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読み手の感情をネガティブに喚起させない文章を
オンラインの記事やSNSを読んでいると、ほんの少し嫌な感じを受けることがある。内容が問題ではない。使われている言葉がネガティブなのだ。小さくても負の感情をもってしまうと、続きを読む気がなくなってしまう。
書き手はおそらく、意図的にネガティブな感情をかきたてようとしたわけではない。中立に書いたつもりだったが、こちらがそう受け取ったのだ。書き手と受け手のあいだでコミュニケーションエラーが生まれてしまったのだ。
絵本作家ヨシタケシンスケ氏は、こうした原因は「相手の語彙力を信じすぎている」からだという。以下 https://ddnavi.com/interview/805207/a/ から引用する。
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「諦める」という言葉ひとつとっても、どの程度ネガティブな響きを孕んでいるのか、あるいはまったくてらいなく選択できる道なのか、人によって異なるでしょう。辞書をひけばわかるように、言葉にさまざまなニュアンスが含まれている。くわえて人は、個人の経験や感情も言葉に上乗せして解釈してしまう。
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たしかにそうだ。だが、相手にどう捉えられるかわからないからこそ、読み手の感情をネガティブに喚起しない言葉を書く。言葉の読み書きを生業とするなら、それが最低限のマナーだろう。読み手が不特定多数である場合にはとくに。
わたしが心がけているのは、中立の言葉を選んで使うこと。相手の心に負の意味で引っかからないようにするためだ。推敲を重ねて、少しでもひっかかれば別の表現を使う。
人を不快にさせない言葉を使うことについては、石黒圭氏がいくつかの著書のなかで触れてはいるが、踏み込んだ内容の書籍は見当たらない。不思議というか、残念だ。おそらくそれは、ヨシタケ氏のいうように、ひとつの言葉が「人によって(受け取り方が)異なる」からだろう。「これなら相手にネガティブな印象を与えない」という標準を集め、出版物として提示することは相当に難しそうだ。そんな冒険をする著者は、今後も出てこないかもしれない。
でも、それでも、可能な限りネガティブさを排除して書きたいし、そうあるべきだと思う。自分の脳内に「ネガティブさを喚起する可能性のあるデータベース」を構築し、そこに入る表現は使わない。
ヨシタケ氏は前述の記事で「できるだけ肯定も否定もしない言い方を見つけたい」と述べている。わたしも、中立な言葉を選んで使おう。仕事の文章だけではなく、SNSやこのnoteでも。
画像:夕方のチューリップ。薄闇のなかでそっと咲く赤やバイオレット、ピンクの花は、日中よりも鮮やかな色合いだ。