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『完全無――超越タナトフォビア』第四十七章

ウィッシュが少しだけ興趣をそそるようなことを言ったので、ここでわたくしが、チビたちに送りたいポエムなるものをひとつ、朗読することとしよう。

チビ・ウィッシュ・しろ
「「「わーい」」」

(チビたちの淑やかならぬ動物的な歓喜の声の、そのかたちが、ちいさな曼荼羅となりたいようななりたくないような、そんな仕草でためらっている。)


【無題】

いきものも
ウイルスも
うちゅうもぜんぶ

みてみようぜ

そりゅうしレベルよりさらに小さい
プレオンレベルよりもさらに小さい
ファデエフ=ポポフ・ゴーストよりさらに小さい
えいえんにむきつづけるたまねぎの皮レベルで

みてみようぜ

すべてはちっちゃいつぶでできている
そんなイメージ
そんなひろがり
せかいは
つぶがつぶとして
つぶがつぶみたいに
つぶがぶつぶつ言いながら
つぶはつぶからつぶへと目をつぶってゆく

そして夜

つぶは波みたいなんだぜ
つぶはいつだって波みたいなんだぜ
夜は波がいっぱい
世界にいっぱいいっぱい
波がいっぱいだから
夜もいっぱいだし
波はじぶんがなんだかわかっていない

またしても夜

いきものがなにかをかんがえたり
なやんだり
おこったり
わらったりしても
ちっちゃいつぶはみんなのなかで
つぶつぶしてる
つぶつぶであるために
ぶつかりあったり
ゆずりあったりしながら
つぶはつぶであろうとする
つぶはつぶであろうとするけど
つぶはいつでもどこでもつぶだったから
つぶはつぶであろうとすることを
つぶらしくやめようとするけど
やっぱりつぶはつぶのままなんだなあ
つぶはそのままのつぶでいいんだね
そうしてつぶは波になってねむりにおちるんだね

そして朝

波のようなつぶたちのひとりごと


はじまりも
おわりも
ないんだね

すべてのうごきは
一度っきりの
サプライズ

うちゅうだろうと
なんだろうと
なにもかもが
一度っきりなんだね

そういうの
あるっていうんだね

そんでもって
一度っきりっていうことは
ほんとうには
ないんだね

だって
はじまりもおわりも
ほんとうはないんだもの

はじまりのばしょは見つからない
おわりのばしょも見つからない

だってせかいって
数字じゃないもの
ひとつふたつみっつじゃないもの
世界にはないんだね
数がないんだね
数えられないんだね
それが世界なんだ



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