⑪転生ゴブリン、食べ物チートで国を作る
第11話 次なる目標
日が高く、影か短くなる時間帯。
森のなかでは、恒例となった昼食会が開かれていた。
ミラと斥候のリリィ、僧侶のララ、それに妹のミリちゃん。こっちはオレにトモミさん、キクフク、それに、ミコ。もはやちょっとした人数だ。
みんなはオレの料理を手に、思いおもいの場所と相手に話をしている。そんななかで、オレはミラとミコの3人で話をしていた。
ミコは倒れた木をベンチにして両足を伸ばして座っている。その伸ばされた左足を、ミラは注意深く触り、長さを計ってメモしている。
「どう? 義足、作れそう?」
「このサイズは店には置いてないから、オーダーメイドになるかな。少し時間がかかるかも。でも大丈夫。世界で一つの、ミコのための義足を用意できる。歩いたり、走ったり。普通に生活できるようになるよ」
その言葉に、ミコの目が細くなり、顔がうっすらと赤くなる。
嬉しさを外に出さないようにする姿は、なんだか可愛らしくて、同時にミコが嬉しいことが、嬉しかった。
「──そうか。それは、嬉しいな」
「オーダーメイドだと、本来なら1ヶ月~2ヶ月位かかるんだけど。ちょっと無理を言って早く作ってもらう」
「無理はしなくていいんだ。こんなにしてもらっているのに、こちらからはなにもできなくて、すまない」
ミラはミコの頭に手をおいた。
短くて、綺麗な髪を撫でる。
まるで姉妹のような光景だった。
「気にしなくていいの。ミコがまた、歩けるようになるのが見たいだけなんだから」
ミコは俯いて「ウン」と答えた。
それを見たミラは、嬉しそうに笑い、それから立ち上がって、オレの方に来た。
「サンキュ、ミラ」
「いいんだよ。気にしないで」
「あとは、お金についてなんだけど」
「それも大丈夫。私はキミから、お金よりも素敵なものをもらっている。キミと会って、ミリも元気になったし、リリィもララも経験を積んで、危なっかしいながらも一人前になれた。あの2人、今では専属でパーティに所属しているんだよ。私も、雇われだけどいくつか良い依頼を達成できてさ。余裕ができたし、なにより良い出会いがあったの。これも全部、キミのお陰。だからこれは恩返し。キミがしたことが、形を変えてミコの義足なった。そういうこと」
マジか。そんな風に言って貰えると、めっちゃ嬉しいな。
オレ、ご飯食わせただけだけど。
「本当に大丈夫なのか?」
「本当に、本当」
「分かった。なにかできることがあったら、いつでも言ってくれよな」
「お互いにね」
そう言ってミラは笑った。
出会ったときの、べっとりと張り付くような、疲れと影はもうない。口調も、以前より優しくなっている。なにより、笑顔が明るくて、素敵だった。それだけでもう、満足だ。
「ところで、ゴブリンの被害はまだ続いているか?」
「うん。前と同じ、ずっと続いている」
そうか。
ゴブリンの巣穴はひとつ押さえた。
それでも被害が減ってないってことは、別のところが原因なのだろう。
別の巣穴がある。
それが被害の元凶だとしたら。
そこを押さえることは、オレ達にも、ミラ達にもメリットがある。
「分かった。たぶんウチらとは別の巣穴があるはず。こっちで探して、おとなしくさせるよ」
それを聞いたミラは難しそうに、眉間にシワを寄せた。
「どうした?」
「いや。キミがそう言ってもらえるのは嬉しいんだが」
──ん?
ああ。あれかな。
ミラはきっと、オレがゴブリンだから。ゴブリン同士での争いを気にしてるのかな。
「別に気にすることじゃないよ。人間だって、人間同士で戦うじゃん」
「そうだな。その通りだ。でも。私はそれが、あんまり好きじゃないんだ」
「理想論だね。理想じゃ、飯は食えない」
「──わかってる」
「でもさ。オレはミラの考え、大好きだよ。オレも世界が平穏だったらいいなぁっ、て思う。だからこそさ。今回のことはオレがやるべきだと思ってる。ゴブリンが家畜や人を襲うのは少なからず食べるものがないからだと思うんだ。だからオレが行って、食べ物の問題を解決する。そうすれば、町に被害はいかなくなるはず」
オレの言葉を、ミラはびっくりしたように聞いていた。
それから小さく笑って言った。
「それは素敵だね。私にできることがあれば、何でもする。だから協力させて」
「サンキュ! じゃあ早速。ゴブリンについて新しい情報があったら、教えて欲しい」
「他には?」
「調理器具と農具があると嬉しい」
「分かった。用意する」
ミラと約束したあと、三人はめいめいに昼食会にもどり、会話と料理を楽しんだ。
食べたあとは片付ける。
みんなで昼食会の片付けを終え、めいめいの仕事に戻っていく。
さて、と。オレも、オレの仕事をしよう。
オレの仕事は、巣穴を見つけて、制圧することだ。
そのためには、重要人物の協力が必要不可欠だ。
今回の作戦のキーマン。
松葉杖をついた、その人物のところにいく。
「なぁ、ミコ。ちょっと話し、大丈夫?」