苦手だったものの、はなし。
いろんなつながりからこの機会をえて、
昨日は篠山紀信さんの短編映像をみてきました。
自分の話が長ったらしくなるので最初にお知らせすると、吉祥寺のUPLINK で、一週間限定上映ですー!期間短い!ストーリーもセリフもない、スチールと映像と音楽のガチセッションを集中体感できる作品です。感想は最後にも書きますが、トークイベントで制作過程の話を聞けてよりおもしろかったなぁーー。
『イル・ノワール 黒い島』(2019年/日本/モノクロ/35分)
監督・撮影:篠山紀信
出演:Rina & Mari
音楽:平本正宏
構成・編集・アートディレクション:宮坂淳
製作:小学館
上映中~9月10日(木)
https://joji.uplink.co.jp/movie/2020/5511
■ちょこっと振り返る
ここから、わたしのおはなし。
篠山紀信さん = ヌードのイメージが強い。
正直ちょっと苦手で、避けてきたジャンルです。
なかなか言わないことだけど、わたしは昔、信頼できる一部を除いて大人の男性がとても苦手でした。それは、めちゃクソ迷惑な変質者やストーカーに幼少〜高校ぐらいまで鬼ターゲットにされていたから。家の中に知らん人が一緒にいるとかヤバイでしょ?エレベーターなんて最悪ですよ。遠い遠い昔ですが、そんなことがたっっくさんありました。
カラダは傷つけられることはなかったけど、ココロは大いに傷つけられて、小学生の頃は「自分の欲のためであれば人を傷つけてもいいと思ってる勝手な存在 = 大人の男性」とインプットされてしまった。そこから「性」に関することは避けるようになりました。そしてなかなかその思考はぬけないから、友だち同士のふざけた下ネタトークが始まるだけで、昔は怒りだしたりボロボロ泣きだしたりもしてました。
そりゃ周りも困る。
すまんっ。
様々な人と関わって考え方や視点も増え、精神も図太くなり、今ではガッツリと免疫できました。歳を取ったのもあるし、強くなると自然とそういう人もよってこなくなるんですねー。
人生何事もなく生きている人の方が少ないから、あえてこんな話をする必要はないといつも思ってるんだけど、あれ?またひとつおもしろいことになったな!と感じたので総まとめで書いてみまする。
■強くなったことによって、逆に気になる
わたしはよく、知らない人と話したり飲みます。
昔は内向的で話すのがとても苦手でしたが、高校から大学と周りの人に恵まれ自分をどんどん出せるようになり、男性という「枠」に区切らず、ひとりの「人格」として理解できるようになっていきました。
逆に、避けてきた人たちに興味がわいてきて、知らないおっちゃんと道端で話し込んだり、「ねえちゃん、酒でも飲み行くか?」と声をかけられれば「はい!行きますか!」とそのままお酒を飲みに行ったり。(もちろん少し会話して、変な人じゃないかチェックはします!)
最初は酒つぎ要員なんだけど、会話を始めてその人の趣味、哲学、嫌なこと、すきなこと、面倒くさいこと、こだわってること、仕事のことなどを聞いていくと、お互い話に夢中になってくる。そして、その人の人生がだんだんとみえてくる。
近所のおっちゃん。全く知らない人たちだったけど、ランニング中に話しかけられて飲んでから、この町内の祭事のお手伝いをしたり一緒にお酒を飲みに行くようになった、笑。
人にもよるけど、歳下の人と話す内容は下ネタがとっかかりやすいだけで、話を掘り下げたり問題提起をしてみたり、「ちゃんと話す」ということをすると実に夢中でたのしい時間になる。そしてやはり年の功もあり、わたしの知らないこと、昔の世界観、その土地の移り変わりなどをたくさん教えてくれる。
飲み屋のカウンターから始まり、4軒はしごした人もいました、笑。あと、わたしは昆虫が好きなのですが、たまたま話しかけられた方が研究者で 採取のお手伝い → 新発見&新種発見 → 論文に一緒に載せてもらうといった普段あまりないようなことも。なんだこれは!!
いやぁ、出会いってすごい。
人っておもしろい。
いちどぶっ壊れたものが、話して理解することによってゆっくりと修復して、今では性別問わず信用・信頼できる人がいるよろこびをひしひしと感じています。
■色眼鏡になってないか?
篠山紀信さんの勝手なイメージも、「あっち側の写真を撮る人」(すいません)と勝手に枠へ押し込んで、今までずーーーーーっとそれをアップデートすることがありませんでした。機会もなかった。
昨日は仕事の資料をたくさんつくろうとか来期の考えごともしたかったし、作品をみに行くか迷っていましたが、文喫(入場料のある本屋さん)に篠山紀信さんについての本が置いてあったので読んでみました。
勝手にわたしがイメージをつくっているだけで、実際はどんな人なんだろう…?
通常、アーティストといえば自分の個性を見出してそれを積み重ねながら独自性を深めていくイメージがあります。
しかし本を読んでいると、篠山さんは常に被写体最優先であり、過去の実績に囚われずやり方も型にはめず、いまやりたいことをその場その場でひたすらやっていく!という印象。なので作風が広範囲にわたり、色の違う様々な人物の過去が写真に切り取られている。
あれ?なんだかおもしろい…。
2012年に始まった「写真力」という展示は、もともと3会場の予定が7年のロングランで33会場100万人を動員したらしい。すごい…。
ジョンレノンとオノヨーコの2人がキスしているあの有名な写真、トラさん!って瞬発的にいっちゃう写真、目が釘付けになりそうな巨大な百恵ちゃん。歌舞伎役者の演じる写真がずらりと並ぶ作品もすごかった。鮮やか!華やか!!「舞台と役者」といったよく見る引きの構図ではなく、全員ドアップ。役名や性格をかたっぱしから聞いてみたくなるような、興味そそる写真と構成だったー。
ヌードや大物イメージが先行していたけど、それは表現しているもののひとつであって、常に実験・挑戦をする人。読めばよむほどこの展示に行って空間を体感してみたくなってた!!!本当に惜しいことをしたー。
本のおかげで増して興味が湧いてきて、映画チケット+トークイベントを予約したのでした。
そしていろいろ調べていたら、
80歳で初めてこだわった写真集と映像作品…
え?すごくない??もう80歳!!!
■制作の話がとてもおもしろかった
作品をみたときは同性なのでエロティックさを感じるというよりは、表情や骨格やフォルムに美しさを、映像と音楽の雰囲気に不思議な感覚を覚えていました。最初はいろいろ考えながら、後半はただ無意識に眺めていたい感じ。
そして以下のようなことを考えていました。
・説明はないにせよ、裏に込めたストーリーってなんだろう?
・葬式?結婚式?パーティ?コンセプトはハレ?いや違う。なんだろう?
・制作の役割分担ってどうなってるんだろう?
・どうやってここまでを詰めてきたんだろう?
・音楽と映像の結びつきが斬新で、この映像にドラムロールから入る発想って!制作の意図がまったく予測できない…!!
上映終了後に篠山さん、平本さん、宮坂さんのトークイベントがあり、制作面を中心に話しをしていたのですが、その中でもとても驚いたことが…
▼役割
・篠山さん:撮影
・宮坂さん:映像編集・アートディレクション
・平本さん:音楽制作
この役割分担だと、以下のようなフローがざっくり想像できます。
篠山さん
現したいものをイメージ&構想、撮影に行く、データを渡す。
↓
宮坂さん
映像のあたりをつくる。イメージを逸脱してないか篠山さんに確認しながら大枠を確定させていく。
↓
平本さん
その映像を元に、イメージできるものを思い浮かべながら曲にしてのせていく。
でも実際聞いたフローは…
_人人人人人人人人人人人_
> みんな勝手にやる! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
えええええええ!!!!?笑
驚き。とっっっても驚き。
通常でいう制作フローがない!すごい領域だ…!!
篠山さんは、ロケハンをせずどんなものをとるかはその場で決めるらしい。宮坂さんもデータはもらうけど自由で!って特に構成要望をもらわないのでそのまま作り始めるらしい。平本さんに至っては、写真を4〜5枚だけもらって映像も待たずに作曲を始めるらしい。
ええええええええ!!!!
でもそれがなんだか音楽でいうフリーセッションみたいでいいなぁと思っていたら「セッションなんですよ。ジャズです!」と篠山さんも仰ってて、すごく納得。一斉にドン!って出し合ったものが「お、いいねぇ〜」とかみ合う。わー、実に気持ちよさそう。素敵な世界だ。
関わっている人たちの様々な要素が掛け算によっていかされていき、それがひとつの大きな映像としてカタチとなる。想像しただけでなんておもしろそうな世界なんだ!!とニヤニヤしてしまいました。トーク聞いてよかったーーーー。
今回、とある縁でこの映画とトークイベントのことを知りました。
普段は避けがちなジャンル?なんだけど、自分の経験だけで環境を塞ぎ込むのはやっぱりおもしろくない。この機会がなかったら、こんなおもしろいことしてる人たちをよく知らないまま一生過ごしているかもしれないと感じたので、機会あってよかった!本を読んで、興味を持ってよかった!
自分の周りを信じて場当たり的な制作にチャレンジというのも、とても斬新で刺激的でした!セッションできるひとたちってジャンル問わず、とてもカッコイイなぁ。
なんだか制作のやる気が増してきた!!