日商簿記範囲外のEX論点【インセンティブ・プラン①】~インセンティブ・プラン総論~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、インセンティブ・プランの論点の基本的な考え方を紹介します。
1.インセンティブ・プラン
全体概要
インセンティブ・プランとは、企業の短期的もしくは中長期的な業績達成等を条件として、従業員等に株式・金銭・社債といった報酬を付与する制度のことです。
インセンティブ・プランは、
株式型報酬
金銭型報酬
の二つの分類があり、さらに株式型報酬は
事前交付型
事後交付型
に分けることができます。
インセンティブ・プランを導入するメリットとして、
従業員等のモチベーション向上につながる
社員間での競争意識を醸成できる
優秀な人材の確保や流出の阻止がしやすくなる
といったものが挙げられます。
一方、デメリットとして
評価の上がらない従業員等の、モチベーションが下がる可能性がある
成果に固執してしまい、組織力低下が起きる可能性がある
プランによっては、権利を行使した従業員等が退職する可能性がある
といったものが挙げられる為、導入する際は評価基準を明確にする等の対応が必要になります。
2.株式型報酬
概要
目標の達成によって、株式やオプションを付与するタイプは、株式型報酬に分類されます。
代表的なものとして、
ストック・オプション
リストリクテッド・ストック
パフォーマンス・シェア
といった制度があります。
これらの株式型報酬に共通する考え方として、付与された日(付与日)から権利が確定する日(権利確定日)までの期間中(対象勤務期間)に、予め定めた条件(権利確定条件)を達成する必要があります。
権利確定条件
権利確定条件は、主に下記の二つに分けられます。
勤務条件
例:従業員等が権利日まで勤務する業績条件
例:一定水準の売上や利益率を達成する
なお、複数の権利確定条件が付されることもあります。
その場合は、
いずれかを達成する必要がある場合
⇒最も短い期間を要する条件を達成した日全て達成する必要がある場合
⇒最も長い期間を要する条件を達成した日
が、権利確定日となります。
株式型報酬のメリット・デメリット
株式型報酬を導入するメリットとして、
売却益を出す為に株価を上げる必要があるので、従業員等のモチベーション向上に繋がりやすい
社外の人間に付与することができ、優秀な社外関係者の確保や関係維持につながる
がありますが、一方で
インサイダー取引が起きる可能性がある
権利を付与しすぎると株式の希薄化(1株当たりの価値や権利が下がってしまうこと)が起きてしまう
といった点には注意が必要です。
3.金銭型報酬
概要
目標の達成によって、金銭を付与するタイプは、金銭型報酬に分類されます。
該当するものとして、
役員慰労退職金
ファントム・ストック
パフォーマンス・キャッシュ
といった制度があります。
※ファントム・ストックやパフォーマンス・キャッシュといった制度に関しては、会計上の処理は現時点で定められていません。
金銭型報酬のメリット・デメリット
金銭型報酬を利用するメリットとして、
金銭を報酬にしている為、株式の希薄化が起きず、インサイダー取引を考慮せずに済む
株式のように価値が変動しない
がありますが、一方で
報酬の支給時に、多額のキャッシュアウト(現金流出)が発生する
株式でない以上、社外関係者の確保や関係維持には繋がりにくい
といったデメリットも存在します。