日商簿記範囲外のEX論点【引当金③】~環境対策及びリサイクルに関する引当金~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、投資信託の論点から「環境対策及びリサイクルに関する引当金」を紹介します。
※今後、取り扱いが変わる可能性があります。
1.環境対策及びリサイクルに関する引当金
概要
産業廃棄物や有害物質の処分、リサイクルに関して、引当金の計上要件を満たした場合、それらに関して引当金を設定する必要があります。
これらに該当する引当金は、
環境対策引当金
リサイクル費用引当金
といったものがあります。
環境対策引当金
環境対策引当金(環境安全対策引当金)とは、アスベストやポリ塩化ビフェニル(PCB)等の産業廃棄物や有害物質の処分時の費用、工場からの臭気や騒音等に対処するための費用といった、環境対策に伴う支出に備えるために計上される引当金のことです。
また、法令等によって要求されていないものの、行政への確約や社会的な要請によって自主的に環境対策を行う場合もあり、これらも計上要件を満たした場合は、環境対策引当金として処理するものと考えられます。
環境対策引当金は、外部業者等からの見積もり、もしくは過去の実績に基づいて見積もる方法によって費用を測定します。
このうち、PCBに関しては、全国一律の処理料金を公表しています。
※ただし、運搬費用は含まれていません。
なお、以下の場合は、資産除去債務として計上することとなります。
有害物質が使用中の設備(有形固定資産)に含まれており、有形固定資産の除去と同時に処分する場合
土壌浄化対策や土壌改良工事等のうち、その対策が法令等で要求され、建
物等の有形固定資産が存在する場合
リサイクル費用引当金
リサイクル費用引当金(再資源化費用等引当金)とは、法令等に基づいて、販売した製品を回収した際の費用の支払いに備えて計上される引当金のことです。
リサイクル費用引当金の見積もり方法として、
といった算定方法が考えられます。
この場合、1台当たりリサイクルコストは、外部委託先への処分単価等を使用することが考えられます。
また、リサイクル回収率は、業界の平均回収率や自社の無償リサイクル実績等を考慮して算定する必要があります。
仕訳
引当金計上の仕訳
引当金の計上要件を満たした際に、合理的に見積もられた金額で引当金を繰り入れます。
2.例題
(1)環境対策及びリサイクルに関する引当金
以下の資料に基づいて、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
A社は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理費用に備えるため、X1年度から引当金を計上する。
なお、引当金の計上要件は満たしている。A社の保有しているポリ塩化ビフェニル廃棄物はトランス類3台分であり、それぞれ20kg、13kg、8kgの重量であった。
ポリ塩化ビフェニルの1台当たり処理費用は、以下のとおりである。
・10kg未満:30,800円 × 1台当たりの総重量
・10kg以上~15kg以下:442,000円
・15kg超~20kg以下:459,000円処理施設への運搬費用は、140,000円と見積もられた。
①X2年3月の仕訳を示しなさい。
参考資料↓