メルカリキャンペーンデザインを解剖してみた
こんにちは。メルカリ UX Designチームの野見山(nomiyama)です。
2019年に新卒で入社してから、約1年ほどメルカリのキャンペーンにまつわるデザインを担当しています。
入社までアプリやWebでのデザイン経験もなく、はじめて担当するキャンペーンのデザインにとても苦労しました。いつも何気なくキャンペーンのデザインを見ていたのですが、実はそこには、意識していなかった数々の工夫があったのです。それを自分がどのように身につけて解釈していったのか、何に気をつけているのかを振り返りながら、メルカリのキャンペーンデザインに隠された気遣いや技を解剖していきたいと思います。
キャンペーンとは
まず、このnoteでいう「キャンペーン」とは、お客様に何か条件などを達成してもらい、それに対してポイントやクーポンなどのインセンティブを付与したりする一連の企画のことを指します。ここでは、以下のようなキャンペーンを例にお話しします。
通常、キャンペーンは担当チームのプロデューサーの企画から始まり、効果や設計を分析するBI(Business Intelligence)チーム、お客様視点で内容や情報の精査を行うCS(Customer Support)チーム、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)などの法律観点でキャンペーンを成立させるLegalチームなどの多くの関係者の一人として、デザイナーがアサインされます。
例えばメルカリのキャンペーン企画だと、「出品すれば100ポイントもらえる!」「メルペイを使うと100円分還元!」のようなものが、それにあたります。
キャンペーンを5つの階層に分解すると、以下のように整理できます。
1. 表面:できたデザイン。トンマナをつくる色やフォントなどの各要素
2. 骨格:LP(Landing Page)や、バナーのレイアウト・構成
3. 構造:メルカリアプリ内でバナーやお知らせをタップ→参加ボタンを押して条件を達成する→後日付与される、という流れ
4. 要件:企画骨子。1個出品すると100円もらえる、の部分
5. 戦略:夏の買い替え需要を狙って出品者を増やす!など、企画の目
キャンペーンLPでは、企画全体が見える場としてひとつのページの中にそのすべてが表現される必要があります。
メルカリキャンペーン5大要素
さて、キャンペーンについて理解できたので、次はキャンペーンデザインの構造を見ていきます。
多くの場合、キャンペーンを行うときには専用のLPがクリエイティブの中心として作られるので、今回はそのLPのメインビジュアルを題材にします。
僕の経験上、メインビジュアルには以下の5つの要素が含まれていることが多いとわかりました。
1. キャンペーン名:キャンペーンの名前
2. 条件:キャンペーンでインセンティブをもらう条件や対象者の説明
3. インセンティブ:キャンペーンでもらえる報酬のこと
4. キャッチフレーズ:キャンペーンの魅力や狙いを端的に伝える文章
5. 期限:キャンペーンには期限があるので、その記載
ここでは、上記5つを総称してメルカリキャンペーン5大要素とします。この5つの他には、お客様の誤解防止や景表法上の理由で表記する注釈文言なども頻繁に使われます。
例えば、先ほどのキャンペーンを上記の構造で分解すると……
このようになります。
メインビジュアルは、お客様がLPに訪れて初めて目に入る場所。ここでは「メルカリらしさ」と呼ばれる、デザイン上の指針が重要になります。なかなかうまく言語化できないものではあるのですが、僕は「誰にとっても簡潔かつ魅力的であること」と理解しています。
例えば、ビジュアルで使う商品は全年齢向けに選ぶ、トンマナは極端なターゲットに寄らないようにする、視認性は絶対担保する、などなど……。 その「メルカリらしさ」を叶えながら前述の5大要素をうまく料理してキャンペーンを伝えることが、僕たちデザイナーの仕事です。
さて、次に、先ほど挙げた構成要素を詳しくみていきましょう。
もし同じスキームのキャンペーンがあっても、狙いや追いかける指標が違えばもちろんデザインも変わってきます。とすると、要素の有無や強さ、大小で、色々なキャンペーンの狙いが見えてきそうです。以下では、何を優先するかでどのように構成を変えるべきか、考えていきます。
キャンペーン名
ときには省略されることもあるキャンペーン名ですが、反対に強く押し出される時もあります。例えば、季節に合わせたものやインセンティブのスキームが複雑なものはキャッチーなタイトルで一括りに表現し、それをメインの訴求として据えます。その他にも、CMなどで大々的に露出しているキャンペーンはその認知を活用するために共通のキャッチーなタイトルを伝えます。
参加条件
参加条件は、お客様にやってほしいこと(=企画の目的)を示す重要な要素です。さらに、「初めての方なら〜」など、特定のターゲットを名指しすることで自分ごと化を狙う時も。
インセンティブ
インセンティブは、お客様にとって一番関心のある要素です。そのため、メインの訴求として据えられることがもっとも多いです。
そのため、まずはインセンティブが訴求の中心に置かれています。まず何がもらえるかが魅力的に伝わることで、はじめて内容に興味をもってもらうことができます。
さらに、インセンティブのみメインビジュアルとして成立することも。内容がシンプルになるのはもちろん、メインビジュアルの高さを抑えられるのでコンバージョンにつながるボタンの位置をファーストビューの中でもより中心に持ってこられる利点もあります。
キャッチフレーズ
キャッチフレーズは主に補助的な役割で使われます。ある程度長さのある文を置くことも可能で、うまく使えばキャンペーンの目的や狙いなど、複雑な要素を効果的に伝えられることも。漫然とした情報をまとめ、お客様に「で、一体なんなのか?」を伝えることができます。
ただし、あくまで補助として扱うのが重要です。自由度の高い要素だけに、本当に必要かをしっかり考えて使わないと、一気に情報量の多い複雑なビジュアルになることもあります。
期限
キャンペーンには必ず期限が存在するので、これもまた重要な要素です。ちゃんと期間内に目標を達成してもらうために、しっかり理解してもらう必要があります。
また、「24時間以内!」など、極端に短い期限の場合は、それ自体が企画としてお客様に行動を促す強い要素になることもあります。急がないともらえない!というイメージが、アクションにつながるかもしれません。
こんなときどうする?
ここまで書いてきたように、色々なキャンペーンのパターンがあることが分かります。よし、これでどんなデザインでも作れる!と思うのですが、キャンペーンがいつでも型どおりにデザインできるとは限りません。キャンペーンはその時の時勢や、CMなどとの連携、景表法…色々な要素が絡みあってできています。何を一番に伝えるべきかチーム内で意見がまとまらないときもあるのです。
ここでは、先ほど紹介したパターンに当てはまらず、僕が印象に残っているものについて、どのように考えていったのかご紹介します。
企画性の高いもの
キャンペーンの中でも、季節や時勢などを捉えた企画性の高いもの場合があります。キャンペーン名や企画を押し出した訴求がメインとなる場合が多く、インセンティブなどを強く打ち出せないときも。
キャンペーンは開催するまでどのように反応されるかわからないので、数字に直接結びつきづらいデザインではなかなか議論がまとまらないこともあります。こういうときこそ、むしろ徹底的に、みんながワクワクする魅力的なデザインを作る必要があると学びました。
普段はいろいろなデータや過去の検証に基づいてチームで考える部分も多いですが、こういうときこそデザイナーの力の見せどころなのかなと感じます。
▲ 寄付プロジェクトの例。過去にないプロジェクトだったが、金額などの数字よりまずは寄付の持つポジティブなイメージを伝えるようにデザインが作られている。
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あれも言いたい、これも言いたいパターン
キャンペーンLPのメインビジュアルには、決して多くの情報は入りません。狭いエリアの中で、本当に伝えたいことを精査する必要があります。しかし、もらえるインセンティブがたくさんあるキャンペーンなど、押し出したいことがなかなかひとつにまとまらないこともよくあります。
そういった時にとにかく頑張って小さいエリアに要素を詰め込むことは得策とは言えません。情報量が多くて豪華に見えると思いきや、実際に見た人が理解できる内容は格段に少なくなります。どれだけお得なキャンペーンでも本当に伝えたいことは1つ、多くても2つ程度に絞ることで、それぞれの要素が魅力的に見えてきます。それでも内容が複雑すぎる場合は、本当にこのスキームでいいのか、立ち返って考えることも必要かもしれません。
実際にキャンペーンデザインの進行の中でも、要素が複雑になってきたときはチームで再度本当に伝えたいことを議論しスキームから見直すことがあります。デザイナーの発想が、ときにキャンペーンの方向転換の決め手になったりもするのです。
▲ うまくいっていない例。まずはデザイン以前に立ち返って情報の整理からした方がよさそう。
最後に
ここまで見ていただいたように、キャンペーンのメインビジュアルひとつとっても、色々な要素や工夫からできあがっています。同じようなキャンペーン内容でも、追いかける指標・数字やその時の世の中に合わせて、まったく違うクリエイティブが生まれることもあります。もちろん僕も、これまで紹介したパターンや経験に習いながら、よりよい解決方法を模索していかなければなりません。
そもそも、キャンペーンは、お客様から見ると「参加すれば何かがもらえる嬉しい企画」なはず。その魅力や鮮度を失わないよう、いろいろな方法で「伝える」ことができれば、必ずお客さまにより楽しんでもらえると考えています。僕もまだまだ修行中ですが、よりわかりやすく、魅力的にキャンペーンを伝えられるように頑張っていきたいと思います。
ちなみに、僕のキャンペーンデザインの師匠である、tnkさんの記事(かっこよさにとらわれない。伝わるクリエイティブの3要素。) では土台となる考え方が別の角度から詳しく紹介されています。こちらもぜひご覧ください!
執筆・図版作成:nomiyama
編集: crema / taiyo