魔法の飴玉、雪降る窓辺
【あらすじ】
体の弱い母と元気でお転婆な息子と真面目な執事の3人のお話。
死ネタあり。
利用契約について https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df
人数変更不可。
【キャラ設定】
《テオ》♂
元気でお転婆な少年。
母親が大好き。
《エリス》♀
体が弱い母。
息子想いで優しい人。
《セバス》性別不問
真面目な執事。
エリスが幼い頃から執事をしている。
ーーーーー
【本編】
テオ:母上!
見てください、雪が降っていますよ!
エリス:ふふ、本当だわ。とても綺麗。
窓から覗く事しかできないのが、残念だわ。
セバス:ぼっちゃま。奥様は風邪を引いておられています、うつってしまっては大変ですので今は部屋に入ってはなりません。
テオ:別にいいじゃん!ね、母上!ぎゅー!
エリス:まぁ、可愛い私のテオ。
けれどね、セバスの言う通りよ。
テオ:えー。
エリス:風邪がうつってしまったら、母様とても悲しくなるわ。
テオ:やだやだ!僕は母上の側にいたいんだ!
エリス:テオ…。
セバス:そうだ、ぼっちゃま!
せっかくの雪景色、雪遊びなんて如何でしょうか?
エリス:まぁ、素敵なアイディアだわ!
このあたりで雪が積もるなんて珍しいことよ。
テオ:外ぉ?
…僕もう、雪ではしゃぐような年じゃないもん。母上といるもん!
セバス:先程、ご立派にはしゃいでおられていましたが…。
テオ:なんだよ、セバスのくせに生意気だぞ!
エリス:ふふふ。本当にあなた達、仲がいいっ…けほっ、けほけほっ。
テオ:母上っ!
セバス:今すぐお薬をお持ち致します!
エリス:大丈夫よっ、けほっけほっ。
少し、咽(むせ)てしまっただけよ…。
テオ:母上…本当に、大丈夫?
エリス:大丈夫、大丈夫よ。
テオ:ううっ。わかった…信じる。
エリス:ええ、ありがとう。
だからテオは、気にせずお外で遊んでいらっしゃい。
テオ:やだ!離れたくない!
エリス:テオ…。ねぇ、これ、何かわかる?
テオ:これ?…あめ、だま?
エリス:ええ。これをあげるわ。
テオ:むっ。
僕は飴玉一個でゆうこと聞くような子供じゃないぞ!
セバス:駄々をこねている時点で子供なんですけどね。
エリス:これはね、普通の飴玉じゃないのよ。
テオ:普通じゃないの?
エリス:ええ。
これは魔法の飴玉といってね、この飴玉を食べた人が見た景色が、まるで私も一緒に見ているようにしてくれる不思議な力があるの。
だからテオがこの飴玉を食べて外で遊んでくれたら、私もその美しい風景を感じることができるのよ。
テオ:母上…。
わかった、僕、これ食べて外で遊んでくるよ!
あむっ、んっ、この飴玉美味しい!
ひゃあ、ははうへ、いっへひはふ!
エリス:ふふ。いってらっしゃい。
セバス:お気をつけて。
(間)
セバス:やっと行きましたね。
エリス:ふふ、そうね。
セバス:さすがエリス様です。
…それにしても、魔法の飴玉を信じるなんて、なんだかんだまだまだ子供ですね。
エリス:あら、テオは魔法なんて信じていないわよ?
セバス:え?
エリス:あの子はとても賢く、優しい子なの。
私を元気づけるために騙されたふりをしているだけなのよ。
セバス:あの、ぼっちゃまが?
エリス:ええ。セバスにはまだ、あの子が子供に見えるのね。
セバス:それは、その、すみません。
エリス:ふふ、いいのよ。
幼い頃からあの子の側に一番いるのはあなたなんだもの。
身近な人こそ、些細な変化に気づかないものよ。
セバス:そう、ですか。
…エリス様とぼっちゃまは、とても似ていらっしゃいますね。
エリス:そうかしら。
セバス:ええ、とても。
エリス:…見て、窓の外。
テオがとても楽しそうにはしゃいでいるわ。
セバス:あれも演技でしょうか?
エリス:まさか。
少し大袈裟にはしゃいでいるかもしれないけど、きっと本心よ。
セバス:そうですか。
…もしかして、この部屋から見える位置を選んでいるのも、わざとでしょうか?
ぼっちゃまの姿がここからよく見えます。
エリス:ええ、おそらくそうでしょうね。
…ふふっ。本当に可愛らしい子だわ。
セバス:…ええ。私も、そう思います。
エリス:…ねぇ、セバス。
セバス:はい、なんでしょう。
エリス:テオのこと、よろしくね。
セバス:ええ。お屋敷に戻られたらすぐお風呂へご案内いたします。
エリス:そうじゃなくて、これからずっとよ。
セバス:ええ、もちろんです。
私は執事ですから。
エリス:ふふ。セバスは本当にお硬い人ね。
んっ、ごほっ、ごほっ。
セバス:エリス様!
エリス:大丈夫、大丈っ、ごほっ、ごほっ。
セバス:窓から入る風で体が冷えてしまっているようです。急いで窓を閉めて部屋を温めますね。
エリス:待って。
もう少し、もう少しでいいから、テオを見ていたいの。
セバス:ですが…。
エリス:お願い、セバス。
セバス:…いいえ、だめです。
エリス:あと、少しでいいの。
セバス:いくらエリス様のお願いであっても、こればかりは受け入れられません。
エリス:あと数十分、いいえ、数分でいいわ。
そしたら、素直にベッドに横になるから…。
セバス:…わかりました。
ほんの数分ですよ?約束ですからね。
エリス:ええ、ありがとう。
セバス:では、体が少しでも温まるよう、温かい紅茶を淹れてまいります。
エリス:ええ、ありがとう。お願いするわ。
セバス:くれぐれも、無理をなさらぬよう。
エリス:ええ、わかったわ。
(間)
テオ:ただいま母上!
雪遊びもそれなりに楽しかったよ!
…あれ?母上、寝てるの?
起こしちゃ悪いよね、またあとでくるね!
セバス:…てお、さま。
テオ:わぁ!びっくりしたぁ。セバスいたの。
なんでそんなとこでつったてるの?驚いちゃったじゃん。
セバス:くっ、うぅっ…。(泣いている)
テオ:セバス…?
なんで、泣いてるの?
悲しいことが、あったの…?
セバス:…はい。
とても、とても…悲しいこと、がっ、あり、ました…。(泣きながら)
テオ:な、に…?
セバス:エリス様が、亡くなられ、ました…。
テオ:…は?
なに…言ってる、の?
冗談にしては笑えないよ…?
セバス:いいえ。冗談ではありません…。
テオ:やだっ…嘘だよ。
そんなはずないじゃん。
セバス:お医者様に、診ていただいた結果です…。
テオ:そんなはず、ないよだって、さっきまで…。
セバス:…っ。
テオ:ほらっ、母上っ、起きて。
起きて、セバスを怒ってよ。
セバスが、僕に酷いこと言うんだ。
ねぇ、ははうっ…え。
…なに、これ、冷たい。
母上…冷たい…。
セバス:てお、さま…。
テオ:嘘だ…嘘だよ。
こんなのっ、悪い冗談に決まってる!
セバス:こんなこと、冗談で言いません!(できるだけ大きな声で)
テオ:…やっ…どならない、でよ。
セバス:あっ…。
テオ:みみ、いたい、よぉ…。
セバス:申し訳、ございません…。
テオ:…本当に、母上は、もう、動かないの?
セバス:…はい。
最後の最後まで、テオ様を想っておられました。
テオ:母、上っ…。
セバス:私は貴方の執事です。
エリス様の魂にかけて誓います。貴方を生涯お守りすると。
テオ:セバスっ…。
セバス:テオ様…。
テオ:せばっ、すっ。うっ、うぁっ…ぁぁ…。
セバス:て、お、さま…。
テオ:うわっ…ぁぁぁぁっ!
セバス:…っ。
テオ:ふぇえええええ!!
おかっ、おかぁさぁん!おかあああさああああん!(悲しみの泣き声)
セバス:てお、さまっ…。
(力強くテオ抱きしめるセバス。鳴き声は部屋に響き渡る)
(5年後)
セバス:テオ様、テオ様ぁ?
テオ:ここにいるよ!
ったく。セバスはもういい歳なんだからあんま大声出したら体に触るよ?
セバス:でしたら、叫ばせるようなことをしないでください。
テオ:へーい。
セバス:それよりテオ様、もうすぐヴァイオリンのお稽古の時間ですが…いったい、何をしていたんですか?
テオ:え?そりゃ、決まってるじゃん。
セバス:?
テオ:木登り!
セバス:…テオ様!
テオ:えっへへー!だって木の上って、すっごく見晴らしいいじゃん?絶好の飴エリアだよね!
今日は天気も良かったし、きっと、母上も喜んでるさ!
セバス:授業をサボるのはどうかと思いますけどね。
テオ:もー、セバスはお硬いなぁ。
セバス:…はい、私は、執事ですから。
テオ:なに、急にしんみりしてるの?
セバス:いいえ、なにも。
テオ:そ?変なセバス。まぁいいや。
セバス:そうですね。
…。
テオ様、そろそろ移動を、って、いない!
逃げ足だけは誰より早いんですから…。
全く、幼い頃から何も変わってないなぁ。
…。全く。手のかかるお人だ。
そういうところも、そっくりだな。
…よし!
テオ様、テオ様ぁー!どこですかー?!
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