Whimが描くMaaSの未来、「MaaSはヘビメタバンド!」
『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。
今日の『戦略をアップデートする』では、MaaS(Mobility as a Service)について述べたいと思います。
MaaSとは「サービスとしてモビリティを提供すること」。フィンランドで生まれた概念です。具体的には、スマホアプリ1つで、電車やバスといった公共交通機関からタクシーやライドシェア、飛行機、船、あるいは自転車など、あらゆるモビリティ手段を最適に組み合わせたエンド・エンドのルート検索が可能で、そのルートの予約、発券、決済、利用まで一気通貫で行えるサービスです。
「Whim」とは、そのMaaSを官民連携でヘルシンキなどで提供するフィンランド企業「MaaS Global」のサービスブランドです(動画参照)。2020年8月26日、「Whim」のコーポレートブログに「MaaS is like a heavy metal band(MaaSはヘビメタバンドのようだ!)」という、ちょっと面白そうな記事がアップされました。
記事では、MaaS業界がヘビメタバンドに例えられています(執筆者はアメリカのヘビメタバンド「スリップノット」のファンのようです)。ビートやリズムを作り出すドラマーが「公共交通機関」、主旋律を奏でるリードギタリストが「モビリティサービスのコンテンツ」、重低音でビートを支えるべーシストが「立法機関」、そしてフロントに立つボーカルが「MaaSオペレーター」です。
Whimが暗示するのが、MaaS事業領域における特定の事業者による独占・寡占リスクです。輸送業界は多くの市場で独占・寡占が存在するとされ、MaaS業界でもグローバルなレベルでそれが懸念されると言います。
MaaSには、原則として、その提供形態やビジネスモデルで多様性が求められる。1つや少数の「MaaS X」なるものが市場を支配すべきでない。記事の執筆者である、「MaaS Global」のエコシステム&サステナビリティ部門責任者Krista Huhtala-Jenks氏が主張するのが、収益性の確保とともに、多様なMaaSモデルが成り立つための機会の均等と公正な参入ルールです。
交通システムを大きく変える可能性があるMaaS。鉄道会社、航空会社、バス会社、タクシー会社、船会社、あるいはライドシェア会社などモビリティ手段を提供する各事業者を統合する「MaaSオペレーター」をどのような企業が担うのか、観衆はどのようなヘビメタバンドの演奏を聴けるのか、注目が集まります。
田中道昭
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