新曲『画禍』についてあれこれ
こんにちは。はじめてnoteを書くので自己紹介からなのですが、自分はめりろれっくといいまして、2021年の11月からボカロPをしているものです。
ジャンルとしましては主にダークで少しクラシックな雰囲気を持った物語性のある音楽を得意としています。
今回は8月3日に投稿した新曲『画禍』について自己評価と反省を含め残そうと思います。(あと単純にnoteに慣れたいというのもある)
構想
ボカコレに参加した前作『バレ』がニコニコ代表の栗田さんやアングラボカロの開拓者ヒッキーPさんといった方々からありがたいことに評価をいただき、再生数も自己最大を記録したことで、これを超える作品を作りたいというモチベがありました。
その中でさらにキャッチ―でカッコよく、BPMも速い作品、と言うのが最初の狙いでした。
具体的には、
柊マグネタイトさんのような高速で鍵盤楽器が駆け回るようなドライブ間の上にボーカルが乗っかるような曲が作りたい、というのが最初でした。
マグネタイトさんは昔twitterで頭の中にチェンバロ奏者をイメージしていると言っていて、自分の好きなゴシック・バロック系の作風とも会うのではないかというのがありました。
(実際当時の作品は今聞いても頭が吹き飛ぶほどのドライブ感があって、普遍性を感じます)
自分の曲は長くなりがちで、第2作目の『崩杯の鳥籠』などは6分越えの大作だったのですが、一部のリスナーにはあまり優しくないよなということで、めまぐるしく展開させることで2分台の曲を作りたい、というのもありました。
また、楽曲のテーマに『絵』を使ったのも、ダークな雰囲気を残しながらもリスナーが共感しやすいテーマの一つかなと思ったからでした。SNSなどでいろいろなイラストレーターをはじめとした表現者の方をフォローしているなかで、いろいろと周囲との距離感や接し方のせいで大変な思いをされたり病み気味になってしまっている方がいるのを見て、一ファンとしてとてもハラハラ心配するような気持になっていました。
でもそのような感情は現代に限ったことではなく、芸術家にとって普遍的なものでもあるのでは? とふと思い、近世ヨーロッパの女性画家をメインに置くことで、創作者の普段あまり大声で言えない感情を代弁させる、それが共感につながるかもしれないと考えました。
制作
実際に制作中は、意外とスムーズにメロディーが出てくれて、肝になるチェンバロのフレーズもうまく左右で主役が交代する疾走感を出すことができたのではないかと思います。
苦労したのは弦パートで、普通に打ち込んでもいつの間にかどんどんとノリがずれていってしまうという状態で、結局すべての音を切り刻んで調節する、という根気で乗り切りました。(おそらくそうしないと聴感が崩壊していたと思います…)
低音弦の響かせ方がわからずこれも最初苦労しましたが、
せきこみごはんさんの『ティアラ』の鳴らし方を参考に手探りで調整しました。
(この曲は1曲目を投稿する直前の21年秋ボカコレで出会って一番衝撃を受けた曲でした。「心に来る曲」としてはトップなのでは、、、と思います。いつかこの曲を超える壮絶さを持つ曲を作りたい、というのがひとつのモチベーションになっています)
鐘については、普通楽曲にはワンポイント的に使われることが多いですが、いつの間にか曲の半分くらいで何かしら鳴っている状態になりました。
そもそも自分は鐘のアタック感が好きで、Ali projectの楽曲で出てくると「うわきたー!」と嬉しい以上に「もっと!もっと聞きたい!」と思ってしまうくらいだったので、自作品では思い切り自分の欲望を出してしまいました。それだけだとあまりにうるさいので、バランス調整は気を使いましたね…
サビのメロディは、オクターブ跳躍を使うという縛りが自分の中であって、突然サビでキャッチ―になる感じが出ていれば…と思います。
新しく使ったプラグインについて
作曲途中、ボカロPのYASAI SHOPさんがThermalというディストーションプラグインを教えてくださったのが一つの転機になりました。これを挿すと音が綺麗に存在感が増し、特に一番大事にしていたチェンバロの音が見違えるように良くなったと感じます。
また、Expanse 3Dという横・縦・奥行きに作用するイメージャーのようなプラグインも重宝しました。さきほと述べた弦低音の存在感を調節するのにも役立ちましたし、オルガンなど1パートでオーケストラ並みの存在感と響きを出したい時なども、空間感の調節にかなり便利なプラグインです。
(YASAI SHOPさんの楽曲は展開の多彩さ、MIXのきれいさと世界観の構築の仕方が本当に好きです…よければ1曲…)
反省と展望
今回曲の公開を終えて振り返ってみると、自分の中でもこれだけ熱量をもって取り組んだ曲は初めてなのではと思います。
良かった点
自分の中でも、いろいろと新しい挑戦をした曲でしたし、そのなかで、『バレ』の作風は維持しつつ、よりキャッチ―な曲作りにする、という目標は結構達成できたのではないかと思います。
また本文では書きませんでしたが、MVの作成でも新しいエフェクトに挑戦してみたりと、挑戦の曲だったと思います。
反省点
自分の中で一番の心残りは、音圧があまり稼げず、結果的に迫力という意味では後れを取る形になってしまったと感じることです。
前作『バレ』よりもパートを増やし、さらに新しいプラグインを導入することで、音が膨らみ、リミッターやマキシマイザーで稼げる余裕がなかったのかな? と思います。最後なんとかしようといろいろやってみましたが、途中でMIX自体が崩壊してしまったのでよく考えて今のバランスになりました。次の曲は編成、曲作りの流れから見直した方がいいのかな…と思います。
また作詞ですが、自分の好きな言葉を縦横無尽に入れられたことである程度満足しています。今の自分に一番足りないのは韻踏みの能力だと思っています。最近の自分が好きな名曲は常に韻に強いこだわりを持って作られていて、それが一つのリスナーの評価軸になっているとも感じます。
ところがめりろれっくは韻を踏むことへのモチベーションが低く、直さないとなーと思います。自分の伝えたいニュアンスが破壊されてしまうことへの怖さがあるのですが、逆に韻を踏むことで現れる世界観・空気感というのもあると思うので少しづつ鍛えていきたい…
そしてこれが一番直したいところなのですが、もう少し落ち着いて曲を作れ!と過去の自分に言ってやりたい。
作っているときはもうずっとこの曲に取りつかれている状態で、肉体のリズムも崩れがちになってしまい、曲の暗い世界に没入する精神的負荷が結構生活に影響してしまっていたので、なんだか寿命が縮んだような気がしました。
イタコじみた作曲の仕方はほんとうに限界があると身を持って知ったので、もっと穏便に作れるやり方を見つけるまでは、ダークな世界観の曲は連作せずに、以前からやりたかったもっと明るい作風の曲にもいったんチャレンジしてみようと思っています。
先入観を持たずに、謙虚な心を忘れずに、これからも良い曲を作っていきたいので、もしまた見かけたら、めりろれっくの曲を聴いてくださると幸いです。