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『完全無――超越タナトフォビア』第三章
しろ
「ぱちぱちぱち!(拍手)ちぱ!(あ、手がすべっちゃった)」
ウィッシュ
「しかしこの作品はシュールといいますか、超幻想的といいますか、やんごとない創作物件ですね、きつねさん」
きつねくん
「そうかな? いや、そうだろう。プラトンの「イデア」や老荘思想の「タオ」やユングの「集合無意識」や『ざんねんないきもの事典』なんかと肩を並べる程度には」
ウィッシュ
「十中八九、いえ、1週間が8日間になっちゃうくらいに渡り合っていると存じます! いえ、ウィッシュボーンの犬勘(いぬかん)によりますと……、それらをすでに超えているのではないかと考えます」
チビ
「チビにはシュールっていうか、おもしろいのかなんなのかよくわかんないというか、この作品のヘンテコでテコヘンな感じを、きつねくん、まずはたとえてみてー。
あー、やっぱたとえなくてもいいから、ものすごくチビを感動させてほしいなー(笑)」
しろ
「とりあえず、オセロしたいなぁ、チビちゃん……、しろはそれがいちばんおもしろい気がする。ぐふふ」
チビたち行きつけのマックには窓がない。
ライプニッツの「モナド」(己の内に部分を持たず、分割することもできないのに、自身を反映させることができる実体、という不可思議な輩)にも窓はない。
陽が燦燦と降り注ぐことのない店内には、哲学における大いなる謎の足音が一瞬きらめいた。