日商簿記範囲外のEX論点【暗号資産③】~暗号資産による商品売買~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、暗号資産の論点から「購入時・売却時の処理」を紹介します。
※今後、取り扱いが変わる可能性があります。
1.暗号資産による仕入・売上
概要
通貨である以上、仮想通貨を用いて物品を仕入れることや、売り上げることが可能です。
この場合、購入時の価額を暗号資産の譲渡価額とし、暗号資産の原価との差額で、損益を認識することになります。
なお、会計上の処理は現時点で定められていません。
その為、下記に示す仕訳は、あくまで一例ととらえていただければと思います。
当然、今後変更になる可能性もあります。
仕訳
仕入時の仕訳
商品を仕入れた際に発生した、買掛金決済時の暗号資産の価額は、円建ての場合は売却原価、暗号資産建ての場合は支払時レートにて計上すると考えられます。
このとき、相手方には支払時レートで送金されることとなります。
支払時レートによっては、暗号資産を1単位ごとではなく、小数点以下で送金することもあり得ます。
暗号資産と買掛金との差額は、暗号資産換算損益勘定(営業外損益)として計上することとします。
売上時の仕訳
暗号資産で売上金額を受け取った際の価額は、売上時のレートで計上すると考えられます。
暗号資産と売上高との差額は、暗号資産換算損益勘定として計上することとします。
※ただし、換算損益はほとんど発生しないようです(瞬時に円換算をする仕組みがあるとのこと)。
売上時(掛取引の場合)の仕訳
売掛金の決済時の価額は、入金時レートで計上すると考えられます。
上記と同様、暗号資産と売掛金との差額は、暗号資産換算損益勘定として計上することとします。
2.例題
(1)暗号資産による商品仕入
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
①X1年6月1日に、A社は取引所から暗号資産Xを400,000円(1円当たりレート:0.00000208X)で3単位購入した。
②X1年6月10日に、A社はB社から商品405,000円を仕入れ、代金は掛けとした。
③X1年6月15日に、A社はB社からの買掛金を暗号資産X:1単位分で支払った。
6月15日時点での暗号資産Xのレートは1単位:405,000円(1円当たりレート:0.00000222X)だった。
④X1年6月25日に、A社はC社から請求された仕入代金(暗号資産X:1単位分)を支払った。
なお、暗号資産Xのレートは下記のとおりである。
・仕入時レート ⇒ 1単位:425,000円(1円当たりレート:0.00000235X)
・支払日レート ⇒ 1単位:444,000円(1円当たりレート:0.00000225X)
(2)暗号資産による商品売上
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
①X1年6月5日に、A社はC社へ商品を売り上げ、代金1,000,000円は暗号資産Yで受け取った。
6月5日時点での暗号資産Yのレートは1,250,000円(1円当たりレート:0.0000008Y)だった。
②X1年6月20日に、A社はD社へ請求していた売上代金(暗号資産Y:1単位分)を受け取った。
なお、暗号資産Yのレートは下記のとおりである。
・売上時レート ⇒ 1単位:1,200,000円(1円当たり:0.00000083Y)
・入金日レート ⇒ 1単位:1,175,000円(1円当たり:0.00000085Y)