ねこちゃんだから100万円の机で爪とぎしちゃったけどおこられなかったよ

「ねこちゃんだから100万円の机で爪とぎしちゃったけどおこられなかったよ」、これは実話なんです。

ここはだいすきな飼い主さまの、あったかくて幸せなお部屋! 嬉しくなった私は、はしゃいでくるくるまわって、それから素敵な家具たちをひとつひとつ観察してまわりました。絹のシーツ、ロイヤルブルーの枕カバー、遮光100%の真っ黒なカーテン、透明で真っ赤な林檎のオブジェに、壁にかかっているのはあの漫画家からのサイン!綺麗なものはたくさんあるけど、おうちってかんじはあんまりしません。飼い主さまはお料理をしないのでキッチンはがらんとしてるし、洗濯機もゴミ箱も必要ないのは、創作以外のおしごとを皆、外注して生活しているからなのです。

ホテルみたいに整ったお部屋のなかでいちばん素敵なのは、やっぱりこの大きな机!飼い主さまがイギリスから特別に取り寄せたお仕事用の机で、木彫りの装飾に黒と金色の配色がなんとも優美です。私はイギリスなんて行ったことないけれど、きっとこの机の上でわくわくするような商談が、あるいは紅茶や日記の豊かな時間が流れたに違いありません。

どうしても触れてみたくて、いつものお椅子にいる飼い主さまのだいすきなお膝によじのぼって、ああ届くか届かないか。先のことなんて考えずに夢中で手を伸ばして、そんなことするからバランスを崩しました。私の幼くて鋭いむきだしの爪が、音も立てずこの美しい机に痕を残します。飼い主さまの大切なものに傷をつけるあの感覚。恋したときみたいに残酷な心地。怯える私に「こんなところで爪とぎしてはいけないよ」と言うお声があまりに静かだったことをよく覚えています。それでも私は、いつかまたあなたの宝物に爪を立ててしまうかもしれません。仔猫の無邪気がいつまで赦されるのか、私はまだ知りません。

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