日商簿記範囲外のEX論点【暗号資産①】~暗号資産の購入・売却~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、暗号資産の論点から「購入時・売却時の処理」を紹介します。
※今後、取り扱いが変わる可能性があります。
1.暗号資産の概要
全体概要
暗号資産は、ビットコイン等のインターネットで取引される仮想通貨のことをいいます。
何をもって仮想通貨とするかは、資金決済法に規定されていますが、簡潔にまとめると、
不特定多数の者に対して、物品等の購入やサービスの提供にかかる代金の支払いに利用でき、法定通貨(日本円、米国ドル等)と相互に交換可能であるもの
電子的に記録され、移転ができるもの
法定通貨、通貨建資産(ポイント等)、並びに電子決済手段ではないもの
を仮想通貨としています。
ブロックチェーン(分散型台帳技術)
仮想通貨の多くはブロックチェーン(分散型台帳技術)と呼ばれる技術を採用しています。
ブロックチェーンは、特定の管理者が存在せず、暗号資産を取り扱う参加者が取引履歴等を管理する仕組みのことです。
ブロックチェーンのメリットとして、
データの改竄が極めて難しい
運用コスト等が安価で済む
分散して管理している為、安全性が高い
といったものがあります。
反対にデメリットとして、
電気代等のコストが増大する
取引量が多くなると、データの処理に時間を要したり、手数料が高くなることがある(スケーラビリティ問題)
現時点で法が未整備の状態である
といったものがあるようです。
保有目的
現時点で、3つの保有目的があります。
資金決済目的
投資目的
トレーディング(売買)目的
保有目的によって、勘定科目と資産の区分が変更されます。
2.暗号資産の購入・売却
概要
暗号資産の売却における損益は、約定日基準で認識します。
その際の損益は純額で表示することとなります。
また、売却時における暗号資産の売却原価を決定する方法は、
移動平均法 (選択しない場合はこちらを適用)
総平均法
のいずれかを選択適用します。
仕訳
購入時の仕訳
購入時は、取得時の価額と付随費用の合計が、暗号資産の金額となります。
また、その暗号資産の保有目的によって、相手勘定科目が変化します。
資金決済目的、売買目的 ⇒ 暗号資産勘定
(それぞれ流動資産、棚卸資産)投資目的 ⇒ 投資暗号資産勘定
(投資その他の資産)
売却時の仕訳
売却時は、移動平均法ないしは総平均法で算出した売却原価が、暗号資産の金額となります。
また、その暗号資産の保有目的によって、相手勘定科目が変化します。
資金決済目的、売買目的 ⇒ 暗号資産売却損益勘定
(営業外損益)投資目的 ⇒ 売上高勘定
3.例題
(1)暗号資産の購入
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:千円)
①X1年5月31日に、A社は暗号資産X(1単位あたりのレート:@80千円)を、投資目的で5単位購入した。
②X1年6月1日に、A社は暗号資産B(1単位当たりのレート:@120千円)を、5単位購入した。
なお、暗号資産Bは今後も売買目的で購入するものとする。
③X1年6月10日に、A社は暗号資産B(1単位当たりのレート:@130千円)を、3単位購入した。
なお、購入時に手数料が10千円発生している。
(2)暗号資産の売却
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:千円)
なお、売却単価の算出方法は移動平均法とし、小数点以下は四捨五入とする。
①上記(1)の暗号資産Bを、X1年6月15日に4単位分売却した。
1単位当たりのレートは、@128千円だった。
②上記(1)の暗号資産Bを、X1年6月20日に3単位分売却した。
1単位当たりのレートは、@118千円だった。