見出し画像

プロスポーツ×サステナビリティ(サッカー編)

今回はプロスポーツ界のサステナビリティへの取り組みがテーマ。

今やサステナビリティの取り組みを企業が行うのは当たり前の時代になり、多くの企業がCSR活動以外にも社会課題解決をビジネスチャンスとして捉え、積極的に社会課題の解決をリードしている。

特にこういった動きは欧米を中心に強く広がりを見せており、いかに持続可能な企業成長を遂げることができるか、環境・社会に対して強く影響力を持ち、より良い方向にリードしていけるのかを重視したESG投資も盛んだ。
もちろんこの動きは日本にも来ていて、数多くの大企業が環境や社会への働きかけを強めている。

そんな中、プロスポーツ界も商品やサービスを直接的には提供していないものの、一企業としてビジネスを行っていることには変わりない。

サステナビリティへの取り組みでトレンドの発信地となっている欧米とそれに続く形で追従を見せる日本で、プロスポーツ界でもどのような違いがあるのかを調べた。今回は特に欧州と日本の比較としてサッカーにフォーカスしている。

炭素排出量削減目標も掲げる欧州のクラブ

欧州5大リーグで最も市場規模の大きいイングランドの「プレミアリーグ」。その中でも特に高いサステナビリティへの取り組みを行っているとして評価されているのが「トッテナム・ホットスパー」と「リヴァプールFC」の2つのクラブ。

これらのクラブはBBCスポーツが、国連が支援するするスポーツ・ポジティブ・サミットと協力して、プレミアリーグに所属しているクラブの持続可能性を評価する「サステナビリティ ランキング」において2023年に同数で1位となっている。

では、そんな2つのクラブがどんなことをしたのか。

まず、「トッテナム・ホットスパー」は2019年に開業した新スタジアムの床材をそれまで使用していた旧スタジアムの廃材(瓦礫)から再利用していたり、その新スタジアムでの使用エネルギーを再生可能エネルギーでまかなっていたりとスタジアムのハード面からサステナビリティを強く意識した取り組みを行っている。

また、試合日にはサポーターたちが食べる食品についても持続可能な方法で輸送され、プラスチックも使わない方法で提供されている。その他、スタジアムへのアクセスもクラブが多額の投資を行い、自家用車ではなく公共交通機関でのアクセスの利便性を向上させる取り組みを行っている。

これらの活動はほんの一部分であり、彼らのサステナビリティに対する考えを公式サイト内にもページを設けてクラブに関わるすべての人に共感してもらえるよう説明がなされている。

「リヴァプールFC」も同様に、サステナビリティへの取り組みは多岐にわたって行っており、彼らはサステナビリティへの取り組みを「The Red Way」として多くの人に認知してもらえるよう行っている。

SDGsに沿う形で人、地球(環境)、コミュニティの3つの戦略に対して、6つの目標を掲げ取り組みを進めている。

取り組んでいることはトッテナムと大きな差はないが、戦略と目標を対外に誠実に公表をし、クラブが主導となってスポンサーやサポーターを巻き込んでいるのが印象的だ。

そして、どちらのクラブも印象的だったのが、炭素排出量の計測及び、削減目標を掲げているところ。これはイギリスが炭素税を導入していることも追い風となっているが、ビジネスにおける炭素の排出量に応じて課税が行われるもので、簡単に言えば炭素を出すビジネスをしているのであれば、その分徴収しますので、炭素の排出が抑えられるように取り組んでくださいね。というもの。

日本に関してはこの炭素税の導入が検討段階であるため、炭素排出量を計測し、公表しだしている大企業も一定数いるが、まだまだ当たり前の状態となっているとは言い難い状況でもある。

プロスポーツクラブでも、ひとつのビジネスを行っている企業のひとつ。こうしてプロスポーツクラブからもカーボンニュートラルへの取り組みがなされていることは非常に好感が持てるし、老若男女多くの顧客と接点のあるプロスポーツクラブだからこそ、社会をリードしていくことに意義があると考える。

(参考)カーボンニュートラルについてはこちら

一方でJリーグは?

そして、次に目を向けたいのが我々が誇る日本のプロサッカーリーグ・Jリーグ。

Jリーグに関しても数多くのクラブが環境に配慮したサステナビリティへの取り組みを行っている。

例えば、プラスチック使用量の削減としてリユース食器の導入は、これまで使い捨てにされていたビールや食事のプラスチック容器をリユース食器に切り替えることで大きな炭素排出削減効果があるとして、導入を行っているクラブがいくつかある。

ヴァンフォーレ甲府(ドリンク提供時のコップをリユースカップに)

アルビレックス新潟(ドリンク提供時のコップをリユースカップに)

このようにJリーグの各クラブは自分たちができることをステークホルダーであるスポンサー企業と共同で諸々の施策を打っている。
地域密着を謳うJリーグが日頃支えてくれるスポンサー企業と手を取り合って地域の人たちと一緒に社会に意義のある取り組みをしていることの素晴らしさを改めて感じられた。

欧州のように炭素排出量を算出しているクラブは?

では一方で欧州クラブのように自身のクラブでの炭素排出量を算出し、具体的に数値化しているクラブがどれだけいるのか、疑問に感じ、調べてみた。
(私自身サッカー観戦が好きで100試合以上は人生で現地観戦し、様々なクラブの公式リリースなども目にしてきたが聞いたことはなかった)

すると、意外なことに見つけられたのは1クラブのみで、すでに名前を挙げている「ヴァンフォーレ甲府」。
ヴァンフォーレは東京都市大学の伊坪徳宏研究室、一般財団法人グリーンスポーツアライアンスとの共同研究で炭素排出量の算出を行い公開している。

https://www.ventforet.jp/uploads/1c14cfd6113e12dc10ad05ff59f4290a022da117/original.pdf

内容に関してはトップチームの活動に伴う炭素排出や、試合に関するスタジアム運営など、クラブが関わるすべての活動に関して炭素排出量が算出され公開されている。

今後は、この算出システムに基づいて、目標を設定し、環境問題への取り組みをより強化していくそう。

まとめ

今回、普段から毎週のようにスタジアムに通い詰め、サッカーを見てきた自分が、これまで日常で触れてこなかったプロサッカークラブのサステナビリティへの取り組みを改めて調べてみた。

やはり欧州クラブは欧州のマーケットに身を置き、クラブ運営をしていることもあり日本のクラブではまだ行えていない先進的な取り組みをすでにしているクラブもいるようだった。

一方で、Jリーグのクラブも欧州クラブの最先端基準レベルとは言い難いものの、各クラブでステークホルダーと協力し、地道な活動をしている。
ただし、これらの活動は、調べてみてようやく知ることができるレベルであったし、日頃からサッカー界の情報については触れているつもりだったが、ことサステナビリティ文脈での情報はあまりにも広がっていないような印象。

デジタルマーケティングでマーケティング支援を行っている一人のサッカー好きとして、クラブが行っている社会への素晴らしい取り組みはもっと知られるべきだし、各クラブももっと発信していくことが必要だと考えられ、少しでも貢献できるよう、いまの自分のスキルをさらに伸ばせるよう精進しようと思えた。


いいなと思ったら応援しよう!