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甘酸っぱ痛い

新生活の初日

同期入社した人達は、ほとんど年上だった、

慣れない朝の通勤電車、スーツ、メイク。
ドラマなどでしか見たこと無かったようなオフィス。

不安と緊張が心を、体を支配した。

この日に何となく、この場所で長くは続かないだろうと思ったのだが、後にその予感は的中してしまい、夏頃には仕事を辞めて、社会人の生活から一旦降りて、休養せざるを得なくなってしまうのだった。

しかし、初日から絶望しかなかった、というわけじゃなかった。

希望の光みたいな存在

こんな年下の自分にも気さくに話かけてくれる同期の人がいた。
その人が自分にとって、現実での初恋の人だった。それまではテレビの中の人や2次元などだった。

なぜか実家からかなり遠めの職場を選んでしまったが、その人も自分と同じ地元から通勤していた。微笑みは優しい陽の明かりのようで、でもやはり年上だからかしっかりしている人だった。

研修会などで自分が発することに対して、不思議そうな、難しそうな顔をして聞いていたし、視線もそんなに合わなかったから、自分の片思いなのは間違いないだろうなとは思っていた。でも、その後それぞれ遠い違う場所へと配属されたあとでも連絡を取り合っていて、自分が発することに対して不思議だねと言って少し面白がってくれてるようだったので、それは嬉しくて幸せだった。
その人がいたおかげで、この後の闇へと続いていくような日々も、どうにか生きていけた。

夏頃に自分が辞めたあと、食事へ誘ってくれたのは相手だった。

地元の少しシャレてる場所で食事をして、今のこと、将来のことを語り合った。緊張していたのもあってほとんど記憶もないけど、楽しい時間を過ごせた。

その場であったか、連絡を取り合う中だったか定かではないが、相手から
「不思議な子だね(笑)」
と言われたのと同じくらい印象に残っているのが
「生きるのが大変そうだね(笑)」だった。

賛成と反対、双方の意見が思い浮かんでしまったり、相手の気持ちを読もうと思いすぎたり、優柔不断だったりする自分は、度々息苦しくなっていた。気楽に、が苦手で、考えすぎて自分で自分を苦しめてしまうのだった。
そんな自分の心の動きは長く一緒にいる人でないと分からないことだと思っていたが、出会ってまだ半年ほどしか経っていない相手に見抜かれた上に、「生きるのが大変そうだね(笑)」とハッキリ言われたことに驚いた。
思われたとしても、ハッキリ言ってしまう人はそれまでいなかったので、相手の事を面白い人だと思った。

初恋はあっけなく散る

もしかして奇跡的に相思相愛になれたりするんじゃないのか?!
と僅かに思ったが、
その後、相手を今度は自分から食事などに誘った時に、
「最近恋人が出来たので2人きりは難しい」
ということを言われ、そこで自分の初恋は片思いのまま終わった。
その時までも連絡は毎日のように、かなり取り合っていたが、ショックを受けた自分は、それに返信をせず、ショックをその時していた仕事へのエネルギーに変換させて大きな成長を遂げた。

その日以来連絡は途絶えた。自分が途絶えさせただけ。

人として面白かったから、あのまま何事もなかったように返信して、同期としての繋がりぐらいは保っておいても良かった気がする。なんで返信しなかったんだろうと後悔してる。

あの時点で返信を途絶えさせたから、相手も察しがついて、連絡も取りづらくなってしまったのだろうと思う。

なにかの偶然がなければ、きっともう会えない。

今は出会いをもっと大切にしようと思って、話したいと思った人とは話そうと努力はしているが、人見知りが邪魔をしてなかなか話しかけられずにいる。

夢で濃くなる記憶

なぜこんなことを今書いたかと言うと、
昨夜見た夢に、その初恋の相手が現れたから。

夢の詳しい内容は、これを書いている間に忘れてしまった。
でも、相手と何かを語り合っているような夢だった。

夢だけど、久々に会えたことが本当に嬉しかった。

でも目覚めてしまった。
目の前に見えるのは家の天井。

やっぱり夢だったんだ、もう現実世界じゃ会えないのだろうなと思ってたら、涙が流れていた。

相手は度々、夢の中に現れるので、
もう会えないだろうから忘れよう、と思っていても、
記憶には寧ろ刷り込まれていってしまう。

覚えていたら、どこかでまた会えるのだろうか。

そもそも、連絡は途絶えさせただけで、消えてるわけじゃない。

いま連絡をしたら、返事はくるのだろうか。

相手はもう、自分のことなど忘れてしまっただろうか。

相手だけじゃない、同期の仲間はみんな早々に、バラバラになってしまった。
ほとんどの人とはもう連絡も取れない。

また会える時がきたら嬉しい。

でもおそらく、自分と相手が再び繋がらないと、その時は来ないであろう。

自分が今連絡をしたら、なんだよ今さら、と思われてしまうか。

ブロッキングされていたらそれさえも届かない。

「お久しぶりです。元気にしていますか?」

こんな長期間連絡とってなかった相手に、
気軽に送信ボタンは押せない。

これで相手が自分のことを嫌な記憶として脳内保存していたら、相手を不快にさせてしまうし、
「あの時なんで返事してこなかったのに、今更元気にしてますか?じゃねーよ!ふざけるな!」
と思われて、さらにそんなこと言われた日には、仕事も手付かずになる。

連絡はしたい。でも送信ボタンは押せない。
また会えたらいいけれどたぶん会えない。

きっとそれぞれ今は新しい場所で頑張っている。

もしかすると会える会えないとか考えてるのも、
今は自分しかいないかもしれない。

相手に「生きるのが大変そうだね(笑)」って言われる理由は
こういう所にもあるのだろうな。

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