いつもと違ったことをしてみると違ったことがおきる
朝起きて、いや、うそです。昼前に起きて、いろいろやってそろそろ出勤してやりますかと、誰のためでもなく自分のためにしてやった感を出しつつ、外にでると、とてもよい季節で川沿いの道は新緑で色とりどりの屁鯉らに稚鮎のむれが混じり気持ちよいわけです。
朝には、朝の良さがあって、昼さがりには昼下がりだけのよさがある。
いやはや、これはたしかだなと。
そこから川沿いに進むと桜が青々としていて、小学生の子供ちゃんたちにつまれていないだろう高さに、サクランボがなっているのをつまむと、血のようなサクランボ液が顔とメガネにたれてきて、それをスマフォのカメラの自撮りで確認しつつ、ちょっとスプラッターだなとか思いながら、そのまま血が垂れたかのような風体でよちよち歩くと、どこかのおばはんとすれ違い、ギョっと、され、「あー、サクランボの汁がですね」みたいな弁解をして、さらに歩くと、橋の近くにバルがあります。
この季節、このバルの脇には桑の実がたくさんなっていて、近隣の子供ちゃんなどの憩いの場になっているわけです。
では、大人だからといって、桑の実をつまないかというと、まー、わたしの場合はつむわけです。ちょっとだけですがね。
その中から、よく熟しつつも、やや酸味がありそうなものを4つほど拝借してモグモグしながら踏切を渡ろうとすると、向こうで知的障害をもっているのでしょう、同い年ぐらいの男性が、単線の線路の向こう側で立ち止まり、首をすこしかしげながら低く奇声をあげて右手をかしげこちら側へ掲げています。
その背後では、ちょっとこまったようなサラリーマンや子供連れの主婦や爺様あたりがいて、こちら側でも、ちょっとこまったようなサラリーマンや子供連れの主婦や婆様がいます。
一瞬、わたしも、こまった顔をしたと思うのですが、きょうはすこぶる機嫌がよかったこともありニコニコ歩いていくと、手を掲げた男性の目の前にきました。
すると、この男性が、わたしの顔の目の前に手をだしてきます。
わたしも、おう、と手を出してタッチすると、男性はくぐもった声をあげながら力強く握手をしてくるのです。
湿った手だな。最初にそう感じました。わたしはあんまり汗をかかない派に所属しておりまして、手足がだいたいサラテクトなのです。
おうよ、握手か、握手なら俺も自信があるからな。俺の握手をみやがれ。
そんでもって、握手をずっとしていると、この男性が首からさげた定期入れみたいなものをわたしにみせてくるので、おう、どうしたの?迷子なのかな、とか思っていると、その定期入れの中には、障害者手帳というかカードみたいなものが入っており、○○38歳とあったのです。
で、男性はこの38を指してから、わたしのことを指してくるのですね。
あ、
これは、
おいどんの年齢を聞いているのかなと思い、
ふはははは。俺は36だぜ、といったものの、そういうサンジューロクとかはわからないみたいなので、右手の真ん中の指3本で3を作り、次に左手を広げて、先ほど右手の指を1本にして合わせ36歳だよと伝えたんです。
すると、この男性は、わたしの年齢を理解できてうれしくなったのか、この世知辛い世界で久しくみたことがないような笑顔をあげて、手をふって、線路の向こうに歩いていったのです。
この話で何を伝えたいのか。
これは、タイトル通り、
いつもと違ったことをしてみると違ったことがおきる
ということで、ちょっと新鮮な経験だったなーと。
ではでは。