日商簿記範囲外のEX論点【棚卸資産③】~仕入諸掛勘定~

日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。

今回は、棚卸資産の論点から「仕入諸掛勘定」を紹介します。




1.仕入諸掛を勘定科目で処理する方法

概要

仕入諸掛は、発生時に商品の取得原価に含めるのが一般的ですが、独自の勘定科目を用いて処理することも可能です。

独自の勘定科目を用いて処理する場合は、決算時に仕入へ振り替え、当期の仕入額を算定します。


仕訳

※特に記載のない限り、三分法での仕訳で表しています。

発生時の仕訳

仕入    XXX / 買掛金   XXX
仕入諸掛  XXX / 現金預金  XXX

付随費用発生時、独自の勘定科目で処理する場合は、仕入諸掛勘定を用いて計上します(仕入諸掛費でも可)。

期末時の仕訳(仕入額の算定)

仕入  XXX / 仕入諸掛  XXX

上述の通り、決算時に当期発生分の仕入諸掛を仕入へ振り替え、当期仕入れ額を算定します。

期末時の仕訳(売上原価の算定)

仕入  XXX / 繰越商品    XXX
       / 繰延仕入諸掛  XXX

繰越商品    XXX / 仕入  XXX
繰延仕入諸掛  XXX /

売上原価の算定時、商品の他に仕入諸掛も同様の処理を行う必要があります。
期首時点で計上されていた繰延仕入諸掛勘定(資産)を当期仕入額へ算入し、期末商品に係る仕入諸掛の金額を繰延仕入諸掛で計上します。

なお、期末時の繰延仕入諸掛は、商品単価の算定方法によって

  • 先入先出法 ⇒ 当期仕入分の単価

  • 移動平均法、総平均法 ⇒ 期首在庫分と当期仕入分の平均単価

上記のように異なります。


2.例題

<1>仕入諸掛

以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:円)

①X1年3月15日に、当社は商品A(原価:@1,550)を120個購入し、代金は掛とした。
なお、商品に係る付随費用15千円は、小切手で支払った。

仕入    186,000 / 買掛金   186,000
仕入諸掛  15,000 / 当座預金  15,000

仕入186,000 = 原価@1,550 × 120個

②X1年3月25日に、当社は商品A(売価:@2,015)を105個販売し、代金は掛とした。
なお、商品に係る発送費20千円は、小切手で支払った。

売掛金   211,575 / 売上    211,575
支払運賃  20,000 / 当座預金  20,000

売上211,575 = 売価@2,015 × 105個

③期末日を迎えたので、決算整理仕訳として、仕入諸掛勘定の振替を行う。
期末日時点での仕入諸掛勘定は113,000円であった。

仕入  113,000 / 仕入諸掛  113,000

④決算整理仕訳として、売上原価の算定を行う。
仕入諸掛の算定方法は、商品原価の算定方法と同一とする。
なお、以下の金額が判明しており、それ以外は考慮しない。
・期首商品棚卸高:42,000円(商品A30個)
・期末商品数量:45個
・期首繰延仕入諸掛:6,000円

≪先入先出法≫

仕入  48,000 / 繰越商品    42,000
        / 繰延仕入諸掛  6,000

繰越商品    69,750 / 仕入  75,375
繰延仕入諸掛  5,625 /

①期末商品棚卸高69,750 = 商品Aの原価@1,550 × 45個
②期末繰延仕入諸掛5,625 = 仕入諸掛単価@125 × 45個
③仕入諸掛単価@125 = 当期仕入諸掛15,000 / 120個

≪移動平均法≫

仕入  48,000 / 繰越商品    42,000
        / 繰延仕入諸掛  6,000

繰越商品    68,400 / 仕入  74,700
繰延仕入諸掛  6,300 /

①期末商品棚卸高68,400 = 商品Aの平均原価@1,520 × 45個
②期末繰延仕入諸掛6,300 = 仕入諸掛の平均単価@140 × 45個
③商品Aの平均原価@1,520 = (商品A期首残高42,000 + 購入原価186,000) / 合計数量150個
④仕入諸掛単価@140 = (期首仕入諸掛6,000 + 当期仕入諸掛15,000) / 合計数量150個


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