「まる子と城ヶ崎さんの地下ライブ」最終話
こうして城ヶ崎さんはまる子の紹介で月10本はエントリーライブに出た。知り合いの芸人さんも少しづつできてきた。
戸川:城ヶ崎さん、今度私の主催ライブに出てくれませんか?ノルマはありませんよ。
城ヶ崎:戸川先生!いいんですか?出ます!
城ヶ崎さんはその美貌で、いつの間にか取り置きのお客さんも増えていった。
城ヶ崎:今日は初めて戸川先生の主催ライブ出る日よ。私の取り置きは、佐々木の爺さん、はまじの爺さん、川田さん。
まる子:いやぁー、城ヶ崎さん凄いね。あたしゃ取り置き0だよ。
藤木:僕も毎回0さ。
開演
城ヶ崎:あら、お客さん、私が呼んだ3人しか来てないわね…
その後
はまじ:城ヶ崎、今度俺の主催ライブに出てくれないか?あ、ほんとはノルマライブなんだけどよ、城ヶ崎ならノルマはなしでいいぜ。さくらとかには秘密だぜ。
城ヶ崎:え?いいのかしら。わかったわ。
こうしてお客さんを呼べる城ヶ崎さんは、オファーのライブ、実質ゲスト扱いでノルマのないライブからすぐに声がかかるようになった。
まる子:いやぁ、やっぱり城ヶ崎さんはエリートの素質あるよ。お客さん呼べる人ってなると、まだあんまりテレビに出れてなくても、声がかかりやすくなるもんだね。
藤木:そうさ。お客さんが呼べない、テレビにも出てないとなると、自分でエントリーするしかないからね。
まる子:城ヶ崎さんみたいなタイプがほとんどノルマを払った事のない芸人だね。
藤木:羨ましいけどこの世界は弱肉強食さ。客を持ってるか、テレビに出てるか、ここが優遇されるのは当然の事なのさ。数字が全てなのさ。
まる子:どんな職種でもそんなもんだよね。後はノルマはなくてもその分1時間みっちり呼び込みをするライブとかね。
藤木:僕も出たよ。呼び込みのライブ。大野と杉山はどんどん女の子に声かけてすごい集客をしていたよ。
まる子:大したもんだね。あたしゃ頑張って1時間呼び込みしても1人も呼べなかったよ。
〜空想シーン〜
まる子:お笑いライブやりま〜す!これから、すぐそこ!600円だよ!お姉さん、どう?
無視
まる子:お兄さん、どう?お笑いライブ!
無視
まる子:あ!根岸くんだ!お笑いライブこれからどう?
根岸:まる子ちゃんごめんよ。これから妹の宿題見てやらないと。また今度来るからね。
まる子:そっか… 根岸くん… あ!おじいちゃんだ!おじいちゃんならライブ来てくれるよね!?
友蔵:まる子や、すまん!ワシこれなら中野さんと囲碁をやる約束をしていてのう。
〜空想終わり〜
そう簡単に道行く人は立ち止まってくれない。得体の知らないお笑いライブ?とやらに、いくら600円と安かろうと、なかなか知らない人に着いて行く勇気なんてないものだ。
その後城ヶ崎はその美貌から大手のお鍋プロに受かり、TikTokでバズってすぐに有名になった。気付けばライブにはゲストで呼ばれていた。
まる子:いやぁ、城ヶ崎さんアンタはやっぱ凄いよ。ところでさ、ゲストってギャラもらってるの?
城ヶ崎:そうねぇ、ノーギャラか、千円か二千円ってとこね。もらえるだけありがたい事だわ。普通は払って出るんだものねぇ。
まる子:世知辛いね。有名になってもお笑いライブ=インディーズ、地下っていう文化なんだね。
藤木:売れた人は営業やメディアの仕事が増えて、ほとんどお笑いライブには出なくなるってわけか。
まる子:ライブって、お茶の間の有名人ばかり出てて、お客さんが入って、黒字になって1ステ1万もらえる、みたいな文化がほとんどないよ。
藤木:そうさ。稀に文化会館とかに有名な人達がたくさん出るお笑いライブがあるけど、あれはライブという名の営業だね。あとは、ものまね芸人さんなんかが出てるショーパブも仕事だね。
城ヶ崎:ライブ=修行。営業やショーパブ=仕事 ってわけね。
まる子:まさか世間一般は、芸人がお金払ってライブに出てるって文化、知らないだろうね。
藤木:うん。昔親戚のおじさんに、「ライブにたくさん出てる」って教えたら、「茂、儲かってるね!売れっ子!」って言われたよ。
〜終〜
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