スマホ世代の若い女性が憧れ、実践する「丁寧な暮らし」とは何か
忙しい日々を送る若い女性のライフスタイルを表すキーワードとして馴染み深い「時短」や「ズボラ女子」。しかし「MERY」のメディア内においては、「丁寧な暮らし」という相反するキーワードの検索数が、2018年から2020年にかけて急上昇している。
若者が注目する「丁寧な暮らし」とは一体どういったものなのか? MERY世代の女子3名に行った取材を基に考察していく。
この2年で 12.8倍! 近年増加している「丁寧な暮らし」
MERYでは、より若者目線の記事を届けるために約80人の公認ライターが記事を執筆しています。数ある記事のテーマの中から、今回注目したのは「丁寧な暮らし」というキーワード。
MERY内で検索してみると、「私だけのこだわりが欲しい。おしゃれな人が始めてる『new』丁寧な暮らしの第一歩」「私が描く『丁寧な生活』とはまさにコレ。憧れる4人のお洒落なVLOGまとめ」などの記事をはじめ、関連する記事が100件以上も掲載されています。また、そのほとんどは2019年~2020年にかけて公開された記事であり、近年増加傾向にあることが明らかになりました。実際どのくらいの変化があるのでしょうか。
「丁寧な暮らし」の検索数を2018年と2020年で比較したところ、その差は12.8倍に! なぜ若者の中でこんなにも検索数が急増しているのか。その理由を探るべく、大学生読者のカホさんとハルカさん、社会人読者のマリナさんへ取材を実施。MERY読者である3人の回答からは、若者が憧れを抱いている丁寧な暮らしの傾向や共通点が見えてきました。
「丁寧な暮らし」の定義を決める、3つの傾向
「丁寧な暮らしをしたいと思うか」という問いに対し3人全員が「憧れている」と回答。具体的にどういった暮らしに憧れているのか聞いたところ、その回答にはある違いが見受けられました。
「自分の部屋に植物を置いたり、アロマキャンドルをたいたり。あとはプロジェクターを使って映画を壁に映し出すのも憧れます」
と答えたのはカホさん。韓国が好きな彼女は、インスタグラムなどを参考に、韓国のカフェなどでよく見られる暗い照明を使用した空間づくりを目指しているといいます。
それに対しハルカさんは
「スキンケアやファッションにこだわりたい」
と回答。質の良い化粧品やファッションブランドに憧れており、カホさんとはまったく異なるベクトルから丁寧な暮らしにアプローチしています。
唯一の社会人であるマリナさんは
「無理のないペースで、自炊や掃除をこまめにしたいです。丁寧な暮らしと聞いてイメージするのは、モノよりも行動ですね」
と、自分の行動を変えていきたいと回答しました。
以上の回答から、3人とも自分の生活を今よりももっと充実させたいと考えていることが共通点として挙げられます。
一方で、3人の回答を踏まえ見えてきたのが「丁寧な暮らし」の定義。人気のキャンドルや植物を生活に取り入れて、お部屋づくりにも工夫を凝らす「居心地のいい素敵な空間をつくり出す派」、たとえ高価であっても良いと感じるものには投資をし、上質な化粧品や日用品などを愛用する「いいものに投資派」、そして、料理や掃除などに時間をかけて暮らしそのもののレベルUPを目指す「手間を惜しまない行動派」。大きく分けると3つの傾向があることがうかがえます。
大学生の2人が空間やモノにこだわる一方で、社会人であるマリナさんは暮らしの改善を重視していることから、どんな丁寧な暮らしを実践するかは、経済的な余裕や、時間の余裕が関係していることも推測できます。
丁寧な暮らしを意識することで、生活はどう変わったのか
丁寧な暮らしを意識しながら生活しているという3人に、今までの生活との変化を聞いてみました。
カホさんは
「私はマメなタイプではないので、SNSなどで丁寧な暮らしをしている人を見ると、いいな、憧れるな、と思います。私自身も丁寧な暮らしを意識し始めてから、日記を付けたり、イラストを描いたりして、それらをインスタグラムで公開するようになりました」
と、大きなきっかけとなったSNSに自分の生活についての投稿を開始したと回答。
カホさんは部屋の空間づくりに強いこだわりを持っており、最近はアロマ関連のグッズなど、居心地のよい空間をつくりあげるアイテムを意識的に購入しているそうです。
ハルカさんの場合、今まで自分自身の容姿に対して無頓着であったことを改善したいと思ったそうです。
「原料や素材にこだわっているブランドのハンドソープやピーリングマスクを買いました。また、意識高く自分磨きを続けるために姿見も購入。毎日自分の見た目と向き合うことができます」と回答しました。
以前に比べ美意識がより高まったのか、化粧品以外にもファッションを楽しむために洋服を買う頻度も増えたそうです。
大学を卒業するまで実家暮らしだったこともあり、社会人になってから丁寧な暮らしを意識するようになったというマリナさん。動画投稿サイトYouTubeに投稿される韓国のVLOG*1やルーティン動画を見るようになったことをきっかけに、料理やサブスク*2サービス入会など、真似をしやすいことから少しずつ生活に取り入れているといいます。
マリナさんによると
「私は映画のサブスクを契約しました。MERYの『憧れのQOLは、流行りのアレで叶えちゃう?5TYPEの“サブスク”で生活を豊かに』という記事にもあるように、ファッションやコスメ、お花までサブスクで楽しむことができるのでいろいろ活用してみたいです」
と、丁寧な暮らしの第一歩としてサブスクを始める人が多いことにも注目しているとのことでした。
*1「Video Blog」の略称。日常の風景や出来事を撮影した動画コンテンツ
*2「サブスクリプション」の略称。代金を定期的に支払うことで一定期間商品やサービスを受けられる購買方式
丁寧な暮らしが注目されている理由
現代の若者が生きる、モノや情報が溢れる社会。丁寧な暮らしが若い世代の間で流行している背景には、SNSや動画配信サイトの普及が大きく影響しているとMERYは推測します。なぜなら、今まで見ることができなかった他人のプライベートや、知らなかった異文化にネットワークを通して触れることができるようになったからです。
特に注目したいのが「韓国」。MERY Labで以前公開したコラム「なぜU25の女の子たちは「韓国カルチャー」にハマるのか」では、通販サイトやアイドル、ドラマの流行による韓国カルチャーの流行を取り上げています。今回取材した3人のうち2人も「韓国」というワードを用いて回答していることから、若者が丁寧な暮らしを形作る上で、韓国の文化は欠かせない要素になりつつあると考えられるのではないでしょうか。
vlog
韓国にはPONY Syndromeなど数百万のチャンネル登録者を持つ人気Vloggerが多い。上写真は日常を切り取ったVlogで人気のszulnne。
また、「学生たちの間で、SDGsがこれほどまでに認知されているのはワケがある」にもあるように、環境問題や社会問題に触れる機会も多い若い世代。メディアやイベントなどでも取り上げられるSDGsという言葉は、若者の間でトレンドにもなりました。さまざまな価値観を持つようになったからこそ、今の若い女性は見た目やブランドよりも、素材や、身体・環境への優しさを優先してモノを購入している傾向にあります。結果的にライフスタイルのこだわりが増え、丁寧な暮らしにつながるといえるでしょう。
まとめ
SNSやインターネットでの発信が主流となっている現代。若い世代は、スマートフォンから画像や動画を含むさまざまな情報を獲得できます。発信の大多数を著名人が占めていた時代は過ぎ去り、身近に感じることができる一般人が動画やVLOGで気軽に日常をシェアできる時代です。
プチプラやミニマリズムなど、より実践しやすい暮らし方のコツが広まり、多くの若者の暮らしに影響しています。丁寧な暮らしに憧れを抱き、SNS上の「保存」や「ブックマーク」機能でいつか実践できるようにメモを残す人も珍しくありません。
そして、追い打ちをかけるようにやってきた外出自粛は、多くの人にとって日々の「暮らし方」に目を向けるきっかけにもなりました。今後も変化していく社会に合わせ、丁寧な暮らしを求める若者が増加していくのではないでしょうか。
本コラムはMERY LabがForbesJAPANに寄稿したものです。https://forbesjapan.com/articles/detail/37619
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