G20「リスクに対処し続け、さらなる行動をとる用意がある」 メキシコの関税見送りも、中国は独自技術輸出規制も
世界経済が混沌期に突入する気配を見せるなか、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれた。
G20財務相・中央銀行総裁会議は9日、激しさを増す米中貿易摩擦を念頭に、G20各国が「リスクに対処し続け、さらなる行動をとる用意がある」と明記した共同声明を採択し、閉幕した。反保護主義に関する文案は見送った。
財務相会合でG20は、世界経済の現状について「足もとで安定化の兆しを示しており、総じて今年後半、2020年に向けて緩やかに上向く見通し」との認識を共有した。
その上で共同声明で「貿易と地政をめぐる緊張は増大してきた」と指摘し、「すべての政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する」ことも、併せて明記した。
貿易赤字を問題視する米国を念頭に、貿易やサービスなど総合的な「経常収支」の不均衡是正をめざすことも確認した。
G20財務相会合で、下方リスクに協調して対処する方針を打ち出したことで、今後の焦点は28、29日に大阪で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に移る。
ムニューシン米財務長官は8日、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席がG20サミットに合わせて首脳会談を開くとの見通しを示した。9日の中国の易鋼・人民銀行総裁と会談後には「貿易問題で率直な議論を行なった。会談は建設的だった」と、ムニューシン氏自身のツイッターに投稿し、前向きなメッセージを出した。
ただ、月末のサミットまでは紆余曲折も予想され、貿易摩擦の出口は見えない。
関係筋によると、G20財務相会議の初日時点での声明案には「貿易摩擦の解消は急務」との記述もあったが、米国に配慮し、最終的に文案は削除された。米中貿易摩擦の激化が世界経済の成長を妨げるとの表現も見送られたが、「世界経済は多くの不確実性に苦しんでいる」(ドイツ連銀のワイトマン総裁)というのがG20各国の本音だ。
メキシコの追加関税は見送り
先行きの見えない貿易戦争だか、一つポジティブな結果が生まれた。
トランプ米大統領は7日、不法移民対策を巡りメキシコと合意したことを明らかにし、メキシコ製品への制裁関税発動を無期限で停止すると表明した。
トランプ大統領は、「メキシコは、同国を経由し米南部の国境に押し寄せる移民の波を阻止する強力な措置を講じることに合意した。これは、メキシコから米国への不法移民の大幅に減らす、または排除するための措置だ」としている。
中国独自技術の輸出規制を検討
一方、米中の関係は激化が増す状況。
中国政府がハイテク領域などで独自技術の輸出を制限する制度を検討する。中国共産党機関紙の人民日報などが9日、政府が近く「国家技術安全管理リスト」と呼ぶ仕組みを設けると報じた。米中ハイテク摩擦が激しくなるなか米国をけん制する狙いがあるとみられる。
総括
貿易戦争は、追加関税からハイテク領域、特許領域の輸出規制にシフトしつつある。
輸出は世界経済の血脈。
滞れば世界全体の代謝が悪化し、弱い部位(国)から病気が発祥する。
中国以外にも、欧州、日本とも通商協議が進められるが、その行方はトランプ大統領にかかっている。
今月末の米中首脳会談で、ポジティブな結果になるか。それまでの相場は、これまで通り一喜一憂の展開となりそうだ。
出典
6/9 ロイター G20声明、貿易・地政の緊張緩和へ「さらなる行動」
6/8 ロイター メキシコの不法移民対策を確信、農産品も購入拡大=トランプ大統領
6/9 日本経済新聞 中国、重要技術の輸出制限検討 人民日報など報道:日本経済新聞
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