米ADR雇用統計9月予想値下回る、英国EU離脱代替案提出も反応薄

ニューヨーク外為市場ではドルが対円で下落し、1週間ぶりの安値を付けたほか、対ユーロでも値下がりした。前日の米供給管理協会(ISM)製造業統計の悪化が尾を引き、経済を巡る懸念が根強く、ドル安、株安、債券高の展開となった。ダウ平均株価は一時500ドル以上急落した。

ADR雇用統計は予想値下回る

企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスが2日発表した9月の全米雇用報告は、民間部門雇用者数が13万5000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想の14万人増を下回った。

製造業を圧迫している貿易摩擦の影響が労働市場にも波及しつつある可能性が示され、同報告は「企業が採用にますます慎重になっている」とし、特に中小企業が消極的だと指摘した。
8月分は15万7000人増と、当初の19万5000人増から下方修正された。
9月は商品生産セクターで8000人増。うち製造業は2000人増、建設は9000人増、天然資源・鉱業は3000人減。また、サービスセクターは12万7000人増だった。

JPモルガンのエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「雇用増加の基調トレンドはこのところ弱まっているが、引き続きまずまずだという見方は変わらない」と述べた。
4日には9月の米雇用統計が発表されるが、一部のアナリストは弱い内容になると予想。レイモンド・ジェームズの債券ストラテジスト、ケビン・ギディス氏は、増加幅は予想を下回るだろうとした上で「10万人を下回る可能性が高いとみている」と述べた。

ロイターのエコノミスト調査では、非農業部門雇用者数が14万5000人増加とみられている。8月は13万人増、過去1年の月平均は15万8000人増。

ただ一部の市場関係者は予想ほど悪い内容ではなかったと指摘した。
オアンダ(トロント)のシニア市場アナリスト、アルフォンソ・エスパーザ氏は「労働市場は米経済の最も大きな支えの一つで、米中貿易戦争の最中でも良く持ちこたえているが、製造業が落ち込み始めていることを考えると、労働市場もガタが来ているのかもしれない」と述べた。週末に発表される雇用統計についてはどういう結果になるのか非常に心配だが、引き続き底堅い数字を予想しているとした。
前日発表の9月のISM製造業景気指数は47.8と、前月の49.1から悪化し、2009年6月以来約10年ぶりの低水準と記録した。指数の低下は6カ月連続で、景気拡大・縮小の節目となる50を2カ月連続で下回った。

英国EU離脱代替案提出も進展には悲観的

ジョンソン英首相は2日、欧州連合(EU)に対し離脱協定案の最終的な代替案を示した。月末に控えた離脱期日に向け妥結につながる可能性はあるが、双方の立場にはなお隔たりがあり、EU側は控えめな歓迎を示している。

離脱交渉の争点であるアイルランド国境問題の解決策 「バックストップ(安全策)」を巡っては、英領北アイルランドとアイルランドの国境もしくは近辺にチェックポイントを置かず、全ての物品の国境検査を省略する規制ゾーンの設置を提案。北アイルランドは英国の関税制度の一部にとどまる一方、税関審査を回避するため、手続きを簡素化する制度を導入するとした。
また、2020年12月の移行期間の終了前に、北アイルランドの自治政府や議会が規制ゾーン継続の是非を決定し、その後も4年ごとに同様の判断を行うことも提案した。
ジョンソン首相は与党保守党の党大会で演説し、「双方が妥協できる建設的かつ妥当な提案を提示する」と表明。さらに、新提案が受け入れられなければ、残された道は「合意なき」離脱と強調。「何が起ころうと、英国は今月末にEUから離脱する」とし、強硬路線を堅持した。
その上で「われわれの友人が理解を示し、譲歩することを望む」とした。
欧州委員会のユンケル委員長は、ジョンソン氏の提案について、全ての物品を対象とする規制協定などは「前向きな進展」としつつも、「特に安全策の統治に関する部分など、今後数日で取り組むべき問題もいくつかある」と指摘。EUは合意を望んでおり、それに向け取り組む用意があると述べた。

バルニエEU首席交渉官も、提案は進展と言えるが解決すべき点はなおあると指摘。また、メイ前英首相の欧州顧問だったラウル・ルパレル氏は「EUとアイルランドがこの提案に合意するとは思えない」と悲観的な見方を示した。
英野党・労働党のコービン党首は、ジョンソン氏の提案はあまりに曖昧で、EUは受け入れないだろうと述べた。
このほか、EU外交官や高官らの間からは「根本的に欠陥がある」、「受け入れられることはない」との指摘が聞かれたほか、ある高官はロイターに対し「交渉の余地がないという内容であれば、離脱期限延期の方策について協議を開始するほうが良いだろう」と述べた。
ドイツ銀は、50%の確率で年末までに合意なき離脱という結果になることを見込んでいる。

総括

リセッション懸念は前月から浮上しているが、それでも敏感に市場は反応している。

裏では英国EU離脱やWTOのEUに対する米追加関税の承認などの要素はあったにしろ、やはりリセッション材料が今の相場に一番に影響している。

その根本である米中通商協議は来週開催される。

これを失敗すると、株価は更に下落するが、大統領選挙を控えたトランプ大統領はどのように振る舞うのか。
単純に考えると、ここで失敗すれば株価下落の戦犯、リセッションの戦犯として再選の可能性は低くなるだろう。

リセッション懸念の根本が米中貿易戦争なら、これに対する材料が最も効果的なので、市場心理の改善が見込まれる。
但し、10月は波乱月なので十分に注意したいところだ。

とくに、英国EU離脱のさきいきは明るくない。

出典

米ADP民間雇用、9月は予想下回る 貿易摩擦の影響波及か

ドル下落、経済巡る懸念根強く 週末の雇用統計警戒=NY市場

英首相、EUに最終代替案 「拒否なら合意ないまま離脱」

いいなと思ったら応援しよう!