日商簿記範囲外のEX論点【引当金②】~リストラクチャリングに関する引当金~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、投資信託の論点から「リストラクチャリングに関する引当金」を紹介します。
※今後、取り扱いが変わる可能性があります。
1.リストラクチャリングに関する引当金
概要
リストラクチャリング(Restructuring、リストラ)とは、企業の事業構造を再構築することです。
リストラクチャリングの手段として、
事業の整理(譲渡・統合・撤退等)および子会社等の整理(売却・清算等)
事業所等の整理(移転・閉鎖・縮小等)
人員の整理(子会社等への転籍、希望退職者の募集等)
といったものがあります。
また、このリストラクチャリングに関して、引当金の計上要件を満たした場合、それらに関して引当金を設定する必要があります。
なお、リストラクチャリングの手段によって、引当金の名称が
事業の整理 ⇒ 事業構造改善引当金
事業所等の整理 ⇒ 店舗閉鎖損失引当金
人員の整理 ⇒ リストラクチャリングに伴う割増退職金等
といったもので表示されることがあります。
引当金の計上・測定
リストラクチャリングに伴い発生する費用のうち、減損損失や子会社株式評価損等に関しては、それらに関連する会計基準が適用されます。
それ以外の、会計基準では直接規定されていない費用(解約違約金、引越しの費用、賃貸料)の内、合理的に見積もることができるものについて、引当金の計上要件を満たすか検討する必要があります。
なお、発生主義の観点から、費用は実際の役務提供を受けた時点で計上するものと考えられ、それらの費用を未払金等の勘定科目を用いて計上すると考えられます。
引当金の計上要件に、リストラクチャリングに関する引当金等を当てはめると、下記のようになります。
将来の特定の費用又は損失である
⇒将来において、事業・子会社等の整理等が実行されることで生じるその発生が当期以前の事象に起因する
⇒当期以前に生じた経営状況の悪化を改善するために行われるものか検討する発生の可能性が高い
⇒リストラクチャリング計画が取締役会等で決議される場合に、発生可能性が高いか検討する金額を合理的に見積ることが可能
⇒リストラクチャリング計画の中で具体的な金額が明示されているような場合に、発生可能性が高いか検討する
仕訳
引当金計上の仕訳
引当金の計上要件を満たした際に、合理的に見積もられた金額で引当金を繰り入れます。
なお、相手勘定は現時点で明確に定められておらず、便宜上事業構造改革費用勘定にて計上しています。
2.例題
(1)リストラクチャリングに関する引当金
以下の資料に基づいて、仕訳を示しなさい。 (単位:千円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
A社は、X2年1月に、稼働率の低いA工場をX2年5月末に閉鎖することを決定した。
なお、これらのリストラクチャリング計画は従業員に周知されている。工場の閉鎖に伴い、機械装置を売却する。
機械の帳簿価額は2,000千円であり、X1年度末の正味売却価額は600千円であった。工場の土地は、事業用定期借地権契約により地主より借り受けている。
契約には、建物等の工作物を撤去して更地返還する旨が明記されている。
なお、工場の事務機器等を本社で使用するかは未定である。当該リストラクチャリングに関するその他の情報は、以下の通りであった。
借地権契約の中途解約に伴う違約金:400千円
原状回復費用:320千円リストラクチャリングに係る費用のうち、会計基準で規定されていない費用は、"事業構造改革費用"勘定にて計上を行う。
①X2年3月の仕訳を示しなさい。