思い出の天皇賞・秋

第138回天皇賞(秋)

2008年11月2日(日)
東京競馬場 芝2000m
1着賞金1億3200万円

晴 良

優勝馬:ウオッカ
優勝騎手:武豊(栗東)
優勝調教師:角居勝彦(栗東)
優勝馬主:谷水雄三
優勝生産者:カントリー牧場(北海道静内町)

天皇賞(秋)2008 前哨戦と有力馬

ウオッカ
1番人気
前年に東京優駿(日本ダービー)を牝馬として64年ぶりに制覇。この年も安田記念に優勝。

前哨戦の毎日王冠では新馬戦以来の逃げ戦法で2着。

騎乗する武豊は「今まで乗ってきた中で一番状態が良い」と評価。

東京コースでの成績: 5戦2勝、2着2回。唯一連対を外したのは前年秋のジャパンカップで4着(優勝馬から0.2秒差)。

ダイワスカーレット
2番人気

前年に牝馬限定のGI級競走で3勝。ウオッカとの対戦成績は3勝1敗。

前年末のグランプリ・有馬記念で2着。当年春の大阪杯で優勝。

天皇賞は大阪杯以来7ヶ月振りのレース。

主戦騎手の安藤勝己が急ピッチで調整を行い、競走当日は大阪杯と同じ体重498kgで出走。

ディープスカイ
3番人気

3歳馬で、NHKマイルカップと東京優駿の「変則二冠」を制覇。

前走の神戸新聞杯を制し、距離やコース適性を考慮して菊花賞を回避し天皇賞に出走。

当年のダービー馬が天皇賞に出走するのは71年ぶり。

その他の注目馬

重賞2連勝中のドリームジャーニーが14.6倍の4番人気。

最終登録時点ではメイショウサムソンも登録されていたが、調整不足で回避。

### 第138回天皇賞(秋)出走馬一覧

1枠
1番 アサクサキングス(牡4)
 騎手: 藤岡佑介

2枠
2番 ディープスカイ(牡3)
 騎手: 四位洋文

3番 エアシェイディ(牡7)
 騎手: 後藤浩輝

3枠
4番 アドマイヤモナーク(牡7)
 騎手: 岩田康誠

5番 サクラメガワンダー(牡5)
 騎手: 福永祐一

4枠
6番 エリモハリアー(騸8)
 騎手: 吉田豊

7番 ダイワスカーレット(牝4)
 騎手: 安藤勝己

5枠
8番 ポップロック(牡7)
 騎手: 内田博幸

9番 アドマイヤフジ(牡6)
 騎手: 川田将雅

6枠
10番 キングストレイル(牡6)
 騎手: 北村宏司

11番 ハイアーゲーム(牡7)
 騎手: 柴田善臣

7枠
12番 タスカータソルテ(牡4)
 騎手: C.ルメール

13番 オースミグラスワン(牡6)
 騎手: 蛯名正義

8枠
14番** ウオッカ(牝4)
 騎手: 武豊

15番 トーセンキャプテン(牡4)
 騎手: O.ペリエ

16番 カンパニー(牡7)
 騎手: 横山典弘

17番 ドリームジャーニー(牡4)
 騎手: 池添謙一

レース展開と結果

スタートすると、予想通りダイワスカーレットが先頭に立ち、他の馬を引き離していきました。

ディープスカイが6番手、1番人気のウオッカは7番手に位置取りました。

向正面ではトーセンキャプテンがダイワスカーレットに接近し、両馬が競り合う展開となり、前半の1000m通過タイムは58秒7と速いペースでした。

第3コーナーから第4コーナーにかけて、ウオッカが先行馬を捉え、ディープスカイも続きました。

ダイワスカーレットが先頭で最後の直線に入り、逃げ粘るダイワスカーレットを外側からディープスカイ、さらに大外からウオッカが追いかけました。

残り200m付近でウオッカとダイワスカーレットが並びましたが、ダイワスカーレットが再び伸びを見せ、ウオッカと並び掛けたままゴールに到達しました。

ディープスカイと後方から追い込んだカンパニーがほぼ同時に入線し、エアシェイディがわずかに遅れて入りました。1着と2着、および3着と4着が写真判定となりました。

1着馬のタイム1分57秒2は、1999年のスペシャルウィーク、2003年のシンボリクリスエスの記録を0.8秒更新する新記録となりました。

9着のキングストレイルまでが従来のレコードを更新し、10着、11着の馬も従来のレコードと同じタイムでの決着となりました。

レース後、ウオッカに騎乗した武豊騎手と、ダイワスカーレットに騎乗した安藤勝己騎手は、ウイニングランを行わず直ちに検量室前の着順指定エリアに戻りました。

着差は目測で判断できないほど僅差で、検量室内のホワイトボードには暫定的に7番、14番の順に書かれていました。

関係者はこれをダイワスカーレット優勢と受け取り、スカーレット関係者は安藤に1着の枠場に入るよう促しました。

安藤は「負けてないですか」と問いながら1着枠に入りました。続いて戻ってきたウオッカは2着馬の枠場に入り、武豊騎手は硬い表情で直ちに下馬し、鞍を外して検量室へ向かいました。

場内およびテレビ画面に映し出された入線時のスローリプレイでは、勝負はほとんど見当が付かず、写真判定の結果に委ねられました。

判定は長時間に及び、最終第12競走の発走時刻が繰り下げられました。

時間が経つにつれ、場内では「同着になるのでは」という声が上がり始め、競馬関係者からも「もう同着で良いのでは」という声が聞かれました。

判定を待つ間、馬装を解かれたウオッカとダイワスカーレットは着順指定エリア内でクールダウンを行っていました。

通常は写真判定には1枚の写真が使用されますが、今回は非常に僅差であったため、3枚のスリット写真が使用されました。

判定に時間が掛かったのは、第2、第3の写真の現像に時間が掛かったためでした。

レース終了から13分後の15時56分、着順掲示板に「14」、「7」の順に馬番が表示され、ウオッカが優勝、ダイワスカーレットがハナ差の2着で結果が確定しました。

牝馬による天皇賞1・2着は、1958年以来50年ぶりの出来事でした。着差は2cmで、GI競走史上2番目(当時)の僅差でした。

確定の瞬間、武豊騎手はガッツポーズを見せ、ウオッカ管理調教師の角居勝彦と握手しました。

一方、ダイワスカーレット陣営は呆然とし、「うそ、どうして」という声も上がりました。

表彰式では、ウオッカより先に武豊、角居調教師、馬主の谷水雄三が登場し、武豊がスタンドのファンと共に万歳三唱を行いました。

勝利騎手インタビューで、武豊は「ホワイトボードに劣勢の形で出ていたこともあり、生きた心地がしませんでした。ずっと祈っていました」と述べました。

天皇賞(秋)2008 騎手コメント

武豊騎手(ウオッカ、1着)
「今回のレースはシビれました。同着でもいいと思ったくらい。今年は大レースで結果が出ていなかったので、ほんとうに嬉しいです。」

安藤勝己騎手(ダイワスカーレット、2着)

「悔しいけど、負けているなと思ったから。こんなに長い写真判定になるとは思わなかった。一瞬、3着かなと思ったけど、追ってから伸びました。たいした馬です。」

四位洋文騎手(ディープスカイ、3着)
「ダービー馬として恥ずかしくない競馬ができました。いいレースだったと思います。あそこまで行ったら勝ちたかったです。」

横山典弘騎手(カンパニー、4着)

「直線はうまくさばけたし、よく伸びていました。もう少し踏み込めばよかったかな。」

後藤浩輝騎手(エアシェイディ、5着)

「今日は落ち着いていました。道中はスムーズで、直線でもうひと伸びしてくれました。以前はこのメンバーに入ると遠い存在でしたが、今日は近くに感じました。」

福永祐一騎手(サクラメガワンダー、6着)

「思ったより流れていました。それでも道中はスムーズでした。直線でいい脚を使いましたが、最後の最後に止まってしまいました。」

蛯名正義騎手(オースミグラスワン、7着)

「叩いて馬が良くなっていましたし、距離もこのくらいが良いです。坂を上がってからモタつきましたが、平坦ならもっと良い脚を使えます。」

藤岡佑介騎手(アサクサキングス、8着)

「ゲートで半馬身遅れましたが、二の脚が速く好位へ。道中は上手に折り合い、追ってからも伸びてくれましたが、上位勢がそれ以上に伸びています。これからが楽しみです。」

北村宏司騎手(キングストレイル、9着)

「ペースが速かったことで上手に折り合い、息を入れながら走れました。最後も脚がなくならないように、馬の後ろにつけて我慢しました。この馬の競馬はできたと思います。」

池添謙一騎手(ドリームジャーニー、10着)

「いつも通り後方からの競馬をしましたが、左回りだと内にモタれます。立て直しながらも脚を使いましたが…。」

川田将雅騎手(アドマイヤフジ、11着)

「道中は思い描いていた通りスムーズな競馬ができました。速いペースを追いかけた分、最後は苦しかったです。」

岩田康誠騎手(アドマイヤモナーク, 12着)

「時計が速すぎました。もう少し距離が長い方が良いです。」

吉田豊騎手(エリモハリアー, 13着)

「前走よりも道中の行きっぷりが良かったです。着順は別として、内容は悪くなかったです。」

内田博幸騎手(ポップロック, 14着)

「もう少し前に行きたかったけど、追走に苦労しました。この速い時計に対応できませんでした。」

柴田善臣騎手(ハイアーゲーム, 15着)

「今日もゲート内でモタれていましたが、道中はスムーズでした。坂下で脚が止まりました。」

ペリエ騎手 (トーセンキャプテン16着)

「反応が良かったので前方に位置取りしましたが、速いペースに付いていったため、最後は息切れしてしまいました。」

ルメール騎手 (タスカータソルテ17着)

「道中のポジションは良かったし、スピードも見せてくれました。ただ、追い出すと反応がなく、坂を上がるときには馬が疲れていました。」


ラップタイム
1000m通過タイム: 58.7秒(ダイワスカーレット)

上がり4ハロン: 46.9秒

上がり3ハロン: 35.2秒

最速上がり3ハロン: 33.5秒(カンパニー)

ラップタイム詳細

200m:12.6秒
400m:11.1秒(合計23.7秒)
600m:11.5秒(合計35.2秒)
800m:11.9秒(合計47.1秒)
1000m:11.6秒(合計58.7秒)
1200m:11.6秒(合計1:10.3)
1400m:11.7秒(合計1:22.0)
1600m:11.3秒(合計1:33.3)
1800m:11.3秒(合計1:44.6)
2000m:12.6秒(合計1:57.2)

払戻金
単勝: 14 - 270円(1番人気)

複勝

14 - 120円(1番人気)
 7 - 130円(2番人気)
 2 - 150円(3番人気)

枠連: 4 - 7 - 520円(1番人気)

馬連: 7 - 14 - 550円(1番人気)

馬単: 14 - 7 - 1,050円(1番人気)

3連複: 2 - 7 - 14 - 710円(1番人気)

3連単: 14 - 7 - 2 - 3,250円(1番人気)

ワイド

 7 - 14 - 220円(1番人気)
 2 - 14 - 280円(2番人気)
 2 - 7 - 360円(3番人気)

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