JAT2016年「翻訳者の目線」より~訳文の前に、普通の文章できちんとした日本語を
執筆者、編集者としての顔も持つわたしは、翻訳ではない文章を書く機会も多い。
もちろん、同業者であるプロの書き手の文章も大量に読んでいる。
そんな生活が半年ほど続いて気づいた。文章そのものよりも、文章の中身で勝負するのが作家や著者という職業だ。文章が上手いかどうかよりも、重要なのはその内容である。しかし翻訳者は違う。「文章の中身」についての責任は原文の書き手にあり、翻訳者には「きちんとした文章、破綻のない文章」が厳密に求められる。物書きの中でも、翻訳者だけが負う宿命だ。