主人公に必要なもの
実家の本棚に「海のトリトン④」がありまして。
ぱらぱらと読んだ感想文です。
どうしても言いたいことがあるので聞いてください。
海のトリトン④の第25章「ゴーブ退治」を題材に、主人公に必要なものについて書きます。
まずはあらすじ
トリトン視点のあらすじ
怪物ゴーブ(巨大なワニのような見た目)の出す毒によって、海の生き物たちの体が溶けてしまっている。トリトン(少年)はゴーブ退治に乗り出す。
トリトンは相棒の黄金のイルカ、ルカーと共に、ゴーブを入り江に誘いだし、引き潮を使って干からびさせる作戦を実行する。しかし、折り悪く成長期(一気に年齢を重ねて青年になる時期)が来てしまい、しばらくの間動けなくなってしまう。トリトンが眠っている間、ルカーがゴーブを引き付け時間を稼ぐ。
目覚めたトリトン(青年)はルカーといっしょに作戦を実行。ゴーブは手強く、ルカーの危機もあったが、最後にはゴーブを倒す。
なんとな~く
もの足りなくありませんか?
トリトン視点だとどうしても薄味に感じます。
でもこれが、ルカー視点だと印象が変わります。
ルカー視点のあらすじ
怪物ゴーブの出す毒によって、海の生き物たちの体が溶けてしまっている。ルカーが状況を報告すると、トリトンはゴーブを退治すると言う。
トリトンはゴーブを入り江に誘いだし、引き潮を使って干からびさせる作戦を計画、実行する。しかし、折り悪く成長期が来てしまい、トリトンはしばらくの間動けなくなってしまう。トリトンが眠っている間、ルカーがゴーブを引き付ける。
ゴーブの気を引くため、自分をおとりにして逃げるルカー。途中、逃げた先が密室になっており窒息の危機に見舞われたり、カモメ達に助けを求めたりし、なんとかトリトンが目覚めるまで時間を稼いだ。
目覚めたトリトンといっしょにゴーブを入り江までおびき寄せることに成功するが、ルカーはゴーブの舌を巻き付けられ、あわや食べられてしまいそうになる。間一髪で、ゴーブの体力が尽き、ルカーたちはゴーブ退治に成功する。
2つのあらすじ。
ルカーの方が面白そうじゃないですか。
問題です
2つの視点から同じものを見てきましたが、違いがわかりますか?
答えは2つあります。
聞いておきながら、すぐに答えを言う不親切設計で申し訳ありませんが、答えは「ゴール」と「ハードル」です。
トリトンのゴールはゴーブの退治。
ハードルはゴーブ、、、ではありません。
もちろん表面上はゴーブですが、物語としてはトリトンにハードルはありません。なぜなら、トリトンはルカーの背中に乗っているだけ、戦いの様子を見ているだけ、だからです。
ハードルのないゴール。それがトリトン視点でした。
一方ルカーはどうでしょう。
ルカーのゴールは、最初はありません。
ゴーブ退治もトリトンがやることで、ルカーはサポート役です。しかし、トリトンが行動不能になることで、状況が一変します。
トリトンが目を覚ますまで時間を稼ぐ。というゴールが生まれます。
ハードルはゴーブです。強大な敵に対して、からだひとつで時間を稼ぎます。
そして、危機を乗り換え、外部からの助けを借りて、なんとかゴールにこぎ着けます。
しかし、そこで終わりません。
第2ラウンドがあります。
ゴープを入り江まで誘い出すことに成功しました。次は引き潮まで引き付けることがゴールです。ハードルはゴーブ。途中、ルカーはゴーブの舌に巻き取られてしまいます。心配してルカーを助けようとするトリトンの身を案じて、手を離せと言うシーンがあります。あわや、というぎりぎりのタイミングで、ゴーブは力尽きました。
結局、この話はルカーの物語だったんですね。
結論、主人公に必要なものは、
「ゴール」と「ハードル」。この2つです。
この2つをちゃんと設定すると、物語は魅力的になります。
以上でタイトルは回収しました。
そして最後に、冒頭部分の回収です。
これが一番声を大にして言いたい。
ルカーが主人公なら、そうだとわかるような構成にしてください!!!
もっと分かりやすく、トリトンがルカーを頼るような、主人公をバトンタッチするような描写を入れてください!!!
現場からは以上でした。