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楽曲『ラピスラズリの帝国』について

こんにちは。めりろれっくです。
まずは、みなさんボカコレお疲れ様でした&ありがとうございました!!
新曲を再生・コメント・マイリストくださったリスナーの皆様には本当に心から感謝しています。いやマジで…

今回はさらに規模も大きくなり仕組みも変わるなど、ますますボカロシーンでなくてはならない存在になりましたね…!
今回のnoteはめりろれっく個人の振り返りなのですが、イベント自体の個人的な結果や反省などは別のnoteにして、ここでは投稿した楽曲『ラピスラズリの帝国』についてのメモとこの曲を作った背景などを説明します。


Prolog

この曲でアニメを担当していただいたのが
長江春芳さん https://twitter.com/N_haruyoshi
になります。

長江さんの表現は繊細な人物の動き、圧倒的な情感が特徴です。
とくに近年ではボカロPの螟上?邨ゅo繧さん
(https://twitter.com/yuumagurenooto)の発表曲のMVを担当することが多く、自分もそこで長江さんのことを知りました。

https://www.youtube.com/watch?v=eDGYI0r8WAE

(この曲が長江さんのMVを見た最初だったと思います。今見ても泣きそうなくらいすごい…)

熱帯夜のように凝縮されたサウンドと吹きすさぶ夏風の躍動感から生み出される、脳裏に焼き付くような追憶。
自分は強い衝撃を受け、すっかり螟上?邨ゅo繧さん楽曲にのめりこんでしまうとともに、長江さんのMVにそそぐ強い熱量に圧倒されていました。

(この曲も自分の感性に影響を与えられた凄いMVです。並行世界の強烈な過去の季節感の再生…!)

そんな自分が長江さんにアニメMVを依頼したいと思いついたのは、去年の終わりごろだったと記憶しています。

無意識のうちに自分のなかで「秋」という記憶が閉じ込められた一種の異世界というイメージが固まっていました。
自分は秋という季節が好きです。自分が生まれた季節でもあり、なにか夏という狂乱が過ぎ去ってしまったさみしさにしみじみしてしまうのです。草木は枯れてしまう、実りはあるけれどそれは過去の結果。つまり秋は追憶の季節で、そんな物思いにふける感覚を曲にしたい。そしてこのイメージは長江さんのアニメで絶対に表現したい…!

そう思い立ったのが去年の秋がちょうど過ぎ去ったころ。タイミングの悪さを嘆きつつ、自分のなかで次の秋に向けてずっと構想を温めていました。

2022年長江さんは新規の依頼を停止している期間がありました。ところで自分の心の中では長江さんにアニメを依頼することは確定していたので、定期的に長江さんのtwitterを確認して再開を待っていました。(こえぇ…)そして再開したタイミングで「MVのアニメを依頼したいです。でも秋の曲なので秋まで待ってくれませんか」という妙なDMを送って企画が動き出した…ということになります。

他のインスピレーションなど

ボカコレ秋の開催が決まり、この秋曲をボカコレに向けて仕上げようと決意したのはいいのですが最初の段階で少しつまづきました。
最初の構想ではアコギメインのBPMの低い静かな曲だったのですが、最初の構想から時間がたってしまっていたのでいまいち編曲にイメージがわかず、自分の技量ではアコギを納得する自然さで再現できないことも感じました。
そこでいったん最初から曲を作り直し、基本はギターの入ったバンド形式を中心に、これまでの自作品のようなストリングスを中心とした作風を合わせようと思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=f2TYLpt8Blw

曲調に関しては最初の構想段階では短調の暗い曲調だったものを、明るめの曲調に変えました。前作の「画禍」で世界観にのめり込みすぎてダークエネルギーを使い果たしてしまったというのも理由ですが、自分の中でダーク曲だけではない作風の幅を広げたいという気持ちもありました。

そしてテーマは引き継ぎつつ自分のその時入れたかった要素を詰め込むことにしました。

ひとつは、曲に宇宙の要素を入れることです。
ボカコレ2022年春で宇宙をテーマにした曲が自分のなかでとても印象的で自分の中に強い影響がありました。ひとりふたりの人間と無限の宇宙という対比は自然に哲学的で切ないものになる、永遠と刹那の対比、逆に宇宙を通して自分が永遠へと向かっていくような感覚…それが、終わりを迎えるような季節である秋のイメージと重なりました。

(未来進さんは本当に自分のやりたい音楽をやり、自分の夢を形にしている…という印象の強いボカロPさんで、尊敬するPのひとりです…!)

もうひとつは、変態ベース、変態的なリズム感覚を入れる、ということです。
自分はeufoniusさんの曲が昔から大好きで、特にストリングスの使い方やそのベースの使い方が大好きでした。

(この曲、ベースの自由さもさることながら、サビで4回転調している…え?)

???このベース…まったくいみがわからんぞ…?)

ルートから外れた音ほど切なさが増すんですよね。

さすがにここまで自由すぎるベースではありませんが、要所要所で自分の思うエモいベースのフレーズを入れ込もうと頑張りました。

曲作り

実際に曲作りをはじめて、いろいろと構成を大胆に短くするなど考えたことはありましたが、すんなりと作曲はできたように思います。

MIXのときの地獄に比べれば…

螟上?邨ゅo繧さんのMIXはよくあるボカロ曲とは逆に、音をとことん膨らませて存在感を出す方法をとっています。

しかし、今回の自分はギター+ストリングスの和音という「中高音域」かつ「サスティーンが長い」音源を使用しているため、バランスがすごく取りにくいし、音圧も上がらない!

こういうマジキチEQにも挑戦してみたい気はありますが、今回は崩壊しないようにこんなに極端にはせずにEQの処理、カットをがんばりました。
それでも普通からしたらかなり成分の多い、もわっとした音になっていると思います。これは普通EQではカットされている部分に季節の情感を表現する成分が入っていると考えたからですが、下手すればつたない感じのMIXになってしまうので悩みどころでした。

実は一度音圧も出るようにとマスタリング前にEQを削りまくってすっきりとしたMIXにしようと2日ほどかけてがんばったのですが、まったく違和感のある仕上がりになってしまったので全ボツにしたという経緯があります。そのときはちょっと凹みました…

ストリングスは一般的なオーケストラと同じようにパンを振ってヴァイオリンからコントラバスまで配置したのですが、音のバランス・分離感が上手くいかずギリギリまでいろいろ試していました。ギターの帯域と被る楽器と被らない楽器があるので、たとえばどうしても左側のヴァイオリンの高い音が浮いてしまう…とか。最終的に「バイオリンにダブラーをかけることで厚みを出してほかのパートと接着する」という方法にたどり着いたときはかなりうれしかったです。

物語について

今回は物語をボカロ曲で表現する、ということを一番意識してつくりました。

少年が、少女と化した老人のつくった並行世界に閉じ込められるというテーマは、この曲を宇宙に通じる、普遍的な物語にしたい、という想いから構想したものでした。

ボカロ界の規模も、ファン層も広がっていく中で、自分の曲を聞いてくださるリスナーの中にもいろんな年代の方がいることに気づきました。
そんな幅広い方に共感してもらえるような物語を作りたいと思いました。
とくに女性の方に関しては、いままでのアニメ的な価値観のなかでは成人して以降の表現というのが妙に少なく、半分存在していないように扱われがちなのに昔から少し違和感があり、自分の形でそんなわだかまりに対する答えを出したつもりです。

いろいろと疎外感を感じる人間が増えている中で、人間の生まれてきた意味とはなにか、そもそも意味なんて考える必要があるのか、宇宙のレベルから考えたら人間同士の理屈なんてちっぽけなものであるのは存在しているという結果だけなのではないか、それなら勝ち負けや人と比べて誇ったり落ち込んだりすることに意味はあるのか…とかいろいろとこのコロナの下で考えたことも盛り込んでいます。

実はMVの女の子が昔本当に若かったころに、婚約していた男性がいたのですが、戦争で亡くなってしまい式を挙げられず、それ以降彼女は結婚せずに毎日仏壇にお参りしていたという設定があります。
世の中にはどうしても幸せに生を全うできなかった人間がいる。ならそのような人間は存在した意味はなかったのか。いやそうではないだろう、というテーマも込められています。
この設定をもっとうまく織り込めればわかりやすかったと思うのですが、そこが少し心残りではあります。

小さな振り返り

長江さんにペイントで作ったものすごい簡単な概念図をお渡し、通話で詳しい説明をしたのですが、アニメがものの2日ほどで完成した時にはさすがにびっくりしました。

長江さんにお渡しした恐ろしいほどにぶっきらぼうでわけのわからない概念図

長江さんのアニメに触発されて、ラストにさらに自分のインスピレーションを曲に盛り込むことができたと感じます。本当に長江さんには感謝しかないです。

このボカコレ全体の反省については別のnoteに書きますが、音楽面について少しだけいうと、ほかの方が投稿された楽曲と比べて特にMIX面で至ってない部分があると感じました。
これは次の曲の課題にしたいですが、長江さんと共作する機会を得て、自分の中でも数多くの挑戦をした楽曲だったと思います。

特にニコニコでのたくさんのポジティブなコメントをいただけたのは、自分の挑戦を受け入れてもらえたようでとても嬉しかったです…!

ボカコレは終わってしまいましたが、いつでも『ラピスラズリの帝国』の世界はお待ちしておりますので、ぜひぜひまた聞いてくれるととても嬉しいです…!

(ボカコレ振り返り編に続く…)


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