日商簿記範囲外のEX論点【連結会計③】~子会社発行の新株予約権~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、連結会計の論点から「子会社発行の新株予約権」を紹介します。
※この論点は、一部日商簿記1級の範囲を含みます。
1.子会社発行の新株予約権
概要
子会社が発行した新株予約権は、第三者に対して発行されたものか、親会社に対して発行されたものかによって処理が変わります。
仕訳
新株予約権保有時の連結修正仕訳 (第三者に発行)
仕訳不要
第三者に対して発行された新株予約権の場合、相殺消去の連結修正仕訳は不要です。
新株予約権保有時の連結修正仕訳 (親会社に発行)
新株予約権 XXX / 投資有価証券 XXX
繰延税金負債 XXX / 投資有価証券 XXX
その他有価証券評価差額金 XXX /
親会社に対して発行された新株予約権の場合、親会社が計上している有価証券と、子会社が計上している新株予約権を相殺消去する必要があります。
なお、親会社側が当該有価証券を時価評価している場合は、時価評価の取り消しも行います。
権利行使時の連結修正仕訳 (第三者に発行)
資本金 XXX / 非支配株主持分 XXX
資本剰余金 XXX /
or
資本金 XXX / 非支配株主持分 XXX
/ 資本剰余金 XXX
非支配株主持分 = 増資額 × 増資前の非支配持分比率 + 増資後の資本合計 × 増資分の持分比率
子会社が第三者に対して発行した新株予約権が権利行使された場合、親会社の持分比率は減少します。
その際の仕訳は、一部売却に準じます。
権利行使時の連結修正仕訳 (親会社に発行)
資本金 XXX / 子会社株式 XXX
資本剰余金 XXX / 非支配株主持分 XXX
非支配株主持分 = 増資額 × 増資前の非支配持分比率 - 増資後の資本合計 × 増資分の持分比率
子会社が親会社に対して発行した新株予約権が権利行使された場合、親会社の持分比率は増加します。
その際の仕訳は、追加取得に準じます。
2.例題
<1>子会社保有の新株予約権 (第三者向けに発行)
以下の資料に基づき、次の問に答えなさい。 (単位:千円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
P社は、X1年3月末にS社株式の120,000株を350,000千円で取得し、S社を連結子会社とした。
X1年度末のS社に関する情報は、以下の通りであった。
S社発行済株式総数:150,000株
資本金:300,000千円
利益剰余金:60,000千円
新株予約権:100千円X2年度末の資本勘定は以下の通りであった。
資本金:330,100千円
利益剰余金:65,000千円X1年度のS社が保有する土地(簿価:90,000千円)の時価は100,000千円であった。
S社の新株予約権100千円は、以下の条件で第三者に発行したものである。
発行数:100個
1個あたり発行価格:1,000円
1株当たり行使価格:3,000円
権利行使により増加する株式数:1個当たり100株X2年度末に、新株予約権のすべてが行使され、S社は株式を10,000株発行し、払込金額の全額を資本金に計上した。
のれんは、発生年度の翌期から10年、定額法にて償却する。
税効果会計は考慮しない。
①X1年度の新株予約権に関する連結修正仕訳を示しなさい。
仕訳不要
②X2年度の新株予約権に関する連結修正仕訳を示しなさい。
資本金 30,100 / 非支配株主持分 26,275
/ 資本剰余金 3,825
+ 新株予約権発行価格@1,000 × 新株予約権発行数100個
②非支配株主持分26,275千円 = 資本金増加分30,100千円 × (1 - 親会社側持分比率80%)
+ 増資後の資本合計405,100千円 × みなし取得比率5%
③資本剰余金3,825千円 = 貸借差額
④X2年度資本合計405,100千円 = 資本金330,100千円 + 利益剰余金65,000千円
+ 評価差額10,000千円
⑤親会社側持分比率80% = 親会社持分株数120,000株 / 発行済株式総数150,000株
⑥みなし売却比率5% = 親会社持分株数120,000株
/ (発行済株式総数150,000株 + 増加分株式10,000株) - 80%
※親会社側持分比率:80% - 5% = 75%
<2>子会社保有の新株予約権 (親会社向けに発行)
以下の資料に基づき、次の問に答えなさい。 (単位:千円)
会計期間は、4月1日~3月31日とする。
P社は、X1年3月末にS社株式の108,000株を320,000千円で取得し、S社を連結子会社とした。
X1年度末のS社に関する情報は、以下の通りであった。
S社発行済株式総数:180,000株
資本金:360,000千円
利益剰余金:40,000千円
新株予約権:120千円X2年度末の資本勘定は以下の通りであった。
資本金:402,120千円
利益剰余金:60,000千円X1年度のS社が保有する土地(簿価:90,000千円)の時価は120,000千円であった。
S社の新株予約権120千円は、以下の条件で親会社に発行したものである。
発行数:120個
1個あたり発行価格:1,000円
1株当たり行使価格:3,500円
権利行使により増加する株式数:1個当たり100株P社は、上記新株予約権をその他有価証券として保有している。
X1年度の新株予約権の時価は1個当たり@1,500円であった。X2年度末に、新株予約権のすべてが行使され、S社は株式を10,000株発行し、払込金額の全額を資本金に計上した。
のれんは、発生年度の翌期から10年、定額法にて償却する。
税効果会計は、その他有価証券および土地の評価差額のみ考慮し、税率は40%とする。
①X1年度の新株予約権に関する連結修正仕訳を示しなさい。
新株予約権 120 / 投資有価証券 120
繰延税金負債 24 / 投資有価証券 50
その他有価証券評価差額金 36 /
②投資有価証券(時価上昇分)60千円 = (新株予約権時価@1,500 - 発行価格@1,000) × 発行数120個
③繰延税金負債24千円 = 投資有価証券60千円 × 40%
④評価差額金36千円 = 投資有価証券60千円 × (1 - 40%)
②X2年度の新株予約権に関する連結修正仕訳を示しなさい。
資本金 42,120 / 子会社株式 42,120
資本剰余金 4,845 / 非支配株主持分 4,845
+ 新株予約権発行価格@1,000 × 新株予約権発行数120個
②非支配株主持分4,845千円 = 資本金増加分42,120千円 × (1 - 親会社側持分比率60%)
- 増資後の資本合計480,120千円 × みなし取得比率2.5%
④X2年度資本合計480,120千円 = 資本金402,120千円 + 利益剰余金60,000千円
+ 評価差額18,000千円
⑤評価差額18,000千円 = (S社土地時価120,000千円 - S社土地簿価90,000千円) × (1 - 40%)
⑥親会社側持分比率60% = 親会社持分株数108,000株 / 発行済株式総数180,000株
⑦みなし取得比率2.5% = (親会社持分株数108,000株 + 増加分株式12,000株)
/ (発行済株式総数180,000株 + 増加分株式12,000株) - 60%
※親会社側持分比率:60% + 2.5% = 62.5%
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