見出し画像

質問箱への回答㉜『他人を変えようとするのは』

先日ほしいものリストから贈っていただいたLogicoolの静音キーボードがめっちゃ使いやすくて有り難いです。わたしは「カチャカチャカチャカチャ、ッターン!」っていうノリ重視でタイピングする人ではないのでもともと静かですが、静音と銘打たれているだけあってたしかに音があんまりしないです。静音仕様のせいなのか打鍵感ももっちりしていて、これはわたしの好みです。贈ってくださった方、あらためてありがとうございました。

むかしこういう人を見たことがあります

さて昨夜、質問箱にご質問をいただきました。内容はこちらになります。

昔から「他人を変えることは難しいから、自分を変えるべきだ」という趣旨のことをよく見聞きしますね。たぶん、この話の出どころはアドラーだと思うんですが、アドラーは大体こんなことを言っています。

  • 他人の行動や考えをコントロールすることは困難である

  • よってそんなことに執着するのは時間と労力の無駄である

  • 他人のあり方に執着するのはそれに依存していることと同じである

  • 一方で、自分を変えることは可能であるし、他人を変えるよりも効果的である

これらについてはわたしも同感ですね。いずれにしても他人を変えることは難しいということは、その通りと言ってよいでしょう。ですので、この理解を出発点として、それでもなぜ他人を変えようとしてしまうのか? について意識レベルの観点からどんなことが言えるかを見ていきましょう。

まず、そもそもなぜ「他人を変えたい」のでしょうか? 一言でいってしまえばそれは、その他人のいまのあり方が自分にとって気に入らないからです。気に入らない点としては、自分と接するときの態度や言動のみならず、相手の持っている価値観や生き方、考え方、趣味趣向といったことまで含まれます。ストレートに気に入らない(腹が立つ)という場合もあれば、その人のためを思うからこそいまのそのあり方は変えるべきだという一見すると善意に見えるような場合もありますが、でも結局のところ気に入らないわけです。

なにかが気に入らないというとき、その背景には「こうあるべき」「これが正しいあり方」という思いがあることに注目してください。自我(エゴ)はいつでも物事を「正しい/正しくない(間違っている)」とか「よい/悪い」とかいったように二元的に判断しています。しかしながら、エゴにとっての正しさとはつねに相対的なものでしかありません。つまり、すべてにおいて「その人にとっての正しさ」でしかないわけです。

エゴとはそういうものですから、この相対的な正しさという基準は意識レベル500台上部においてさえ、まだ残っています。しかしながら、250(中立)のレベルの人物は自分にとって正しいことが必ずしも他者にとっても正しいとは限らないことを理解できるようになり、さらに350(受容)のレベルでは自分とは正反対と思えるような他者の言動や考えをも受け入れられるようになっていきます。とはいえ、では意識レベル350 の人物が「他人を変えようとしてしまう」ことはないのかというと、そんなことはありません。

こうした人物は他者から "ありえへん" 態度を向けられても、基本的には「まあこいつはこういう奴だから」と受け流せます。でもその相手が自分のパートナーであったり、あるいは上司や部下であったりすると、受け流しきれなくなる局面も出てくるでしょう。

普段は受容的にコミュニケートできてはいても、それでもその人の中には「相手はこうあるべき」「こうする(こうしてくれる)べき」という期待はあるわけです。ブッダが言うところの "苦" とは、まず思いがあり、そしてその思いの通りにならないことを指しています。つまり、相手はこうあるべきなのに、そうあってくれないというとき、それはその人にとって苦しみなのです。ちなみに苦しみとはフォースのことだと思ってください。

相手を変えようとする場合、根底には必ず相手に対する "怒り(150)" が存在しています。すなわち、他人を変えたいという動機に先立つのは怒りというフォース(苦しみ)なのです。

さて、そこでストレートに怒りをそのままぶつけたなら、たまたま相手によっては「ごめん悪かった」と謝ってくれるかもしれません。まあそれだけで相手が根本的に変わるかというとそんなことはないでしょうが、すくなくともその場の怒りは発散されることでしょう。

しかしながら多くの場合では、怒った自分のほうが我慢の利かない乱暴な人だということになりかねませんね。また売り言葉に買い言葉となって、お互い罵り合う大喧嘩となる可能性もあります。低い領域にいる人々どうしであればこのような展開になりがちだと想像できますが、まあ250以上の人であれば短絡的に怒り散らすようなことはまずしないでしょう。

ではどうなるでしょうか。エゴはそこで、怒りを正当化しようとします。怒る代わりに冷静さを装って、相手を自分のいいようにコントロールしようとやりはじめるのです。つまり相手を変えようとするわけなのですが、この動機を支えるのが "プライド(175)" です。プライドとは傲慢さのことです。プライドはまず、自分の望みや期待は満たされるべきだと当然のように思っています。なぜなら自分は正しいからです。そしてさらに、自分は正しいので相手を自分の思うように変える資格があると思い込むのです。思い込むといっても、そのようにはっきりと自分の動機を分析し自覚できる人はまずいないとは思いますが、しかしそのように思い込んでいなければ他人を変えようとするなんて、できるはずがないのです。

 こう動いてほしいと期待し、そうならないと怒り、悲しみ、そうさせようと努力します。人を変えるのが難しいのは分かっているのに、そう動いてしまうのはなぜなのでしょうか?

難しいと分かっているのもエゴですし、分かっていても変えようとしてしまうのもエゴです。ここで言えるのは、エゴとは単に観念の集合体であり、実体をもったものではない(つまり幻想)であるということです。幻想であるエゴに自由意志はなく、ゆえに行為の主体でもありません。人を変えるのが難しいと考えるのも、そう考えつつも人を変えようとしてしまうのも、その肉体精神機構のエゴにただ起こっていることなのです。それを起こしているのは神であり全体性でありますが、なにがその肉体精神機構に起こるかはカルマとして記されています。

他人を変えることは難しいという観念を持つこともカルマであり、そのような観念を持っているにもかかわらず、他者が自分の思い通りでないことを苦しみ、怒りやプライドを刺激された結果として他人を変えようとせずにいられないのもカルマです。

同じことは相手である他者にも言えることで、あなたがその人の運命を大きく変える運命でもない限り、カルマに衝き動かされている観念の集合体であるその人の自我を変えるなんてことはできないのです。

さて、「なぜ人は他人を変えようとしたくなるのか?」について、ここで結論をまとめてみましょう。

それは「他人を変えなければ苦しい」からであり「他人を変えることに成功すれば気持ちいい」からです。気持ちいいというのは、苦が取り除かれるからです。これはドラッグが一時的なハイをもたらすのと同じです。あるいは長丁場の仕事から開放されたときの喜びとも同じです。なんであれ、人がなにかをしたがるのは「苦しみから逃れるため」「喜びを得るため」のいずれかですが、両者は本質的にはおなじものです。というのも、いずれも意識レベルがほんのわずかであれ上昇することを意味しているからです。

気をつけなければいけないのは、他人を変えようとすることで苦から逃れたり気持ちよさを味わうという行為は、どこまでいっても一時的なものにしかならないということです。ある人を自分の望むように変えられたとしても、その後の人生では必ずあなたにとって望ましくない他の人物が現れるでしょうし、なんなら変わってくれたと思っていた人さえも時間の経過のなかでずっと同じようで居てくれるとは限りません。ですから、これはキリがありません。キリのない一時的な喜びには依存性、中毒性があります。したがって、他人を変えようとしてしまうことにハマっているうちに意識レベルを大きく落としてしまう可能性は高いです。ですから、人のことはその人自身に任せておき、自分がどうにかできるなどと思わないことです。そうではなく、他者のあり方によって一々苦しんでいる自分こそを救ってあげるべきです。

自分の思うように振る舞ってくれない他者が問題なのではなく、他者の言動やあり方に執着して苦しんでしまう自分が問題なのです。

なお、慈悲のアトラクターの影響力が増してくる意識のより高い領域においては、他者を変えようと思うことはありません。他者には他者の人生がありカルマがあり、どんな風であったとしても、それはその人の魂がそうさせようとしているものですから、「わたしを変えてください」と頼まれでもしない限り干渉はしません。

でも、その人がよりよくなること(つまり意識レベルがより高まること)を願わずにはいられませんし、そのために手伝えることがあれば喜んで協力もするでしょう。しかし、どんな協力をしたとしても、その人が変わったのであればそれはその人自身が自分を変えたのであり、もっといえばその人の運命の書には人生のどこかで大きく変わることが書かれていたんだということです。

これでご質問への回答はおしまいです。今回の内容は「怒り」と「プライド」の問題でもありますので、関連する記事を紹介しておきます。あわせてお読みください。それでは、お読みくださってありがとうございました。またのご質問をお待ちしておりますね。

いいなと思ったら応援しよう!

BLACK
記事へのリアクションや記事執筆への励ましのサポートありがたく頂戴します🙏 また、プロフィールにAmazonほしいものリストも掲載しています。こちらもぜひよろしくお願いします!