『完全無――超越タナトフォビア』第百九章
ところで、答えることに意味を持たせない何ものか、それこそが世界という名をほしいままにしている当の不可思議なのだが、その解答不可能性に賭けてみる、という凛とした意義を哲学的に見出そうとする人間たちという存在者には隠微なほどになまなまとした熱狂があると思わないだろうか。
あらかじめ「ない」という「不思議ちゃん」に対して、理性と感性とのせめぎ合いの中で思惟を織り巡らせ、人間たちは歴史的に悩み、苦しみ、かなしみ、いとおしみ、うろたえてきた。
歴史上最強クラスの苦難といえば、タナト