あなたが眠れなかった夜に
いま目の前で、あなたは永い眠りについている。
僕の到着は、あなたの寿命に間に合わなかった。
寿命なんかじゃなかった。
あなたは自ら寿命へと走っていってしまったんだね。
僕の存在が唯一の生きがいだったと教えてくれたのは、ほんの数年前だった。
何一つ明るくないというあなたの世界で、僕だけがあたたかく光っている、といっていた。
でも、そんな光もあなたに届かなくなっていたなんて。
静かに泣いているあなたの親族たちは、悲しく微笑みながら僕をあなたに会わせてくれた。
僕はあなたを救う事もできたはずだ。
あなたの人生を楽しませることもできたはずなのに。
僕の力は弱かった。
光は弱くなり過ぎた。
もし僕がタイムリープをできるならば、
あなたが眠れなかった夜に、闇だけが広がる部屋に、ロウソクのようなあたたかな光を灯したい。
泣き腫らした目で微笑むあなたを、優しく包み込みたい。
闇の中にいるうちに、闇の中でしか楽しめないことをしていたら、きっとまたその部屋にも光が差すから。
いま病室にも陽が差しているはずなのに、部屋中、冷たく重い空気で満たされている。
陽の光は、悲しみと苦しさの中心には届かなかった。
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