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監査の役割(内部統制について)その5(最終)

 (内部統制部門、監査部・考査部・内部統制室などはどう動けば良いのか)
 
 内部統制部門は、会社の中では監査部・考査部・内部統制室などという名称が多いだろう。
内部統制(監査)部門は社長直轄の独立した組織であるのが通例である。独立
的に動けないと調査がしづらいからである。
 社長直轄といっても社長が指揮するわけではない。業務として委嘱された
担当の役員がいて彼が指揮する。私にはこの役員の経験がある。

 内部統制部門にはどんな社員が配属されているのか。会社の人事方針によ
り差はあるだろうが、通常は各部門の実務に精通した課長経験者が多いと思
う。また失礼な言い方になるが、将来期待される各部門のエース級が集まっ
てくるわけではない。したがって、彼らの士気を高めることが大事である。
私は担当役員の時に、「皆さんの働きで会社や社員が守られることになる。
しっかりと調査してほしい。調査の過程でやりづらいことがあれば、私が
何とかするから遠慮なくいってほしい」とあらかじめ宣言した。また、調査
結果はしっかりとヒアリングし、四半期毎に忖度なくまとめて、社長も出席
する経営会議に報告した。このサイクルをしっかりと回して行けば、自分た
ちの調査が経営に生かされるということで、彼らの目つきが真剣になってく
る。調査を受ける各部門、子会社にも緊張感が走る。そうしないと監査が形
骸化してしまう。もちろん、経営会議の前には社長に事前説明しておいて、
経営会議では必ず一言発言してもらう。上場会社の社長ならこの根回しを受
けてくれるはずだ。
 不正経理は経理部門でも見つけられるが、子会社の不正経理などは内部統
制部門でないと調査しにくい。過去の指摘事項の蓄積があるので、調査のツボは判っていて、彼らは小さな不正までよく見つけてくれる。
 あるとき、かなり高齢の課長がイレギュラーな不正を見つけたと飛び込んできた。接待交際費と偽装して、実はキャバクラで遊んだ支出である。なぜ判ったのかと聞くと、請求書の会社名と住所でピンと感が働いて、追及した結果だと言う。〇〇興業という名前でよくわかったねえと言うと、まあプロですからこれくらいはと自慢げである。考査部長と二人で顔を見合わせたが、ごくろうさん、よくやったねと褒めておいた。こういう調査員がいると会社は締まると思う。

時には子会社の社長も巻き込んだ不正経理も起こる。こういう際には、調査員、考査部長が追及となると役不足である。担当役員の私自身が登板してヒアリングしたケースが数回ある。
ここで担当役員がなあなあで収めると、内部統制部門の士気は一気に下がる。彼らはトップがどう動くか注視している。

 内部統制のテキストは沢山あり、参考になる面も多いが、最後はやはり調査員の士気が大事なのだと思う。
 早めに、不正経理を摘発してくれると、社員も軽い処分で済んで救われる。
 会社において細かい不正は後を絶たない。繰り返しになり恐縮だが、頻繁に起こる小さな不正を見つけておけば、大きな不正は起こりにくいと思う。
内部統制部門の努力は報われているのである。
 
以上で『監査の役割(内部統制について)』は終了です。

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