日商簿記範囲外のEX論点【連結会計④】~権利落ち株式(連結)~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、連結会計の論点から「権利落ち株式(連結)」を紹介します。
1.権利落ち株式(連結)
概要
権利落ち株式を取得もしくは売却した場合、株式の取得・売却の前に配当が行われたとみなして、持分計算を行うことになります。
仕訳
支配獲得時の連結修正仕訳
資本金 XXX / 子会社株式 XXX
利益剰余金 XXX / 非支配株主持分 XXX
のれん XXX /
非支配株主持分 = 配当金控除後の資本合計 × 非支配持分比率
のれん = 貸借差額
支配獲得時に権利落ち株式を取得した場合、親会社・非支配株主という概念がない為、配当金の全額を子会社の資本(利益剰余金の当期首残高)から控除する必要があります。
その為、配当金控除後の資本に基づいて、非支配株主持分・のれんを計上する必要があります。
追加取得時の連結修正仕訳
≪剰余金の配当≫
受取配当金 XXX / 利益剰余金 XXX
非支配株主持分 XXX /
≪投資と資本の相殺消去≫
非支配株主持分 XXX / 子会社株式 XXX
資本剰余金 XXX /
or
非支配株主持分 XXX / 子会社株式 XXX
/ 資本剰余金 XXX
非支配株主持分 = 配当後の資本合計 × 追加取得割合
追加取得時に権利落ち株式があった場合、配当金控除後の資本に基づいて、追加取得の仕訳を行う必要があります。
また、配当金は追加取得前の比率に基づいて按分を行います。
一部売却時の連結修正仕訳
≪剰余金の配当≫
受取配当金 XXX / 利益剰余金 XXX
非支配株主持分 XXX /
≪投資と資本の相殺消去≫
子会社株式 XXX / 非支配株主持分 XXX
子会社株式売却益 XXX / 資本剰余金 XXX
or
子会社株式 XXX / 非支配株主持分 XXX
資本剰余金 XXX / 子会社株式売却損 XXX
子会社株式売却損益 = 売却価額 - 子会社株式の売却原価
非支配株主持分 = 配当後の資本合計 × 売却割合
資本剰余金 = 貸借差額
一部売却時に権利落ち株式があった場合、配当金控除後の資本に基づいて、一部売却の仕訳を行う必要があります。
また、配当金は一部売却前の比率に基づいて按分を行います。
2.例題
<1>権利落ち株式(追加取得)
以下の資料に基づき、次の問に答えなさい。 (単位:千円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
P社は、X2年4月1日にS社株式の60%を420,000千円で取得し、S社を連結子会社とした。
P社は、X3年4月1日に、S社株式の20%を150,000千円で取得した。
X1年度末の資本勘定は以下の通りであった。
資本金:600,000千円
利益剰余金:60,000千円X2年度末の資本勘定は以下の通りであった。
資本金:600,000千円
利益剰余金:80,000千円S社は、毎年6月25日に、利益剰余金を原資とする配当を実施している。
X1年度:6,000千円
X2年度:8,000千円
なお、配当基準日は3月31日であった。のれんは、発生年度の翌期から10年、定額法にて償却する。
税効果会計は考慮しない。
①X1年度の連結修正仕訳を示しなさい。
資本金 600,000 / 子会社株式 420,000
利益剰余金 54,000 / 非支配株主持分 261,600
のれん 27,600 /
②X1年度資本合計654,000千円 = 資本金600,000千円 + 利益剰余金54,000千円 - 配当金6,000千円
※4/1に取得した為、権利落ちが発生
②X2年度の追加取得に関する連結修正仕訳を示しなさい。
非支配株主持分 134,400 / 子会社株式 150,000
資本剰余金 15,600 /
②資本剰余金15,600千円 = 貸借差額
③X2年度資本合計672,000千円 = 資本金600,000千円 + 利益剰余金80,000千円 - 配当金8,000千円
※4/1に取得した為、権利落ちが発生
<2>権利落ち株式(一部売却)
以下の資料に基づき、次の問に答えなさい。 (単位:千円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
P社は、X2年4月1日にS社株式の80%を560,000千円で取得し、S社を連結子会社とした。
P社は、X3年4月1日に、S社株式の20%を200,000千円で売却した。
X1年度末の資本勘定は以下の通りであった。
資本金:650,000千円
利益剰余金:40,000千円X2年度末の資本勘定は以下の通りであった。
資本金:650,000千円
利益剰余金:60,000千円S社は、毎年6月25日に、利益剰余金を原資とする配当を実施している。
X1年度:4,000千円
X2年度:6,000千円
なお、配当基準日は3月31日であった。のれんは、発生年度の翌期から10年、定額法にて償却する。
税効果会計は考慮しない。
①X1年度の連結修正仕訳を示しなさい。
資本金 650,000 / 子会社株式 560,000
利益剰余金 36,000 / 非支配株主持分 137,200
のれん 11,200 /
②X1年度資本合計686,000千円 = 資本金650,000千円 + 利益剰余金40,000千円 - 配当金4,000千円
※4/1に取得した為、権利落ちが発生
②X2年度の一部売却に関する連結修正仕訳を示しなさい。
子会社株式 140,000 / 非支配株主持分 140,800
子会社株式売却益 60,000 / 資本剰余金 59,200
②子会社株式売却損益12,350千円 =売却額200,000千円 - 子会社株式140,000千円
③非支配株主持分140,800千円 = X3年度資本合計704,000千円 × 売却割合20%
④資本剰余金59,200千円 = 貸借差額
⑤X3年度資本合計704,000千円 = 資本金650,000千円 + 利益剰余金60,000千円 - 配当金6,000千円
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