不安と欲と、幸運と。~エモーショナルストーリーズ2 な旅~
私は渋谷が怖かった
時は2023年、10月7日。
その日、私は東京へ向かう電車に乗っていた。
向かうは渋谷、麦わらストア。
「渋谷」
そこは私が約10年前、通学のため毎日経由していた駅であり、短大の2年間を費やしても、どうしても苦手を克服できなかった場所であった。
駅構内はなんとか、大丈夫。当時毎日歩いてたし。(もうすっかり当時とは変わっちゃって、迷うけど)
でも、どうしても、駅を一歩踏み出した先が怖い。
四方八方から押し寄せる人。なんかよく分からないけど至る所から溢れる音。ギラギラした雰囲気。
その〝異世界感〟はかっこいいと思うんだけど、実際に行くとなると勇気がいる。
新しい島に踏み入れたくないウソップの気持ちみたいだ。行っちゃえばなんとかなるんだけど、行くまでがドキドキして不安なやつ。
社会人になってからも東京へ行く機会は多いのに、池袋・新宿・渋谷にひとりで行くのが怖いんだよな。(めちゃくちゃ迷うし)
あぁ、麦わらストア。どうして君は池袋と渋谷なんだ・・・。
30代にもなって、なにそんなことで狼狽えてるんだって・・・!
自分でも思ったけど、苦手なものは苦手だし、怖いものは怖いんだ・・・!
そんなこんなで、勇気を出すため電車の中ではひたすらONE PIECE ワノ国編のオープニング『PAINT』を聴いていた。
渋谷のスクランブル交差点を渡って、すぐ近くのビルに入るだけ。ただそれだけなのに、ビビりまくる情けない自分。
こんな私をも見捨てず奮い立たせてくれる歌詞に、電車の中でちょっぴり泣いた。
辿り着けば、そこはパラダイス
約2時間半の乗車を終えて辿り着いた渋谷は、10年前に比べてめちゃくちゃ新しくなっていた。
短大を卒業してからも渋谷には行っていたけど、ホームもエスカレーターも改札も当時の記憶とは違っていて、勘で進もうとすると簡単に迷った。時の流れは速い。
通り道にあった渋谷スクランブルというビルでお手洗いを借りようと思ったら、これまた長蛇の列でびっくり。3連休の都会、人の多さを舐めちゃあいけない。
もちろん、渋谷スクランブルを出てからも迷った。
何を隠そう、私は梅田駅から徒歩7分のホテルへ行くのに、40分かかった女。
ゾロ並みの方向音痴を発揮し、ちょろっと渋谷駅を半周して、ようやく見慣れたスクランブル交差点まで辿り着いた。
交差点を渡ってしまえば、もう怖いものはない。
大勢の人も、なんだかよく分からない爆音も、麦わらストアへ向かうための盛り上げ材料と思うことにする。
ありったけの覇気をまとって信号を待ち、青に変わると早足でMAGNET By SHIBUYA109の6階・麦わらストアへと急いだ。
***
お店は想像以上の大混雑だった。
この日は3連休初日。一番くじの発売日でもあり、ウタちゃんのワンピカードも発売日だったらしい。そりゃあ混むよ、激混みよ。
私はめちゃくちゃ甘く見ていた。
店舗近くの階段に並び、約20分。
入店した麦わらストアは、やっぱりパラダイスだった!!
流れる音楽は全てONE PIECE!
どこもかしこもワンピースグッズ!
田舎の地元では売ってないものばっかり!
冷静な顔をしつつも、心の中はハイテンション。
1年前はほとんど並んでいなかったムギムギおてだまもたくさんあるし、SHINEしかなかった輩缶バッチも、いろんな種類が揃ってる!
わあ、あっちもいい! こっちもいい! と、ウキウキしてグッズを見て回っていると、いつの間にか長い時間が経過していた。
だからこの時、私は全然分かっていなかったのだ。
自分の時間管理がどれだけ愚かだったかを。
友を待たせるくらいなら
レジ列に並んで、30分。私はじっとり、冷や汗をかいていた。
やばい。思ったよりレジ列が進まない・・・。
そりゃそうだ!
3連休初日、一番くじの発売日でもあり、ウタちゃんのワンピカードも発売されたところなんだって!!!
そして何より、スタッフさんだってちゃんと「2時間近く待ちます」って丁寧にアナウンスしていたんだ!! それを私は、ちゃんと聞いていた! 理解していたんだ!!
それなのに、私は「いや、そこまで待たないでしょー」と甘く見ていた。浮かれて時計も見ていなかった! ばか!!!
私がなぜ焦っていたかと言うと。
この日、友人と横浜のホテルに泊まる予定で、夕方に新横浜で待ち合わせをしていたからだった。
渋谷から新横浜までは地下鉄で約30分。となると、ギリギリ? いや、少し遅れる??
先に新横浜で待ってるって連絡してたのに、これはやばい!!!
すぐさま友人に『到着が遅くなるかもしれない』と連絡すると、友は『全然問題ないから気をつけて来てね』と返事をくれた。ほんと、めちゃくちゃやさしい。
もっとグッズをパパっと決めて、早くレジ列に並べばよかった・・・と後悔しても時は戻らない。(私と同じタイミングで入店した人は、レジ列の遥か先に並んでいた)
もう! 後悔してもどうしようもない! レジが早く流れることをただ願おう!
***
気持ちを切り替えて約1時間。
友人との待ち合わせ時間を、私はレジ列で迎えていた・・・。
『自分が時間を見誤ったせいで・・・しかも自分のオタク活動で友人を待たせるなんて・・・なんてダメなやつ!!!』
自分の愚かさに、また泣きそうになった。友を待たせるくらいなら、グッズを買うのをやめて、今からでも新横浜へ向かうべきかと葛藤した。
自己嫌悪に陥りつつ『ほんとうにごめん。1時間くらい遅れそう』と友人に連絡。
怒られても仕方ない。覚悟を決めて待っていると、やってきた返事は少しも私を責めない、優しい言葉だった。
『大丈夫。休みながら待ってるよ』って。
ほんと、やさしかった。ほんっと、やさしかった。心に沁みた・・・。
そして、気づいた。
私はずっと「時間に遅れないこと」が重要だと思いすぎていたこと。
友人は「時間に遅れないこと」よりも「私の幸せ」を大事に思ってくれていた。
私がもし友人の立場だったら、それが出来ていただろうか。
「時間を守るのは常識」そんな固定概念で、「さすがに遅れ過ぎだよ~」って怒っていたかもしれないと思うと、ゾッとする。
自分が待たされることよりも、私の幸せを想って待っていてくれた友人に心から感謝した。
逆の立場になったとき、私も絶対にそうしよう。待っている間、自分も幸せに過ごせばいいんだから。
正しいことと、大切なことは、時に違うんだな。
もちろん今後も遅刻はなるべくしないように気をつけるけど、今回の遅刻はすごく大事なことを私に気づかせてくれた。
だからいま、愛する友人に改めて感謝!
心の底から、ほんとうにありがとう!
待ちわびた先で己のくじ運を信じる
友の優しい言葉で焦りが消え、悟りを開いたような、穏やかな気持ちで待っていると、とうとう自分のレジが回ってきた。
実は今回、購入するグッズはそんなに多くない。(めっちゃ時間かけて選んだのに)
理由は、翌日にコンサートを控えていたこと。(そっちでもグッズを買うから)
そして、1番くじワンピース エモーショナルストーリーズ2を引くためだった!!!
本当は、直前まで引くのはやめようかと思っていた。
ワンピースのほぼ日手帳を買ったばかりだったから。(約8000円だったので、他のグッズの出費は控えようと思った)
けれど、その日の夢にまでエモーショナルストーリーズ2が出てきたので、朝に「麦わらストアに残ってたらちょっとだけ引く」と決意したのだった。
待ち列に並びながら、目視で確認した。
A賞とラストワン賞のフィギュアが置いてあるから、まだ1番くじ残ってそう。
レジに着き「一番くじ引けますか?」と訊くと、「引けますが下位賞は人気のものがなくなり、残っているものから選ぶことになります」と教えてくれた。
欲しかったサンジとソラのクリアファイルはさすがにもうないかな・・・? と考えていると、サンジとソラのクリアファイル残ってたっ!!!!!!
え、むしろなんで残ってるの!! このかわいいサンジくん!!
即答で「問題ないです! 引きます!」と答え、回数は2回と伝えた。
よし、引くぞ! と心を整えていると、スタッフさんがもう一度確認してくれる。
「くじを引いた後、また追加で引くことはできませんが、2回でよろしいですか?」
「あ・・・じゃあ、3回で!」
勝手に口が動いていた。(背中を押してくれたみたいに感じた)
手を合わせ、神経を集中させてから、ボックスに手を入れる。そして3枚、心で念じながらくじを引く。
そして・・・おそるおそるくじを開いた。
E賞・メリー号のトートバック!!!
はじめE賞って下位賞だっけ? と混乱していたけれど、〝トートバック〟の文字を見て、「あー! あのメリー号のトートバック出たのかー!!」とじわじわ喜びがこみあがる。
やったあああああああああああ!
***
つづいて、2枚目も開く。
I賞・ラバースタンド!!!(イゾウ&菊之丞でした!!!)
おおおおお! 下位賞でるよね! そうだよね! と一旦心を落ち着ける。
ちなみにこのラバースタンド、前回のエモーショナルストーリーズの時にたくさん当たったんだけど、並べるとけっこうかわいいのだ。
このシリーズはかなりお気に入りなので、なかなか嬉しい!!!
***
そして、最後。3枚目。
怖いもので、急に欲が湧いてくる。
コンサート行くのに荷物が増えちゃうし、フィギュア当たらなくてもいいかって思ったけど、本当は欲しかった。ベルメールさん。
大好きなナミと、ノジコと、ベルメールさん。
やっぱり欲しい。
もう私は隠さない。私はA賞が欲しい!
念じた。心の中で。A賞、A賞、A賞・・・・・・
そして開いた3枚目。
A賞だったーーーーーっ!!!!!
信じられなくて、思考が停止。
そしてじわじわA賞を引いたと実感して、歓喜した。静かに。
(でもきっと喜びを頑張って抑えようとした、変なリアクションだったと思う)
口が勝手に「ありがとうございます」と言っていた。
誰に言ったのか。もうすべてに感謝したかった。
特に、念押ししてくれたスタッフさんと、待ち合わせに遅れるのを許してくれた友に。
喜びに打ち震える中、背後から声が聞こえた。
「ああ、このタイミングで・・・」
うわあ、同じくA賞が欲しかった同志がいたのか・・・。ごめん・・・。
でも、このナミとノジコとベルメールさんは誰より大切にする! 幸せにする! と、心に誓った。
***
結局、友人との待ち合わせ場所に着いたのは、予定より1時間後だった。
私を責めず怒らず、無事に会えたことを喜んでくれる友に、心から感謝を伝えた。
しかも私がA賞を引いたこと、とっても喜んでくれた。女神だ。
そして翌日のコンサート。
どんな座席かドキドキしていたけど、とてもいい席に巡り合えた。
今まではステージから遠い座席だったけど、はじめて目視でちゃんと表情が見られる距離だった。
友人の推しが何度も近くに来くれた。私の幸せを願ってくれた友がとっても喜んでいて、本当に幸せだった。
あまりの素晴らしさにふたりで目一杯笑って泣いて、本当に楽しい時間だった。
たった2日間の小旅行。
冒険にしちゃ、ずいぶん小さいけど。大切なことに気づけた、大いなる旅だった。
不安も葛藤も、いつか幸せを掴むためだと思って、これからもがんばろう。
最後にあらためて。
大好きな友達、ほんとうにありがとう!!!
あとがき
1番くじから、早一週間。
なんだかんだ書くのに時間がかかってしまい、やっと投稿できました。
私の臆病と葛藤と阿呆な話なので、登校するかどうか迷ったのですが。
自分の中でこれからも覚えておきたい出来事だったので、あげることにしました。お恥ずかしい。
31歳ですが、まだまだ日々勉強です。友達から、またいろんなことを学びました。
そして来月も、新宿をひとりでちょっと緊張する外出が控えています。迷いそうなので、早めに家を出よう。
こうやってひとつひとつ、コツコツとレベル上げをしていきます!
***
最近『個人的に好きなところ』を書けていなかったのですが、その間に9~11巻を読み返し、好きなところメモするところまで終わりました!
結構時間がかかってしまった!区切りがいいところまで一気に読んでメモできたので、また記事にまとめていきます!
もう好きなところが多すぎて、メモが膨大。(その割に「すき!」とか「かっこいい!」とか、テキトーすぎる・・・)
今後もマイペースに進めていきます!
それでは、また近いうちに。