「くしゃみって命にいいんだね」
夜のタクシーにて。
休前日の19時半、アジの干物、味噌汁、玄米ミックス。
肉好きな男子たちに魚も食べてもらおうと久しぶりの魚メニュー。おしゃべりの止まらない時期の次男がぺちゃくちゃ話している途中で止まった。グハっといって涙目に。ゴヘっと言ってギー!と叫ぶ。ジタバタする。魚の骨が喉につっかかったということがわかる。
親が焦ってはいけない。いますぐ命に関わるのではないから大丈夫だ、おそらく、そうだろう、と思う。でもやはり、目の前で異変を精一杯表現する子供のただならない様子には毎回心臓が縮まる気持ち。
魚の骨は、耳鼻科に行く。前にもあったのに、再び調べる。骨が大きかったり喉に傷ができてしまいのちのちそこからばい菌が入るのがまずい事態。前にも聞いたはずなのに、今回も改めて聞くことになった。夜間に見てもらえる耳鼻科のお医者さんは少ないようで、大きな病院の夜間診療に行くことにした。30分以上経ってもまだ次男は泣いていて、まだ(喉に骨が)いるのだと言う。
自転車で行こうとしたら夫にタクシーで行ってくれと言われてタクシーを拾った。向かうのは大きな病院で、次男は赤ちゃんの頃の痙攣で何度もお世話になったことがあるし、長男も大けがして血だらけで運び込まれた。救急車で運ばれたときの記憶が強く、魚の骨でお世話になるのはなんだか申し訳ないような変な気分がしたし、救急車で来たときの何度もの過去の記憶がフラッシュバックというか頭の中で混在し奇妙な緊張感に包まれて私のほうが小刻みに震え出す。
トリアージ待ちで廊下のベンチに座っていると、次男がなんどかくしゃみをした。「寒い?」と聞くと。「ほね、とれたみたい」と返事をした。数秒前とまったく違い、落ち着きを取り戻していた。結局医師の診察の前にキャンセルし、タクシーに乗った。
「くしゃみの意味が分かった気がする。くしゃみって命にいいんだね。」
と次男は夜の出来事を振り返った。