日商簿記範囲外のEX論点【債権・債務⑤】~ゴルフ会員権~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、債権・債務の論点から「ゴルフ会員権」を紹介します。
※この論点は全経簿記上級の範囲となります。
1.ゴルフ会員権
概要
ゴルフ会員権には大きく分けて3種類あり、
社団法人会員制
預託金会員制
株主会員制
に分かれています。
社団法人会員制は、所有している者は社団法人の構成員としての地位を有する制度です。
基本的に他人への権利譲渡を認めていません。
預託金会員制は、ゴルフ場に預託保証金と入会金を支払い、利用権を取得する制度です。
現在、多くのゴルフ場が預託金会員制を採用しています。
株主会員制は、ゴルフ場に一定の金額を出資し、株主となることで利用権を得られる制度です。
株主のため、株主総会へ出席が可能です。
ゴルフ会員権の内訳
会員権の本体価額
入会金
名義書換料
取り扱い手数料
上記すべてを、ゴルフ会員権として計上することになります。
預託金会員制の場合の仕訳
取得時の仕訳
会員権を取得した際は、取得価額でゴルフ会員権勘定(投資その他の資産)を計上します。
取得に要した費用も、ゴルフ会員権に含めます(ゴルフ会員権の内訳参照)。
減損時の仕訳
ゴルフ会員権は期末時の時価評価を行いません。
ただし、
時価のある会員権:著しい時価の下落(50%以上)が発生した
時価のない会員権:発行会社の財政状態が著しく悪化した
上記のような場合は、減損処理を行い、評価損を計上します。
預託金会員制の場合、取得価額と預託保証金の差額分まではゴルフ会員権評価損勘定(特別損失)で計上します。
減損する金額が預託保証金部分を超過する場合、貸倒引当金を設定します。
売却時の仕訳
ゴルフ会員権を売却した際は、売却金額によってゴルフ会員権売却損勘定(特別損失)か、ゴルフ会員権売却益勘定(特別利益)を計上します。
株主会員制の場合の仕訳
取得時の仕訳
会員権を取得した際は、取得価額でゴルフ会員権(もしくは投資有価証券、出資金)勘定を計上します。
取得に要した費用も、ゴルフ会員権に含めます(ゴルフ会員権の内訳参照)。
減損時の仕訳
株主会員制の場合、減額すべき価額をゴルフ会員権評価損勘定(特別損失)で計上します。
売却時の仕訳
2.預託金会員制の場合の仕訳と同一
2.例題
<1>預託金会員制
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
①当社は、X1年4月1日にゴルフ場の会員権を下記の条件で購入した。
・購入価額(預託保証金額):500,000円
・入会金:300,000円
・名義書換料:50,000円
・その他取扱手数料:9,000円
②X1年の期末を迎えたので、必要な処理を行う。
ゴルフ会員権の市場価額は550,000円であった。
③X2年の期末を迎えたので、必要な処理を行う。
ゴルフ会員権の市場価額は400,000円であり、回復可能性は認められなかった。
<2>株主会員制
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
①当社は、X1年4月1日にゴルフ場の会員権を下記の条件で市場から取得した。
・購入価額(預託保証金額):400,000円
・入会金:250,000円
・名義書換料:22,000円
・その他取扱手数料:4,000円
②X1年の期末を迎えたので、必要な処理を行う。
ゴルフ会員権の市場価額は420,000円であった。
③X2年の期末を迎えたので、必要な処理を行う。
ゴルフ会員権の市場価額は320,000円であり、回復可能性は認められなかった。
3.余談
諸費用の取り扱い
ゴルフ会員権取得後、プレイ料や年会費などが発生することがあります。
いずれも所有目的(接待利用や福利厚生)によって、接待交際費または福利厚生費で計上することになります。
個人で保有する場合
役員や使用人が個人で会員権を保有する場合は、給与として計上することになります。