤回を表明
英下院、EU離脱延期法案を可決 首相は10月15日の総選挙提案