日商簿記範囲外のEX論点【インセンティブ・プラン⑤】~ストック・オプション④~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、インセンティブ・プランの論点から「有償ストック・オプション」を紹介します。
1.有償ストック・オプション
全体概要
有償ストック・オプションとは、ストック・オプションの内、付与時に一定の額を企業へ払い込む必要がある株式報酬制度のことです。
権利確定条件付き有償新株予約権とも呼ばれます。
通常のストック・オプションと比較して、付与株式数に制限がなく、報酬の決議が不要(非公開会社を除く)というメリットがあります。
計算式
基本的に無償ストック・オプションと同一ですが、ストック・オプションの公正な評価額から払込金額を差し引いた額で、各期に配分される費用計上額を算定する必要があります。
各期に配分される費用計上額の計算式は、以下の通りです。
費用計上額 = (ストック・オプション数 × 公正な評価単価 - 付与時の払込金額)× 当期末までに経過した対象勤務期間 / 対象勤務期間 - 前期までの費用計上額
仕訳
付与時の仕訳
現金預金 XXX / 新株予約権 XXX
有償ストック・オプションが付与された場合、付与時に現金の払込金額で、新株予約権勘定を計上します。
決算時の仕訳
株式報酬費用 XXX / 新株予約権 XXX
権利確定日前の決算整理仕訳として、各期に配分される費用計上額(上記参照)で、株式報酬費用勘定を計上します。
相手勘定は、新株予約権勘定で計上します。
権利確定時の仕訳
株式報酬費用 XXX / 新株予約権 XXX
権利行使時の仕訳
現金預金 XXX / 資本金 XXX
新株予約権 XXX /
権利失効時の仕訳
新株予約権 XXX / 新株予約権戻入益 XXX
付与時・費用計上時以外の仕訳は、すべて無償ストック・オプションの処理に準じます。
2.例題
<1>有償ストック・オプション
以下の資料に基づいて、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
A社は、X1年6月の株主総会において、従業員50名に対して有償のストック・オプションを付与することを決議し、X1年7月に付与した。
このストック・オプションは他社に譲渡できず、また一部行使はできないものであった。ストック・オプションの条件は以下の通りであった。
付与数:従業員1名あたり80個 (合計4,000個)
1個当たり株式数:4株 (合計12,000株)
1個当たり付与時の払込単価:@600
権利確定日:X3年6月末日
権利行使期間:X3年7月から2年間
1個当たり公正な評価単価:@1,100付与時点において、退職による失効は見込んでいない。
X3年6月末までに実際に退職をしたのは2名であった。
①付与時の仕訳を示しなさい。
現金預金 2,400,000 / 新株予約権 2,400,000
②X1年度の決算整理仕訳を示しなさい。
株式報酬費用 750,000 / 新株予約権 750,000
× 9ヵ月 / 24ヵ月
③X2年度の決算整理仕訳を示しなさい。
株式報酬費用 1,000,000 / 新株予約権 1,000,000
× 21ヵ月 / 24ヵ月 - X1年度株式報酬費用750,000
④権利確定日の仕訳を示しなさい。
株式報酬費用 74,000 / 新株予約権 74,000
- 付与時払込金額2,400,000 - X1年度株式報酬費用750,000 - X2年度株式報酬費用1,000,000
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