『完全無――超越タナトフォビア』第百八章
感覚によっても論理によっても示威することの難しい堅物の名が、完全無であることは確かなのだが、「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」という問いの答えとしては元よりふさわしさを欠いている、と言えよう。
完全無を持ち出してしまえば、その問い自体が無効化されることになるのだから。
そのような問いに対して、さまざまな答えを人間は用意するだろうが、その生み出す様も含めて、人間たちにとってのあらゆる事象というものは、あらかじめすべて起こっているのだ、と言うことはできない。
動的無