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【連載小説】アヘアヘキングダム 3rd Season Story 34

<Dialog Neesou and Misaki at Misaki Clinic   ネーソーとミサキ先生の会話 ミサキクリニックにて>
美:ハルトくんが、ずっと右肘を気にするそぶりをしてたのね。聞いてみたら、しばらく前から痛くて、ちゃんと曲がらないって。多分ダンスで痛めたって言ってて。病院には行ってないって言ってたから、良かったらウチで診ましょうかって流れになって。
ネ:ほう・・・
美:その日はレントゲンだけ撮影して、後日改めて来てもらってね。診断結果を伝えた後、コユキちゃんの話になって。


~~~ Dialog Dr.Misaki and Haruto  ミサキ先生とハルトの会話 ミサキクリニックにて ~~~
美:これ、ハルトくんの右肘のレントゲン写真。
ハ:はい。

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美:ここ。関節の隙間が狭くなってるでしょ。骨棘(こつきょく)が形成されているし、橈骨頭(とうこつとう)も肥大化してしまってる。軟骨下骨の硬化も認められるわ。
ハ:・・・・・・
美:病名は、変形性肘関節症よ。それも重度の。
ハ:変形性関節症・・・
美:私はダンス詳しくないんだけど、ハルトくんは長年肘関節を酷使してきたんじゃない?
ハ:はい。そうだと思います。肘を使った動きは多いんで。
美:それは動きだけじゃなくて、肘で体重を支えたりすることもある?
ハ:あります。
美:右腕、ちょっとまくってくれる?
ハ:はい。
美:内側に曲げてみて。
ハ:はい。
美:・・・・・・
ハ:・・・・・・
美:もうこれ以上は曲がらない?
ハ:曲がりません・・・
美:曲がらないのには、ちゃんと理由がある。
ハ:はい。
美:ちょっとこのままで我慢してね。ハルトくんからは直接見えないから、鏡の方を見て。ここ。骨が関節面に出ちゃってるのわかる?
ハ:分かります。
美:これは、関節の軟骨が摩耗してしまった結果なの。あと、肘の内側もね。こことここが出っ張っているでしょ?過剰に骨が突起してしまっている。肘の動きが制限されてしまうのはそのせいよ。
ハ:なるほど。
美:これがさらに進行すると、骨が折れてかけらになって、関節内で遊離体になって引っかかるようになる。そうすると、ますます曲がらなくなってくる。
ハ:もし今の状態でダンスを続けたら、どうなりますか?
美:そんなこと言ってる場合じゃない。治療しないまま放置しておけば、ちょっと動かすだけで激痛が走るようになったり、口や肩に手が届かなくなったりする。ダンスどころか、日常生活に支障をきたすレベルになる。
ハ:そこまでですか。
美:今の時点で、上半身の着替えに時間が掛かってるんじゃない?シャツを脱いだり着たりとか。
ハ:はい。かかってます。
美:食事はどう?お箸やスプーンで、口に食べ物を持っていくのがキツくなってない?
ハ:なってます。
美:それがますますひどくなるとどうなる?
ハ:1人では、まともに着替えや食事すら出来なくなるってことですね。
美:うん。日常生活に支障をきたすレベルっていうのはそういうこと。腕に角度を付ける動きが、全て制限されてしまうからね。
ハ:・・・なるほど。理解出来ました。
美:これがさらに進行すると、肘の内側を走る尺骨神経が圧迫されて麻痺してしまう。その結果、指の感覚が鈍くなって、手指もまともに動かなくなる可能性もある。
ハ:指も・・・
美:ハルトくん、私が病名につけた「重度の」って意味を、しっかり受け止めて欲しい。文字通り、重症ってことよ。
ハ:・・・分かりました。
美:厳しいことばかり言っちゃってごめんね。
ハ:いえ、はっきり言ってくださいとお願いしたのは僕なので。ありがとうございます。
美:ハルトくんにとって、ダンスがどれほど大切なものなのか、私には及びもつかないけど、私は医者だから、医者の立場として、ハルトくんに伝えておきたい。自分の身体の悲鳴を、ちゃんと聞いてあげて。ハルトくんの肘は「もう限界だよ」って、ハッキリ言ってる。
ハ:はい。
美:あとは、ハルトくんの人生だし、ハルトくん自身が決断してください。
ハ:分かりました。もうダンスは引退します。
美:今この場で決めなくてもいいんだけどね(苦笑)
ハ:もう自分でも、半分覚悟はしてたんで。これ以上は無理かなと。
美:そっか・・・
ハ:はい。
美:うん。賢明な判断だと思う。
ハ:・・・・・・
美:・・・・・・
ハ:・・・これで僕は、全部失いました。
美:・・・・・・
ハ:リセットして、0から生きていきます。
美:うん。コユキちゃんと一緒にね。
ハ:・・・・・・
美:・・・・・・
ハ:先生、この前は言わなかったんですけど、実は僕、もうコユキとは一緒に暮らしてないんです。
美:え?
ハ:・・・・・・
美:どうして・・・
ハ:・・・・・・
美:ごめん・・・深く立ち入るつもりはないんだけど・・・
ハ:僕が、全部壊してしまいました。
美:・・・・・・
ハ:アメリカに行く前から、自分の肘が限界なのは気づいてました。その時に、オーディションの話、断っていれば良かったんです。でも、諦めきれなかった。
美:・・・・・・
ハ:コユキはきっと、本心では行ってほしくなかったんだと思います。でも、自分の気持ちを殺して、背中を押してくれました。あの時、自分の身体の悲鳴に耳を傾けていれば、コユキの気持ちに寄り添っていれば・・・
美:ハルトくんに分かってほしいのは、コユキちゃんは、ミライくんのために本当に頑張ってた。ハルトくんを騙そうなんて気持ちは
ハ:分かってます。
美:・・・・・・
ハ:今なら分かります。僕が、コユキをそこまで追い込んでしまった。
美:・・・・・・
ハ:アメリカにいた頃、コユキとはほぼ毎日電話してました。コユキが僕にミライの病気のことを言おうとしたタイミングは、多分何度かありました。でも、あの時の僕は、ただただ、自分の充実ぶりを伝えたかっただけで、コユキの話を聞こうとしていませんでした。
美:・・・・・・

~~Dialog Haruto and Koyuki on the phone ハルトとコユキの会話~~
ハ:先生がとてもいい人でね。英語も段々聞き取れるようになってきたよ!
コ:うんうん。そっかそっか。
ハ:あとね、日本人でイラストレータ―やってる人に声かけてもらってさ。意気投合して友だちになったんだけど、すっごい面白い人なんだよw
コ:へぇ。そうなんだ。
ハ:レッスンでも自分が成長してるのが分かるし、周りも良い人ばかりだし、今めちゃくちゃ楽しい!
コ:うん。良かったね。
ハ:ホント来てよかった。コユキ、背中押してくれてありがとね!
コ:うん・・・
ハ:いやーホントアメリカ最高だよ!これでオーディション合格出来たら言うことないんだけどw
コ:あのねハルト・・・ミライのことなんだけど・・・
ハ:ミライ!会いたいなー!パパも寂しいよw
コ:・・・・・・
ハ:でも、ここで夢叶えるまでは我慢するしかないよね。ミライのことよろしく頼むね、コユキ。
コ:・・・うん。わかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ハ:コユキは僕の話を一生懸命聞いてくれて、励ましてくれました。1人で全部抱えて、苦しい思いをしていたのに、僕は全く気付いてやれなかった。気付こうとも、してませんでした。頭の中が、自分のことばかりで。
美:・・・・・・
ハ:そんなコユキに、僕は最後にひどい言葉を浴びせてしまいました。「どうして騙したんだ」って。
美:コユキちゃんは、何て?
ハ:何も言いませんでした。
美:・・・・・・
ハ:僕は、目の前のことが現実だと思いたくなかったんです。これは夢か何かだと。受け入れられなかった。目を背けてしまいました。最低なヤツです。ミライを失った悲しみは、コユキも同じなのに・・・
美:・・・本当に同じなのかな。
ハ:・・・・・・
美:コユキちゃんはお腹を痛めてミライくんを産んで、ハルトくんがアメリカに行っている間も、ミライくんを1人で育てて、ずっと一緒にいて、最後まで賢明に尽くしてたよ。
ハ:・・・・・・
美:気分悪くさせちゃったらごめん。どっちの思いが強いとか深いとか、言いたいわけじゃないの。でも、コユキちゃんとハルトくんの悲しみが、全く同じものだとは、私には思えなくて。
ハ:・・・・・・
美:ハルトくんには、自分の家族がいて、ダンスがあって、コユキちゃんとミライくんがいた。でも、コユキちゃんには、ハルトくんとミライくんしかなかったんじゃないかな。心の支えになるものが。
ハ:・・・・・・
美:さっきハルトくんは0からって言ったけど、コユキちゃんは、とっくに0になってる。心の支えになるものが、何もないんだから。
ハ:・・・・・・
美:コユキちゃんのところに行ってあげて。
ハ:・・・・・・
美:・・・・・・
ハ:今さら僕が・・・
美:ここでただ後悔してて何になるの!自分の過ちに気付いたって言うなら、今からでも遅くない。コユキちゃんの支えになってあげて。
ハ:・・・・・・


<Dialog Neesou and Misaki at Misaki Clinic   ネーソーとミサキ先生の会話 ミサキクリニックにて>
ネ:・・・・・・
美:自責の念に駆られてたのは、コユキちゃんだけじゃなかったの。
ネ:そうだったんすね。
美:でも、ハルトくんは最後まで返事をしてくれなかった。帰り際、ウチには理学療法士もいるから、是非肘の治療をしに来てねって、伝えたんだけど、ハルトくんとはそれっきりで。
ネ:・・・・・・
美:私の言い方が、あの時のハルトくんにとっては、キツかったのかも知れない。もっとハルトくんの気持ちに、寄り添うべきだった。
ネ:・・・・・・
美:で、私はコユキちゃんのことが心配になって、何度か電話したんだけど、出てくれなくてね・・・SMSでメッセージも入れたんだけど、返事も折り返しも来なくて。
ネ:そうだったんすね。
美:うん。コユキちゃんの住んでるアパートに直接行こうかなとも考えたんだけど、これ以上立ち入るのはどうなのかなって。結果的に、私たちはミライくんを救えなかったし。コユキちゃんは私の連絡なんか待ってないんじゃないかって、余計なことを考えてしまって・・・
ネ:いや、先生は悪くないっすよ・・・
美:でもやっぱり心配で、先月末に思い立って、久しぶりに電話してみたの。そしたら、「お客様のご都合により、通話できません」ってアナウンスが流れて・・・最悪の事態がよぎって、私はコユキちゃんのアパートに行ってみたの。
ネ:・・・・・・
美:もうどう思われてもいい、コユキちゃんが生きてさえいてくれたら、それで良いって思って。でも、もうそこは空室になってた。大家さんに聞いたら、1週間前に引っ越ししましたって。
ネ:ああ・・・コユキが追い出された直後だったんすね。
美:うん。さっきのネーソーくんの話をきいて、全部つながった。
ネ:・・・・・・
美:だからね、ネーソーくんとコユキちゃんと偶然出会えた時、心からホッとしたの。コユキちゃんが生きてた、良かった・・・って。ネーソーくんと一緒にいるなら、きっと大丈夫だと思って。勘違いしちゃったけど・・・
ネ:いや、もうそれはダイジョブっすw

<Dialog Koyuki and Fake Yuimi at Neesou's house コユキと偽ユィミの会話 ネーソー宅にて>

※(´ゆωゆ`)=毬固です。偽物です。最後まで貫き通すみたいです。いや、後で絶対バレるだろ毬固。それでいいのか。

偽:・・・で、まりこちゃんは今も現役の歌手やってて、私は引退して主婦になったの(´ゆωゆ`)ウム
コ:そうだったんですね・・・(´雪ω雪`)スゴイハナシダ
偽:(よかった・・・ちゃんとはなせた!!!!!まりこできるこ!!!!!)
コ:すみません、私音楽とか疎くて、ユィミさんは歌手だったってことくらいしか知らなくて・・・
偽:ううん!そんなの気にしないでw 普通に接してもらえた方が嬉しいし(´ゆωゆ`)ダイジョブヨ
コ:毬固さんのことは、少し知ってたんですけど・・・(´雪ω雪ヾ

なぬ!!!!!!うれしいけど・・・私のしょうたいばれてる!!!???

偽:あ、そうなんだ・・・
コ:あ、知ってるとは言っても、毬固さんで好きな曲があるってだけで、詳しいことは知らなくて・・・(´雪ω雪ヾ
偽:なるほど(´ゆωゆ`)ホッ 毬固ちゃんの好きな曲があるんだね。
コ:はい!!私の好きなアニメの主題歌を、毬固さんが歌ってるんです!!私その曲が大好きで!!( ✧∀✧)
偽:(おお!!!!それはたんじゅんにうれしい!!!!あにそんは何曲かうたってるけど、どの曲なのかきになる!!!!) ちなみに、何て曲?(´ゆωゆ`)
コ:「みらくるあいどる★すーぱーはいぱーさばいばー!!!!!」です!!( ✧∀✧)
偽:(´ゆДゆ`)エエエエエエエエエエエエエエエ 

(ええええええええええええええええええええ!!!!!!!まさかのアイドルソルジャーOP曲!!!!!!!)

コ:もう大好きなんです!!( ✧∀✧)

(わたしのしんぐるでいちばん売れなかったやつだ・・・こゆきちゃん、まさかのちょいす・・・)

偽:そ、そうなんだ・・・
コ:ユィミさんは、アイドルソルジャーって分かりますか?(´雪ω雪`)ワクワク
偽:(わかるもなにも・・・) んー、名前だけ聞いたことあるかな・・・何か、育成ゲームかなんかじゃなかったっけ??(´ゆωゆ`)
コ:そうなんです!!あ!!ユィミさんのお友だちのおぬこさんも、声優やってますよ!!(´雪∀雪`)ハァハァ・・・
偽:へぇ・・・ニャムサンが・・・そうなんだ・・・(´ゆωゆ`)
コ:で、アニメ版の第2期のOPが毬固さんの「みらくるあいどる★すーぱーはいぱーさばいばー!!!!!」で。もう毎日歌ってました!!振りも完璧に覚えました!!(´雪∀雪`)ハァハァ・・・

(そうか・・・あのOPはあにめきゃらがおどってて、わたしはでてないから、こゆきちゃん、わたしのかお知らないんだ・・・そうかそうか)

偽:そんなに好きなんだねw
コ:はい!!当時はアニメもあんまり人気が出なくて、毬固さんの曲もあまり売れなかったらしいんですけど・・・(´・ω・`)
偽:(そうなんです・・・でも、いい曲なんだよあれ!!!!)
コ:でもでも!!ホンッッッッッッットに良い曲なんです!!!!私の中では神曲です!!!!!(´雪ω雪`)マチガイナイ

ありがとー!!!!!!!!!!!!!こゆきちゃん、だいすき!!!!!!!!!!!!


コ:(  ゜ω゜  ) ! ?
毬:(  ゜ω゜  ) ! ?
コ:え・・・?
偽:あ・・・・・・いや・・・・・・えーと・・・んーと・・・

<Dialog Neesou and Misaki at Misaki Clinic   ネーソーとミサキ先生の会話 ミサキクリニックにて>
美:で、これからネーソーくんはどうしたいの?
ネ:コユキとハルトくん、2人を会わせたいです。
美:さっきコユキちゃんが心配だって言ってたけど、そこは大丈夫?
ネ:・・・・・・
美:・・・・・・
ネ:リスクはあると思います。でも、お互いが相手の気持ちを確認できないで、傷を抱えたまま生きていくのは、ツラすぎます。
美:・・・・・・
ネ:何かあったら、俺っちが全力でコユキを守ります。
美:・・・・・・
ネ:あと、ミサキ先生も風よけになってくれるってことなんで。
美:・・・うん。わかった。


<Story 35  Preview   次回予告>
熱唱コユキ / おとな組同窓会
カン田テン子からのお誘い / あってはなしがしたい
Coming Soon・・・m9(´めωめ`)
※モデルこそいますが、あくまでもフィクションです。
※ミサキパートが相変わらずヤバいっす。もひげ間違ってたら教えてw
※次回更新は08/25(水)の17:00です。



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