ライドカメンズ第2部読了感想文「貴様は読者を信じすぎている」
ライドカメンズくん第2部読み終わりました!!!!面白かった!
ということで各話読むごとに書き留めていた新鮮な感想文+かなりボリューミーな追記を投下しました。
最後のほう、重めの怪奇告白文になっているので気をつけてね。
1話
選択によって結末変わるの?!え?!badエンドご用意されてるの?!待って、教えて、おとうさーーーーーーーん!!!!
ドキドキした。ないと思うけどバッドエンドあるかと思うと……見たすぎてボブゲユーザーの血が騒いでしまって………
2話
「大事な話し合いなので、証人になってもらいたい」という圧が強くて怖すぎて「お断りします」を選択してしまう弱いエージェントとは私です。
戴天と宗雲、毛利小五郎と妃英理みたいに思えてきた…別居してるけどうっかり復縁しそうな夫婦…(?) エージェント、子どもを巡って喧嘩する別居中の夫婦に対していいこと言ったな…。「おふたりとも、雨竜くんのことが大事なんですね」ってエージェントが言った瞬間、突然幸先が良くなってしまった。
エージェント、本当に私たちが思ってることを言ってくれてるし、選択肢も私たちの気持ちに寄り添ったものを用意してくれるのが巧みだな〜と思う。まぁ物語の進む方向と反対に行こうとしたら大抵目の前のライダーがレオンに無理やり方向を変えられるんですけど、、、証人をやってくれと言われて、やりたくない気持ちを尊重して選択肢くれるの笑ったけど、こういうところがこのゲームのエージェントとしてのめり込める理由の一つでもある。
3話
兄さんを傷つけたかもしれないと悩む雨竜くん…………いい子だね…………
「人として」を選択すると「ありがとうございます、気持ちが楽になりました」って言ってくれるけど、「雨竜くんらしい仮面ライダー」だと特にコメントはなく噛み締めている様子だけなんだよね。
ああ……好感度分岐してほしい………
個人的に、badエンドはhappy endのifとして描かれるからテンションが上がるって思っておりまして、ライドカメンズくんは時折badに行く可能性があることを匂わせてくるのがすごく好き。
4話
マッドガイはなんでフラリオのいるところを特定できたんですか?!第六感?!マッドガイだから?!6年も探してた駆が泣いちゃうよ…。
アンビスの怪人態、ステゴロ強そうすぎる。
6話、7話
クラスのあり方を悩んでる雨竜くんが、駆にクラスについて説明することで自分についてのそれを反芻する。繰り返し、何度でも…脚本が上手い…
孤独な戦士 ダブルミーニングしてくる〜〜わ〜〜いや、ここに出てくる仮面ライダー全員孤独を感じているわけ…カルテットミーニングだよ…
8話
第2部で何度も過去の叢雲が言っていた言葉を、今の宗雲がいう。あの時の明るい嬉しそうな叢雲と同じ声で、もっと覚悟の決まった声音で言われる「サイコロに運命を転がされると思い込むな」は、第2部で明かされただけの宗雲の過去を考えるとセリフの重みがカオスワールド。そして、まさに波乱の運命の入り口に立っていて、これから自分の過酷な運命と対峙することになるだろう弟を、守りたい気持ちはあっても、弟のことを信じて背中を押すようなことを言うの。
絆BGMでこのやりとりするの、鳥肌が立つほどかっこよい。
そして変身BGMはタワエンのノブリスオブリージュなんだよね〜〜!家としての高塔というよりも、兄弟として同じ屋根の下に住んでいた二人のホームグラウンド、を感じた。
話は脱線するけど、実家が複雑な友人と、どんなに生まれ育った家の環境が今の自分に受け入れ難いものであっても、やっぱりそこが故郷で自分のルーツだってのは、否定したくないし大切にしたいよね、っていう話をタイムリーにしていたので、高塔を捨てた宗雲が、それでも高塔の人間らしい気高さや、恵まれた生育環境からのノブリスオブリージュを発揮するのってかっこいいな〜と思うわけです。
白黒はっきりつけたほうが楽だろうに、そういう描き方をされるのはすごく希望があるなと思います。
こういう、明確な価値観を押し付けてしまいそうな時に、どんな選択をする人も後押しをするような表現をするのがライドカメンズのいいところ。説教くさくなく、それであって希望で、かっこよくて、そのバランスが絶妙だと思う。
ライドカメンズって、ジャスラをはじめとして、仮面ライダーたちの感情をものすごく大事に丁寧に描いているけど、同時にその感情に揺さぶられた時に毅然として立つ姿を見せてくれるのがグッとくるポイントなんだな〜と、絆BGMでの宗雲の語りを聞きながら思った。ここが好きすぎて録画して繰り返し聞いてしまう…。
宗雲は一期生で、仮面ライダーとしての経験も長く、なんならクラスを二つも渡り歩いているかなり強めの経歴の持ち主なわけですが、そんな彼も憔悴することもある。そう第2部の前半で描いた上で、対峙する戴天の弱点であり、きっと自分自身も心がかき乱される存在であろう大切な弟を前に、ただ毅然と、気高く、戦士としての姿を見せるの、カッコ良すぎませんか…。かっこいいね。
あと、バトルシーン、一切スキップせずに進めると、ちょうど曲がいい感じにハマるんだね、初めて知った。細かすぎる。好き。
9話
駆はずっと、フラリオの様子を見て、じっと見て、彼の返答を待ってる…優しい…優しいのさ…
久城駆の優しさと思いやりと、多分目の前にいるフラリオのことをじっと見て、様子を伺って、急かさず、期待するそぶりを見せず、ただ彼のあるがままの姿と言葉を待ってるのが、………愛………これを愛と呼ばずになんと呼ぶんですか………。
「6年待っていた」人間の、本当に、本来のフラリオを取り戻したいという気持ちと、それをどう行動に落とすのかの表現に鳥肌が立つ。
10話
フラリオ、自分がカオスワールドに放り込んだ和仁くんを気に求めずどっかに行ってしまうの、さすがに自由人すぎない?!?!笑った
11話以降
大団円が気持ち良すぎて一気に読んでしまった〜。
浄、4章の時の「弁明」は本物だったのか…?たかはしゆうやさんの描くウィズダムは徹底して「今」と「諜報機関としての使命」を眼差していて、多少互いに不義理なことをしても構わない、という身内の肉を断たせて、敵の骨を断つのも良しとしている、ものすごく危うい綱渡りをしているクラスなんだよね。こんなに互いのことをよく知らず・信用しきれないことを認めながら、同じクラスのメンバーとして信頼はしている、という描写が巧み。うまい。今まで見たことのないスリリングさがあってみてて楽しい。
省略した言葉での説明が難しいんだけど、情報ってナマモノだから、一つの情報が永遠に価値を持つかはわからなくて、だから浄のような普通だったら不義理に見える存在も、ナマモノのカードを切る者としてはかなり「有能」に思えてくる。他の3人はわかりやすく「自分の素性を偽り情報を集める」タイプの諜報をしているけど、浄は「情報を流して撹乱をしたり、逆に情報を得る」っていうもう一段階複雑な諜報戦に身を置いていたんだよね。思えば、トゥルーエンドのトルスとのやり取りの時からそうだった。
高塔がらみではそのステージからは脱落しちゃったのが勿体無いけど、またやってほしいなー。楽しすぎた。スパイ萌えが激しい。
宗雲と戴天、わざわざ「示談」で面と向かって特に何か話すわけでもなく酒も飲んでいるの、思ってたより根本的にお互いのこと好きですね…?同じクラスだった、ってのが明言されちゃったし。
裏切った負目、追放した負目がお互いにあり、腹の底が読めないもの同士かつ手強さも認めているから、相対する時に警戒心マックスになってしまったのかな。あと、戴天からしてみたら「宗雲は自分を置き去りにした」という気持ちもあるし、宗雲側からも、やむを得ないとはいえ「かつて自分が約束されていた地位、そして本来なら雨竜が継ぐべき権力の地位に座っている」っていうので、嫌な感情があっておかしくないよね。
でも、かつてクラスを組むまでした二人だから、エージェントに指摘されたように、互いがただ直向きに「雨竜」のことを考えての攻撃をしていたと気づけば、毒気が抜かれちゃうよね。
離れていたら何を考えているかわからないし、かつてよく知っていたからこそ、そこから立場や振る舞いが変わっていれば尚更疑いの目を向けてしまうし、嫌悪の感情も抱くかもしれない。でもそこで、腹の底にある望みを互いに見せ合う形になったことで、表面的なガワが変わっても、お互いの根っこの人間が優しいものと知り、そりゃ態度は柔らかくなる。
傲慢と善良の高塔兄たちでした。二人の間のわだかまりはだいぶ減った気がするけど、宗雲のタワエン脱退の理由は結局不明だからいつかやるのかな?やってほしい。
昔の男と、育ちのいい手段の選ばない泥仕事ができる男萌えのクリティカルヒットがそこにありました。
★第2部を読み終えて
お、面白かった〜〜〜!!!!
ライドカメンズ全般に言えることだけど、特にメインストーリーは、息つく間もなく、毎話クライマックスでエクストリーム、飽きることなく物語が展開して、一枚一枚ページを捲るのもドキドキするし息を呑む。
いろいろなソシャゲやノベルゲームをやってきましたしそれぞれ好きなところがあるけど、ライドカメンズ、「洗練されたシナリオ」という意味では群を抜いていると思う。
決して人物や設定、物語を簡略化してわかりやすいものにしているわけではない。むしろ複雑な仮面ライダー同士の入り組んだ人間関係や立場、外野からの思わぬ横槍や意図的・偶発的な出来事の、いろいろな要素が絡まったりぶつかったりして、大団円に向かって収束していくのがあまりにも鮮やかで気持ちいい。
ライドカメンズは純粋な物語の面白さを真っ向から追求しているかっこいいゲームです。そう、めちゃくちゃカッケーの。何回ぐらい校正したんですか…?と野暮なことを聞きたくなってしまう。
そして、18人(以上)のメインキャラが誰一人蔑ろにされたり損なわれたりすることなく、全員登場させてくれるのが嬉しい。
グッズの売り上げだったり中の人の贔屓だったりが当たり前に登場時間に反映されそうなものなのに、今回メインの4人以外もそれぞれ見せ場があるの、どんなキャラにもファンがいるってことを忘れてなくて、すごく見てくれている人のことを意識してくれてるなって。
「賽を振る時だ」「己の高みを目指して」って、だいぶカッコつけたセリフだと思うんですよね。そういうセリフを、ちゃんとカッコいい!と思わせる舞台を整えてくれるシナリオ。
あと、並んで返信するシーン・絆変身がちゃんと本編ストーリーの中で感動するシーンとし持っていくのもすごい。
大コンテンツ産業時代、セリフとポーズをキャッチーに広告的に一瞬だけのものとして消費することに私自身も慣れちゃっているけど、ライドカメンズくんはちゃんとその「カッコいい演出」をかっこいいものとして見せるための面倒な舞台設計まできちんとしてくれるから、掛け値なしに拍手を送りたくなる。
絆変身も、公式からお知らせがあった時はちょっと茶化してコイツとコイツが出たら面白そうだな〜とか思ってたけど、本当に小っ恥ずかしくなるような「兄弟の絆」の演出として感動できるようになるまで、物語を読む読者を信じてくれる。
そう、ライドカメンズくん、物語の力を信じているし、それを読む人たちのことも信じていて、それがすごい嬉しいんだよね。
どんなコンテンツやSNSでも、「これが好きならきっとこれも好きでしょう?」と3秒くらいで消費できるショート動画や広告や投稿を見せてくるの、確かにいっときの快楽は得られるけど、望まぬものを見せられた感はあるし、虚しい。もうちょっとスパンの長いコンテンツでも、人気のあるキャラはグッズや登場シーンでの露出が増えて、そうじゃないキャラは不遇な扱いをされる、常にアイドルの総選挙のような状態。でもそれが現代ネット社会では当たり前のことになってきている。
その中で、「とりあえず50話のストーリーを読んでください!そうしたら絶対この仮面ライダーのこと好きになるんで!」とお出ししてくれるの、あまりに読者のことを信じすぎている。でもちゃんと読んだら、確かに高塔一族も下町地区の二人も好きになってしまう。掻き回し役のスラデもよくわからんけど派手に暴れてくれるマドガも、ひたすらに「人助け」を邁進するジャスラも、さらに好きになっちゃう。
あと、本編ボイスについては、普段聞いてるゲームボイスよりもワントーン低めで「日常の音声」っぽいのいいんだよね。元からライドカメンズの演技はキャラ色よりも生身の人間っぽさがあっていいんだけど、本編ボイスはさらに文脈の上での声色ですごく感情を感じることができる。
もちろん、「キャラらしさ」より「生身感」を優先することで、誰だか分かりにくかったり、場面ごとで声色が変わるから「キャラ付け」としての声の力は弱まるんだけど、ボイスドラマとして楽しむ上ではただテキストを読まされる以上の、ボイスありきの感動が生まれる気がするの。その声に生きている人の人生が乗っている感じがある。物語の中で、今まさに揺れ動く魂の形を感じられる。
どのキャラもそうなので、おそらくディレクションしている人のこだわりなんだろうな。キャッチーなものが好まれる中で、じっくり物語を追って聞いた読者・視聴者が感じる味わいを大事にしてくれるライドカメンズのフルボイス、ほんとにありがとう〜!!!!ってなります。ありがとう…
第2部では特に、1章の久城駆のフラリオへの「触ってみろよ」が、もう、優しすぎて…ずっと探してた相手との6年ぶりの再会で気持ちが昂るだろうし、自分だって言いたいことたくさんあるだろうに、全部押し殺して、「今のフラリオは俺のことを知らない」ということをちゃんと踏まえて、優しい声で語りかけるの、もう…テキストだけでは味わえないドキドキでした。
ソシャゲっていう誰もが手を出せるからこそ、何気なく消費されてしまっても仕方ないコンテンツで、こんな真っ直ぐに物語や表現の力を訴えてくるの、すごいな〜と思う。本当に1億人にプレイして欲しいゲーム…ありがとう第2部。ありがとうライドカメンズ。だがしかし絶空貴様は許さん。いつか絶対成敗してやるからな!!!!!!!!
完