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真田正明『朝日新聞記者の200字文章術 極小コラム「素粒子」の技法』

 『書く力』に続き、同じ著者の本をもう1冊読んだ。本書は、朝日新聞夕刊の200字コラム「素粒子」執筆者が、短い文章のライティング技法をまとめてくれている。

「転」が重要

 まず、文章で大事なのは、起承転結の「転」だという。そのためには、時系列でA→B→C→D→Eとあったら、Cから話を始めていくなどの工夫が必要である。そうやって、「転」をうまく作ると。

「転」がない文章は平板になります。 起承転転結でも、起転承転承結でもいいのです。どうやって「転」をつくるかは、文章を考えることそのもの、といっていいぐらいです。そのために自分の記憶や知識を総動員し、頭の中で連想ゲームをするのです。

 読者を引き込む文章には「転」があるとは、あまり考えたことがなかった。マガジンにまとめているのを除き、ふだんのnoteは単なる日記。それでも、読んでくれる人はいるのだから、読後感のよい文章にしないといけない。本書で紹介されていた技法を使ってやってみよう。 

起承転結の「転」をつくる3つの技法
連想ゲーム、目線を変える、エピソード記憶のたどり方

ある題材に出てくる言葉から、ほかの題材につなげることはできないか。何かお互いに通底する問題はないか。同じ言葉でくくれないか。

一つのテーマを、目線を変えて上から下からのぞいてみる。別の角度からはどう見えるか試してみる。

(エピソード記憶について)時間をたどるだけでなく、空間もたどってみましょう。
(たとえば)学生時代に住んだ場所に、行ってみるのです。そうだ、こんなものがあった、この喫茶店にはよく入ったんだ、と思い出すことがあるでしょう。
 当時あったものがなくなっていたり、なかった建物ができていれば、それはそれで時の流れを感じさせる一コマになるでしょう。


 もうひとつ、エピソード記憶は、「五感」を総動員してたどる、とある。「五感」については、『書く力』でも著者が力を入れて述べていた。しかし、いつもいつもその場所に行くというわけにもいかない。ということで、本書では、ソムリエの田崎真也さんのトレーニングを紹介してくれている。

五感を働かせて言語中枢を動作させる

 五感を働かせて左脳の言語中枢を動作させるにはどうすればいいか。
田崎さんが一つの提案をしています。「湖トレーニング」と言います。どこかの湖を訪れたとして、「きれいな湖」というありきたりの言葉でなく、五感を使って表現する訓練をするのです。
【視覚】湖畔を見渡すと景色にはどんなものがあるか。湖面に映るものは何か。
【聴覚】鳥のさえずりや風の音など、耳に入ってくる音を聞いてみる。
【嗅覚】花や植物、土や空気など、それぞれがどんな香りを放っているのか。
【触覚】肌に触れる水や風の感触。周囲に生える木々や湖畔の砂利に触れてみる。
【味覚】湖に生息する魚や、近くの山々に育つ山菜やキノコなど、その土地のものはどんな味なのか。

 このトレーニングは応用自在。海岸や山奥の村といったようにいろいろな場面を想定して、頭にその場を描いて、言葉を探していくのだという。たぶん自分が苦手な領域だと思うので、トレーニングする必要がある。モチベーションとしては、旅行雑誌を読みながら語彙を増やすこともできそう。そうやって鍛えていけば、著者のいう「何より読み手の興味を掻き立て、印象に残る」という「オリジナルな比喩」も生まれてくるかもしれない。
 さて、実はこの著者、朝日カルチャーセンターで「短文力を鍛える文章教室」という通信講座をもっている。わたしは2月からこれに申し込んだ。それにあたって、講師の著書を2冊読んだというわけである。
 せっかく読んで、このように感想もアップしので、上述の「連想ゲームの技法」と、「五感トレーニング」をしてから課題を出してみた。これは定期的に続けるつもりだが、さて、どのように赤が入って戻ってくるだろうか。

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