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【FAS】Big4 FASの部門別詳細(業務内容、新卒配属率、転職先、中途の出身業界)を徹底解説!

Big4 FAS(財務アドバイザリーファーム)という言葉を耳にしたことがある方なら、その響きの向こうに「プロフェッショナル集団」の姿を思い浮かべるかもしれません。M&A、企業再生、財務デューデリジェンスといった業務は一見華やかでダイナミックに映りますが、その実態は驚くほど緻密で、時には泥臭いプロセスの積み重ねです。

Big4のFAS部門では、経営者たちの重大な意思決定を支え、数字の裏に隠された真実を見つけ出す日々が続きます。しかし、FASというフィールドはひとくくりには語れません。ストラテジー、ファイナンシャルアドバイザリー、デューデリジェンス、バリュエーション、事業再生、それぞれの部門には異なる役割、専門性、そしてキャリアの道筋があります。

この記事では、Big4 FAS各部門の業務内容、新卒と中途採用の比率、転職先や中途入社者のバックグラウンドに至るまで、実際に勤務をした管理者の実体験を交えてリアルな視点で掘り下げていきます。


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Big4 FASの部門別紹介

Big4のFAS部門は、一つの組織内に複数の専門性が共存する形です。同じ「FAS」という言葉で括られながらも、ストラテジー、ファイナンシャルアドバイザリー、財務デューデリジェンス、バリュエーション・モデリング、事業再生という5つの領域は、それぞれ異なる役割と機能を担っています。

ここでは、各部門の「業務内容」「新卒配属率」「中途入社者の出身業界」「主なキャリアパス」などを徹底解説していきます。

Big4 FASの部門別紹介 | ストラテジー部門

ストラテジー部門は、その名前の通り企業に対して上流工程の戦略やビジネスの観点からコンサルティングや調査業務を行う部門です。

Big4 FAS ストラテジー部門 | 業務内容

FASのストラテジー部門では、M&A戦略の立案や投資先の選定、ビジネスデューデリジェンス(BDD)、投資基準の策定、統合後のモニタリング支援など、多岐にわたる業務を手掛けています。中でも中心的な役割を果たすのはBDDで、対象企業のビジネスモデルや市場競争力、収益構造を多角的に評価し、経営陣の意思決定を支えます。

FASはもともと会計分野を強みとして成長してきた組織です。そのため、純粋なストラテジー領域を生業とする戦略コンサルティングファームや総合コンサルティングファームと比べると、この分野でのブランド力や市場での認知度には一定の差があります。Big4グループであれば同じグループ内に戦略コンサルティングファームや総合コンサルティングファームが存在しているため、案件の獲得競争や協業が発生するケースも珍しくありません。

例えば管理者が見た範囲ですと、FASで大型案件を受注してBDDや事業計画策定支援はFASで受注する一方で人事DDは系列の総合コンサルティングファームを巻き込んでチーム組成を行ってました。このように、大型案件の場合ファームをまたいでクライアントへ業務提供をすることは決して珍しくありませんが、どの業務を系列コンサルティングファームにアウトソースするかは各法人・各チームの方針によって異なるため一概には語れません。

Big4 FAS ストラテジー部門 | 新卒配属率

ストラテジー部門は、FASの中でも新卒採用が比較的多い部門です。特にリサーチ業務や市分析業務は新卒社員が比較的能力を発揮しやすい領域のため、他部門と比較しても積極的に新卒を受け入れて教育する傾向があります。

Big4 FAS ストラテジー部門 | 中途の出身業界

ストラテジー部門に集まる中途社員は、経歴もバックグラウンドも多彩です。しかし、特に多いのは次の分野です。

1. 戦略コンサルティングファーム
経営戦略の策定やプロジェクトマネジメントに長けた人材が多く、顧客との対話や課題解決のプロセスを熟知しています。戦略コンサルティングファームの代表格であるMBB(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニー)に在籍していたメンバーが管理職にいることもあります。

2. 総合コンサルティングファーム
幅広い業務経験を持つ人材が多く、戦略策定だけでなく、PMIなどその後の実行支援まで一貫して対応する能力に優れています。

3. 事業会社の経営企画部門
現場での実務経験をベースにした現実的な提案が得意です。組織運営の裏側を知るからこそ、経営陣の意図を的確に汲み取ることができるため、ストラテジー部門の採用ターゲットとなります。

また、上記の他に、管理者が実際に見聞きする範囲で近年ではスタートアップ企業の経営層起業経験者も増えています。実際にビジネスをハンドリングした経験を持つ人は貴重なため、管理者が知っている範囲でも、FASのストラテジー部門にて一定数受け入れておりました。

Big4 FASの部門別紹介 | ファイナンシャルアドバイザリー部門

ファイナンシャルアドバイザリー部門は、M&Aのオリジネーション(案件組成、営業)やエグゼキューション(案件執行)を担う部門です。

Big4 FAS ファイナンシャルアドバイザリー部門 | 部門の業務内容

ファイナンシャルアドバイザリー部門は、M&A取引の実行支援を中心に、資金調達や事業再編などをサポートします。M&Aの現場はスピード感が求められる一方で、膨大な財務データの精緻な分析や取引条件の緻密な設計が不可欠です。本部門は、そうした複雑さの中で取引を成立させるために「舵取り役」としてプロジェクトマネジメントを担います。

取引プロセスでは、買収候補の選定や企業価値の算定、財務リスクの洗い出しなど、各段階で専門的な知識が求められます。売り手側に立つ場合は、適切な買い手の特定や企業価値を最大化する交渉支援も重要な役割です。

Big4 FAS ファイナンシャルアドバイザリー部門 | 新卒配属率

ファイナンシャルアドバイザリー部門は、新卒の割合がやや高めです。新卒でも親和性の高い業務内容が多く、特に財務モデリングや企業価値評価、データ分析などの業務は新卒社員にも取り組みやすい領域です。

一方で、ファイナンシャルアドバイザリー部門は他部門と比較してもクライアントコミュニケーションが多い部門です。加えて、相対するクライアントの担当者は40-50代の経営層や責任者クラスがメインであり、これらベテランクラスの方々とコミュニケーションを社会人経験が浅い新卒が行うのはやや荷が重いたため、新卒の割合は高い部類に入る者のストラテジー部門と比較するとファイナンシャルアドバイザリー部門への配属率は低めです

Big4 FAS ファイナンシャルアドバイザリー部門 | 中途の出身業界

ファイナンシャルアドバイザリー部門に中途採用で入社する人材は、以下の業界出身者が多く見られます。

1. 投資銀行(M&Aアドバイザリー部門)

投資銀行のM&Aアドバイザリー部門はエグゼキューションの知見や経験が深いため、Big4 FASのファイナンシャルアドバイザリー部門に転職する方はエグゼキューション分野の即戦力として案件を回します。
一方で、ファイナンシャルアドバイザリー部門のマネージャークラスはエグゼキューションよりオリジネーションの比重が高まるため、投資銀行で営業経験を積んでいない方がBig4 FASのマネージャークラスに転職するとミスマッチが起きるリスクがございます。

2. 投資銀行(カバレッジ部門)

投資銀行のカバレッジ部門は大企業へのオリジネーションをメインで行っているため、Big4 FASのファイナンシャルアドバイザリー部門に転職する方はオリジネーション分野の即戦力として案件を回します。
しかしながら、営業職としての転職に近いため、エグゼキューション能力はBig4 FASのプロパーと比較して劣後するケースがございます(DDロジ対応、契約交渉対応など)。こちらを踏まえて、意図的に投資銀行カバレッジ部門からBig4 FASのスタッフクラスで転職を行い、スタッフとして案件執行能力を磨き上げてからBig4 FASのマネージャークラスを目指す方もいます。

3. 事業会社(投資担当)

自社でM&A案件に携わった経験を活かし、ファイナンシャルアドバイザリー部門に中途採用で転職する方です。このような方々はM&Aに対する一定の知識があるため採用候補対象となります。ただし、アドバイザーとして求めらる能力という観点では身に付けていないケースが多く、ポテンシャルでの採用という意味合いが強いです。

Big4 FAS ファイナンシャルアドバイザリー部門 | 主なキャリアパス

ファイナンシャルアドバイザリー部門で経験を積んだ後は、以下のキャリアが代表的です。

1. 投資銀行

M&Aアドバイザリー部門への転職が最も多いです。ファイナンシャルアドバイザリー部門で得た経験を活かしつつ、更に複雑なスキームや大型案件にチャレンジしたい方が転職をされています。投資銀行への転職にあたってはある程度の職階ディスカウントは行っております。

一方で、「豊富なクロスボーダー案件経験」「高い語学力」など秀でたスキルがある方は特に職階ディスカウントもなく横スライドでの転職に成功しています

また、M&Aアドバイザリー部門以外にカバレッジ部門やその他プロダクト部門へポテンシャルを見込んで転職をされている方もいます。Big4 FASで得た論理的思考力、数字の素養、ビジネススキルが主に評価されていると思われます。

2. PEファンド(プライベートエクイティファンド)

ファイナンシャルアドバイザリー部門で経験を積むとプリンシパル投資側に移りたいと思う人は多いです。そのため、ファイナンシャルアドバイザリー部門からPEファンドへ転職を目指す方々は多いです。

一方で、PEファンド側のメインの採用ターゲットは戦略コンサルティングファームや投資銀行であるため、外資やラージキャップの著名ファンドは戦略コンサルティングファーム・投資銀行をメインに採用し、Big4 FAS ファイナンシャルアドバイザリー部門からの転職者の多くはミドル~スモールキャップの案件を扱うファンドへの転職が多いです。

ただし、可能性が全くないということはなく、Big4 FAS ファイナンシャルアドバイザリー部門の出身者で外資やラージキャップの著名ファンドに転職された方を複数いらっしゃいます。それらの方々は優秀であることは前提として、「ウェットな営業能力」「高いモデリングスキル」「著しい思考体力」など他の候補者が持っていないスキルを持っていることが特徴的でした。

また、著名ファンドへの転職に強い意欲がある場合は、PEファンドは全体的に経験者を優遇する傾向にあるので、ミドル~スモールキャップでPEファンドの勤務経験を積んだ後にラージキャップへの転職を行う選択肢が実現性の点においては高いです。

3. 事業会社(投資担当)

M&Aアドバイザーの職務経験を活かしつつライフワークバランスの改善を目指して、事業会社に転職する方は多いです。ただし、事業会社に転職したところ想定以上に「忙しい」もしくは「暇」で、入社前の想定とギャップがあり早期に退職する人も珍しくありません。

Big4 FASの部門別紹介 | 財務デューディリジェンス部門

財務デューデリジェンス部門は、主に財務デューデリジェンス業務やカーブアウト業務を担う部門です。

財務デューディリジェンス部門 | 部門の業務内容

財務デューデリジェンス部門は、その名の通り財務デューデリジェンスを担う部門です。財務デューデリジェンスは「買収監査」とも言い、企業買収に当たって対象企業の財務諸表を徹底的に分析し、隠れた負債やリスク要因を洗い出し、買収側に必要な情報を整理する業務です。

収益性の持続可能性、キャッシュフローの安定性、過大評価された資産、未認識の負債など財務の裏側には、表面の数字だけでは見えない真実が潜んでいることが少なくありません。財務デューデリジェンスは、その「見えない部分」を掘り下げ、取引の成功確率を高めるための重要な材料を揃える作業です。

財務デューディリジェンス部門 | 新卒配属率

財務デューデリジェンス部門は、FASの中でも新卒採用が最も少ない部門です。その理由は明確で、一定水準以上の会計知識や実務経験が求められるためです。

公認会計士(CPA)や米国公認会計士(USCPA)資格を学生時代に取得している人が、新卒としてこの部門に配属されることもありますが、その場合でも、基本的には中途入社組と比較しても先輩スタッフのサポートが業務の大半を占めます。

一方、中途採用は、財務デューデリジェンスの現場では、会計の知識はもちろん、監査や経理業務の経験がそのまま武器になります。特に監査法人や事業会社の財務経理部門で「数字と向き合った経験」がある人は、そのまま現場で力を発揮することが多いです。

財務デューディリジェンス部門 | 中途の出身業界

財務デューデリジェンス部門に集まる中途採用者は、特定の業界からの流入が顕著です。

1. 監査法人

財務デューデリジェンス部門で最も多い出身元は監査法人です。財務諸表の監査経験を持つ人材は、数字の異変やリスクを瞬時に見抜く力を備えています。これはデューデリジェンス業務において極めて重要なスキルです。

同グループの監査法人からFASの財務デューデリジェンス部門に転籍する人もいれば、別グループの監査法人から転職をしてくる人も多いです。この理由は、「①人脈を広げる目的で別グループに転職をしたかった」「②FASの年収が監査法人時代の年収に引きずられるため」「③監査法人のチームや上司の意向で転籍が難しかった」などがあげられます。

2.事業会社の財務経理部門

経理や財務管理の実務経験を持つ人材は、事業会社の現場目線での数字の整合性や業務フローの問題点を鋭く指摘することができます。このため、財務経理部門の経験を持つ人は採用候補となります。

一方で、財務経理経験だけでは確実な採用が見込めないため、意欲のある人は資格(簿記1級、USCPAなど)を取得して転職する人もいます。


財務デューディリジェンス部門 | 主な
キャリアパス

財務デューデリジェンス部門での経験は、その後のキャリアに大きな広がりをもたらします。

1. 投資銀行

財務デューデリジェンスや会計知識が評価されて投資銀行のM&Aアドバイザリー部門に転職をする人は多数いらっしゃいます。過去には外資系投資銀行に転職される方もおりましたが、現在は日系投資銀行に転職をされる人が圧倒的多数です。

2. 独立開業

近年では、監査法人と財務デューデリジェンスの経験を活かして、そのまま独立して開業する方も多いです。独立をされる方々は、監査バイトや税務業務を行いつつ、財務デューデリジェンスの受託業務を行い受注業務の枠を広げて活躍されていらっします。

3. FASのファイナンシャルアドバイザリー部門

独立開業後の受注業務の枠を広げるという意味でも、財務デューデリジェンスのみならず、M&Aアドバイザー業務の経験を積むことを目指す方も多いです。この場合、同じFASのファイナンシャルアドバイザリー部門に転籍をする方がいますが、それ以外に別のFASに転職をしてそこでファイナンシャルアドバイザリー業務経験を積む方も多いです。

Big4 FASの部門別紹介 | バリュエーション・モデリング部門

バリュエーション・モデリング部門は、主に企業価値評価や事業計画のモデル作成を担う部門です。

バリュエーション・モデリング部門 | 業務内容

バリュエーション・モデリング部門は、企業や事業の価値を算定し、数字として表現することが主な役割です。M&Aや企業再編、上場準備、事業承継といった重要な経営判断の局面で、対象企業の適正な価値を評価し、経営層や投資家にとって確かな意思決定の材料を提供します。

主だった評価手法として、DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)、類似企業比較法、市場取引事例法などがあり、これら複数のアプローチを組み合わせることで企業価値を算定します。特にDCF法は将来のキャッシュフローを予測し、それを現在価値に換算する方法ですが、前提条件や仮定一つで数値が大きく変動するため、精度が問われる難易度の高い作業です。

バリュエーション・モデリング部門 | 新卒配属率

バリュエーション・モデリング部門は、新卒採用が多い部門です。背景として、学生側と採用側それぞれのニーズがあります。

まず、学生の方からすると、企業価値評価やモデリングは業務として非常に分かりやすく、ドラマや映画の影響で当該業務にインテリジェンスを感じ憧れている傾向があります。また、数字を組み合わせて企業価値を算定するということ自体にも会計や金融を学生時代に勉強したことがあるがゆえに興味関心を持つ方が多いです。

加えて、採用する会社としても、新卒の方はデジタルリテラシーが高く知的体力も豊富なためバリュエーション・モデリング業務と相性が良く、配属先として優先して検討されます。

バリュエーション・モデリング部門 | 中途の出身業界

バリュエーション・モデリング部門は、特定の業界から中途採用をする傾向は比較的低く、一定のハードスキルや論理的思考能力を持つ限りにおいては、幅広い業界から人材を募る傾向にあります。そのため採用門戸も広く、管理者の知人では前職が公務員や鉄鋼系製造企業の方がバリュエーション部門へ転職した事例がございます。

まとめ

Big4 FASの各部門は、それぞれ異なる役割と専門性を持ちながらも、共通して「企業の未来を形作る」という使命を担っています。ストラテジーは成長戦略やビジネスの具体像を描き、ファイナンシャルアドバイザリーはM&Aの橋渡し役を果たし、財務デューデリジェンスはリスクを見極め、バリュエーション・モデリングは企業価値を可視化いたします。

それぞれの道には異なる景色が広がり、異なる挑戦が待っています。しかし共通するのは、どの部門も経営の核心に触れる仕事であるということです。自分はどの舞台で力を発揮するのか、その問いの答えを探しながら、次の一歩を踏み出してみてください。

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