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沼田くんをアサインします。これはフィックスです。

「えー本日のアジェンダですが、まず4QのKPIについてコンセンサスを・・・」

先週の会議の席で、進行役の沼田君(仮)がこう切り出した瞬間、オイラはテーブルの下で思わず握り拳を作った。なんだその取ってつけたような横文字は。お前の職場でのあだ名、ルー大紫オオムラサキにしてやろうか。


子供のころから英語が好きで、仕事でもずっと英語に携わってきたオイラでも、何でも横文字にしたれ的文化は感心しない。周囲の人間に、不要な負担を強いるからである。出席者の多くは内心ドキッとしつつ「あーはいはい、コンセンサスね」みたいなすまし顔をしなければならない。その後、議事をタイピングしている風を装い、こそっとかつ必死にgoogle先生に教えを請わないとならない。そしてコンセンサスが「合意」だと分かると「いや日本語で言えよ・・・」と嘆息をつかねばならない。

赤~コ~ナ~ 320パウ~ンッ

沼田君が作った会議用のPowerPointの資料の表紙には「ファシリテーター沼田」と書いてある。プロレスラーかよ。

🎤(´めДめ`)<赤~コ~ナ~ 320パウ~ンッ ファシリテ~タ~~~~ぬま~~~~た~~~~~~~!!

ただの進行役じゃねーか何カッコつけてんだこのベンキマン(ノシ*`ω´*)ノシ オイラは沼田君に鋭い視線を投げかけるが、彼は怯まない。それどころか、横文字を使って会議を進行する自分に酔っちゃってる感すらある。いやマズい。マズいですよこの展開は。

用語はご立派、中身はティッシュみたいな会議が、今日も日本の至るところで繰り広げられている。これが中学校の歴史の授業であれば、教科書内の足利義満をリーゼントにしたり、ペリーをアフロヘアにしながら時が過ぎるのを待てばいいが(罰当たるぞ)、残念ながらオイラはいい歳した社会人である。大人の会議は逃げ場がない。真剣な面持ちでちり紙会議に臨んでいるように見せるのも、給与の一部に含まれているのである。

人生に無駄な時間なんてないなんて、二度と言うなよ


そして、PowerPointのさして意味のないアニメーション機能をやたら使いたがるのも、ファシリテーター沼田の特徴である。吹き出し部分を強調したいのは分かるよ。分かるけども。


_人人人人人人人人人_
>         <
 ̄Y^Y^Y^Y^YY^Y^Y ̄

↓    ↓    ↓


_人人人人人人人人人_
> 前年比           <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

↓    ↓    ↓

_人人人人人人人人人_
> 前年比 120%     <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


「いやいやいや・・・」という空気をものともせず、沼田君は自身が細かく設定したPowerPointのアニメーションを進めていく。パンパンパンパン。エンターキーを連打する音だけが会議室に響く。気絶しそうになりながら、我々は彼が作成したアニメーションが1つずつ進むのを見届ける。いいかキミたち。「人生に無駄な時間なんてない」なんて、二度と言うなよ。


食らえ!!デファクトスタンダードオオオオ!!

あたまに「夜の」をつければ何でもエロくなるぜ。沼田君が、「夜のファシリテーター」とか「夜のコンセンサス」とか、中二の放課後的思考で横文字を使ってくれたら、オイラは「やかましいわwwww」と心の中でツッコみつつ、彼に好感を抱いただろう。まあ、この会社では二度と進行役は出来なくなるだろうが。

もちろんそのようなことは起こるはずもなく、沼田君はひたすらマジトーンのキントーンである。その後も「コアコンピタンス」とか「デファクトスタンダード」とか、ポケモンの必殺技の名前を連呼している。ここに来て、みんな感じ始めている。コイツ、多分言いたいだけで言ってるぞ。マジで沼。


会社の受難はだいたい部長のせい

弟ならボコボコにしているところだが、沼田君はかわいい後輩なのでそうもいかない。いや、沼田君を責めるのは良くないな。彼は悪くない。彼を今回のファシリテーターにアサインすることをフィックスしたブッチョーが悪い。

部長が事前に「無理して横文字使わなくていいからね」とか、「内々の会議だし、パワポのアニメーション機能とかつけなくていいからね」と沼田君に伝えていれば、こんなことにはならなかったんだ。任命責任&管理責任の合わせ技一本。会社の受難はだいたい部長のせいである。ガッデム部長。ブルシット部長。

沼田君は初の進行役で、準備段階から張り切っていた。憧れのヤナオカちゃん(職場のアイドル。以前のエッセイ参照)に良いところを見せたかったのもあるだろう。彼は一生懸命に取り組んだ。ただ頑張り方が、明明後日しあさっての方向に向かってしまっただけなんだ。


今はただ、やりきった彼を称えよう

一昔前のニコニコ動画でよく見かけた「努力の方向音痴」というタグを、沼田君のおでこにビターンと貼り付けてやりたい。ハウエバーしかしながら、晩秋の会議室で、ひとり真夏のような汗をかき、一生懸命に会議を進行する沼田君は眩しかった。ブラインドから差し込んでくる西日のせいだったかも知れないが。


「めろさん、大丈夫でしたかね・・・」 会議が終わり、各自が散り散りに自席に戻る中、帰りの動線で沼田君が心配そうに声を掛けてきた。大丈夫か大丈夫じゃないかの二択で問われれば、大丈夫なわけねーだろこの大紫おおむらさき(ノシ*`ω´*)ノシと言ってやりたかったが、時は金曜日の夕刻。気持ちよく今週の仕事を終えたいよね。土日にクヨクヨしたくないよね。反省するのは来週でいい。今はただ、最後までやりきった彼の一生懸命さを称えよう。「(´めωめ`)ガンバッタネ」と一声かけて、オイラは自席に戻った。


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今回のエッセイ、いかがだったでしょうか。よろしければスキ、コメント、エビデンス、リマインド、フィードバック、ペンディング、プライオリティ、サステナビリティ、色々お待ちしております。

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