お客さまが“ワクワクする体験”を設計していく|メルカリの未来をつくる仕事 (プロダクトデザイナー編)
「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というミッションを掲げるメルカリグループ。そのミッションの実現には「人」の力が欠かせません。多様な価値や可能性を見出すためには、バックグラウンドも価値観も多様なメンバーの力が必要だと考えているからです。
そうした多様なメンバーたちは、日々何を考え、何を信じて働いているのか──本連載『メルカリの未来をつくる仕事』では、ひとつの職種、そしてひとりのメンバーの仕事観にフォーカスを当てて、これからの“メルカリの未来”をつくる仕事について探っていきます。
今回紹介するのは「プロダクトデザイナー」。今回、話を聞いたのは、2024年7月にジョインしたばかりの長倉雄希です。国内のWeb制作会社で数々のサービスを設計してきた長倉は、メルカリにおけるプロダクトデザイナーの仕事をどのようにとらえているのでしょうか。さまざまな企業で経験を積んだ長倉がメルカリに入社した理由、そしてプロダクトデザイナーという醍醐味とは。
「自分らしく生きれる人を増やす」に携われる職場
──まずは、メルカリに入社したきっかけを教えてください。
新卒入社した会社の同期だった友人が、メルカリの職務記述書を送ってくれたのがきっかけです。入社当時から仲良くしていて、お互いに家庭ができた今でも家族全員で月に1回会っています。そんな彼が僕に「合いそう」と紹介してくれたこともあって、前向きに検討しはじめました。
僕はもともと「自分らしく生きれる人を増やす」を働く上で大事なテーマにしています。これまでも、個人の生き方や報酬の増やし方の選択肢を広げる事業を展開している環境を選んできました。また、本業の傍ら、デザイナーにキャリアチェンジしたい人をメンタリングして支援しています。社会の理不尽なルールに縛られたり、自身に呪いをかけて知らず知らずのうちに、窮屈になってしまっている人を多く見てきたこともあり、その人にしかない価値が発揮できる社会になるといいなと考えています。
メルカリも「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というグループミッションのもと、多角的な事業を展開していて、自分のテーマと重なる部分があったことが入社の決め手になりました。
──紹介してくれたご友人は、メルカリのどういった点が長倉さんに合うと考えたのでしょうか?
一つは今までのスタートアップで働いた経験が活かせるからかなと思います。目的達成のためなら、コンフォートゾーンを飛び出して何でもやるスタンスがメルカリに向いていると考えてくれたのかもしれません。
あとは、英語力を活かせる職場だということがあると思います。僕は4年間留学していたのですが、その英語力を生かせないまま、社会人生活を歩んできてしまいました。リファラルしてくれた友人にもそのことを話していたので、そのあたりも慮ってくれたのではないかと思っています。
私が関わるプロダクト開発メンバー、特にエンジニアやPMとのコミュニケーションは英語が中心になります。
──メルカリでは英語を話せる方が多いのでしょうか?
英語を第一言語にしているメンバーもいれば、第二言語のメンバーで流暢に話せるメンバーもいれば、学習中のメンバーもいて英語レベルはバラバラです。しかし、言語レベルによらず、デザインスキルを生かして社内で活躍されている方ばかりです。
というのも、メルカリでは、どんなバックグラウンドを持った人とでもコミュニケーションがとれるような仕組みがたくさんあるんです。各言語を母国語としない人でもわかりやすい「やさしい日本語/英語」のトレーニングや、おもに通訳や翻訳業務を担当するGlobal Operation Team、内製したChatGPTの発達、ミーティングで話し合った内容をテキストベースで残すドキュメンテーションの文化など、きめ細やかな配慮と工夫がされていると感じます。
デザイナーに必要なのは“憑依力”の向上
──現在のポジションと業務内容について改めて教えてください。
「デジタルプロダクトデザイナー」として、PM(プロジェクトマネージャー)やエンジニア、アナリスト、リサーチャー、クリエイティブメンバーなどと協業しながらUI/UXを設計する仕事です。
──具体的にはどのようなものを設計するのでしょうか?
軸となるのは「インターフェース」と「ユーザー体験」です。インターフェースの具体例としては、iOSやAndroidなどのアプリ、Web、プッシュ通知やメールのライティングなど、お客さまが視覚を通して知覚する場所のデザインをしています。ユーザー体験に関しては、UXリサーチや行動データの調査をもとに誰がどのシーンでどんな気持ちで利用するのかを整理しています。
いわゆる「UXデザイナー」に相当する役割ですが、メルカリでは社内でデザインの重要性が説かれていて、UXをチーム全員が当たり前のように考えるカルチャーがあるんです。そうした環境において、自分だけがUXデザイナーを名乗ることに違和感があり、個人的に「デジタルプロダクトデザイナー」と名乗っています。
誤解を恐れずにいうと、この職種はグラフィックデザインとか広告デザインのように、感動させたり、人の心を震わせられる華のある職種ではないです。
使いやすくて当たり前、少しでも使いにくいとダメ。不便じゃないように、少しでも効率がよくなるようにデザインするみたいな地味な側面もある仕事ではありますが、それをコツコツ積み上げてポジティブな体験をつくることに魅力を感じています。
──では、仕事をするうえで大切にしていることはありますか?
ビジネスの基本のキですが、相手の立場に立つことですね。ユーザーの体験を設計するデザイナーには特に必要な視点だと思っています。
前職でユーザーを「想像する」のではなく「憑依する」という言葉を使った行動規範があって、今でもすごい大事な視点だと思っています。死霊とかが乗り移る表現ですが、そのくらいユーザーの気持ち寄り添い、自らユーザー体験することによって「wow!」と思ってもらえる体験をつくることを大切にしていますね。
また、普段から自分と異なる境遇の人の話をたくさん聞いたり、本や映画やドラマ、Webメディアなど多種多様な表現に触れたりして、視野を広げていくことを意識しています。
デザイン指針をもとにした体験設計
──他のメンバーと協業しながらチームで仕事しているとお話しされていましたよね。現在のチームではどのようなミッションにもとづいて行動しているのでしょうか?
デザインチームのミッションは、「デザイン指針」と呼ばれるガイドラインにまとめられています。体験をデザインするときのモノサシにあたるものですね。
デザイン指針は、「ブランド構造」「Mercari Brand Core」「Mercari Design Principles」の3つに分かれています。
メルカリの体験を通してお客さまにどのように感じてほしいことを明記しているのが「Mercari Brand Core」で、Brand Coreを届けきるために大切にする世界観や体験を示しているのが「Mercari Design Principles」という位置づけです。
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こうしたモノサシがあることで“メルカリらしさ”が共有できて、チームやメンバー間の認識のズレを防いだり、意思決定の時間を短縮したりすることにつながっているんです。
──デザイン指針があると、新しく入社した方とも“メルカリらしさ”をスムーズに共有できそうですね。チームの雰囲気はいかがでしょうか?
率直な表現になりますが、びっくりするほどいい人ばかりなんです。ホスピタリティが高く、心理的安全性が高いチームです。入社してから3ヶ月間メンターの方がついてくれて、今の業務状況や感情を丁寧にフォローしてくれます。オンボーディング期間で働きやすい環境を整えてくれるので、のびのび仕事できていますね。
加えて、メルカリが好きで、日常的にサービスを愛用しているメンバーが多いのも印象的でした。普段からサービスを使っているからこそ「もっと使いやすくしたい」という真摯なものづくりの姿勢が共通しているんじゃないかなと思います。
デザインの重要性が高く、活躍できるフィールドが広い
──長倉さんはUI/UXデザインの領域で、さまざまな会社をご経験されていますよね。入社してみて、どんなところに「メルカリらしさ」を感じますか?
先ほど、UXの重要性が説かれているという話をしましたが、そうした意識が経営陣にまで浸透しているのが特徴だと思います。これは「お客さま第一」が根本にあるからこその発想ですよね。まだ3ヶ月という短い期間の中でも、CXOが旗振りをしながら、モックアップやプロトタイプを中心に議論が進んで、意思決定に導かれるシーンを多く見ました。
世の中全体を見ると、言語のみのやり取りや損益をベースに経営や意思決定がされてしまう環境は多く存在していると思います。デザイナーが経営会議に入る環境や機会も増えている一方、見た目や表層をつくるといった狭義に留めてしまっている会社も中にはあります。こうした職場では、新卒で入社してすぐにビジュアルデザインを超えた設計に携わるのは難しい。
その点、メルカリはデザインの領域が広く、かつお互いにリスペクトがあるため、デザイナーにとってはのびのび働きやすい環境なんじゃないかなと思います。
──デザイナーの方がモチベーション高く働けそうな環境ですね。現在のポジションにおいて、どんなことにやりがいを感じていますか?
一つは、新しい物事の発見ができることが醍醐味です。サービスの作り手は比較的リテラシーがあったり、毎日のようにサービスを見て触っているため、無意識にバイアスがかかっていることがあります。なので、UXリサーチに同席していると、当初想定していなかったような体験でないことがほとんどです。境遇がまったく異なる人の日常生活やサービスを使っている様子を観察する時に、必ず想定外の発見があるのでおもしろいです。
もう一つは、重要な価値に気付いた瞬間にやりがいを感じます。チームであれこれ検討していった先に、コンセプトやプロトタイプをつくってお客さまの反応をみたり、あるいはつくり手である自分たち自身で体験してみて、「これが重要な価値なんだ」と実感をもてる瞬間がある。それにたどり着くまで膨大な時間を費やすこともあり、自分の中で昇華できた時に一番アドレナリンが出ます。
──最後に、今後さらに挑戦したいことについて教えてください。
今はまさに、会社が過渡期を迎えている面白いタイミングだと思っています。皆さんがメルカリに対してイメージされるような「物を売り買いするマーケットプレイス」を主軸にしながらも、『メルカード』や「ビットコイン取引」などのフィンテック事業や、空き時間おしごとアプリの『メルカリ ハロ』といったいろいろな事業がどんどん生まれている段階というか。
そうした状況にメルカリグループのミッションである「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を照らし合わせてみると、個々のサービスをすべてシームレスに使える体験を作っていく必要があると考えています。それは同じ方向を向いているチームのやりたいことでもあるし、僕自身がワクワクすることでもあるんですよね。
社外の方によく「メルカリはもう完成しきっていて、やることがないでしょ」と言われることも多くて、確かに機能的価値は満たされてきている側面はあると思います。でも、情緒的価値はまだまだ伸ばせる余地があると考えていて。
現在のように自分で検索しにいく“便利なサービス”で終わるのではなく、開いただけで、思わぬ商品や価値との出会いがあったり、自身が想像していなかった生き方やスキルを発見できたり、より多くの人の日常に溶け込んだワクワクするプラットフォームを作っていきたいと思っています。