大切な一本の梅の木~見てよし加工して食べてよし~
私には思い入れのある梅の木が一本ある。
人に自慢できるほどの逸話はないが、一家の暮らしを見届けている立派な梅の木だ。
大粒の実が成るので「南高梅」という品種だと思っている。
家族が苗木を移植して以来、40年ものの梅の木だ。
毎年、早春に白い花を楽しみ、6月の梅雨入り前には実を収穫する。
今年も楽しみに梅の実の収穫に出かけた。
何と鈴なりになっているではないか。
欲が出て雨が降る前に一粒残らず一気に収穫した。
一本の木から大粒の実が16㎏も採れた。
例年の3倍もの重さだ。
私は、干さない梅漬けを作るのが得意。
「干すより漬けたそのままがおいしい」と説明しつつ、実は干すのが面倒なので漬けっぱなしにしている。
干す場所もないけれど・・・。
○梅のレシピ三種
我が家には果実酒用の4リットル瓶が5個ある。
1瓶に梅漬けなら梅2㎏、梅酒なら1㎏使うから、ざっと見積もっても10㎏が漬け込み最大量だ。
これを仕込むのはとても忙しい。
梅の熟成が進み過ぎないように、すぐに取りかからねばならないのだ。
【干さない梅漬け】
・少し熟している梅1㎏に対し塩180g(18%塩分)
・赤しそは梅1㎏に対し180g(18%重量)
・赤しその塩は35g(赤しその重量に対し18%重量)
梅の塩、赤しその分量、赤しその塩そろって18%とすれば覚えやすいので気に入っている。
梅漬けの塩の割合は20%が標準とされているが、15~18%でも保存は十分に可能。
① 梅はヘタを取り除き水洗いし、ペーパーで拭いておく
② ホワイトリカーなどで消毒した瓶に、梅と分量の塩を交互に入れていく
③ 4~5日で梅酢が上がり梅が熟して黄色くなったら、塩もみをした赤しそを入れる時期
④ 赤しそは前もって太い茎をカットしておく。分量の赤しそをよく洗い、分量の塩でもみアクを除いてから梅の上にのせ冷暗所で保存する
⑤ 夏が過ぎたら食べられるが、半年ほど寝かせると塩味と酸味が落ち着いて食べ頃
⑥ しその赤い梅酢は、別に取り出し新生姜を漬けて「紅生姜」にしても美味しい
【ブランデー梅酒】
・梅の1㎏に対し氷砂糖500g(50%)
・ブランデー1800ml
① 梅はヘタを取り除き水洗いし、ペーパーで拭いておく
② ホワイトリカーなどで消毒した瓶に、梅と分量の氷砂糖を交互に入れていく
③ ブランデーを注ぎ入れたら蓋をし、そのまま冷暗所に保存し青梅が黄色く熟すのを待つ
④ 早ければ3ヶ月後から飲めるが、1年経過すると味わいが深まる
【梅シロップ】
・梅1㎏に対し砂糖1㎏(同量)
① 梅は洗い、水に2時間~半日浸けてアクをとる
② 梅のヘタを取り除き、ペーパーで拭いておく
③ ホワイトリカーなどで消毒した瓶に、梅と分量の砂糖を交互に入れていく
蓋をして毎日瓶を転がして砂糖が溶けるのを助ける
3日から7日でシロップができる
④ 梅を取り出し、シロップは鍋で80℃くらいに弱火で煮る。そこでアクを取り除く
⑤ 冷めたら、消毒済みの別の容器に移して冷蔵し、3ケ月以内に消費する
○梅の種類と木の手入れ
梅はバラ科のサクラ属。
梅の実の生産県としては和歌山県、長野県、群馬県などが有名だが、全国各地に分布し家庭の庭先でもよく実がなっているのを見かける。
花は品種によって一重や5弁の淡いピンクや濃いピンク、白色がかわいらしく咲く。
果実は黄緑色の青梅が、淡い緑色から少し熟すと紅色に変化し、芳醇な香りが出て食の面でも役に立つ。
見てよし加工して食べてよしだ。
【加工に合う梅の種類】
【梅の木の話し】
手入れを怠った庭の梅は、一般に虫がつきやすいので嫌われるようだ。
バラが好きな私は、昨年からバラの肥料と一緒に梅の木の根元に同じ肥料を入れている。
害虫対策には、これもバラの害虫対策として使っている天然のニームオイル(害虫が嫌いな臭い)を散布している。
農薬を使わず自然に育てたいのだ。
全くバラ対策と一緒なのだが、こうしたことが今年の実の豊作に繋がったのだろうと思う。
○梅の健康効果と毒素の話
梅は酸味が強いので、加工して酸味と香りを楽しむ日本の文化に欠かせない果実。
【梅の酸味と香り】
私たちの体は、一般にエネルギー代謝がうまくいかないと、栄養素が不完全燃焼し、疲れやだるさを感じることがある。
梅の酸味であるクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などは食物の糖代謝に関係し、疲れ予防や回復に有効なのだ。
特に、クエン酸は唾液の分泌を促してくれるので、食欲を増進させ胃液や他の消化酵素の分泌を高めて、消化吸収を助けてくれる。
しかし、梅自体は、さほどたくさん食べるわけでもないので、たんぱく質、脂質、ビタミン等の栄養素は期待しない。
熟果の香りはベンズアルデヒドで、口から鼻に広がると甘い芳醇な香りがさわやかな気分にさせてくれる。
この香りがとても好きだ。
【梅の毒素アミグダリン】
青梅の実と種には青酸配糖体アミグダリンが含まれ、生のまま食べて人の酵素と一緒になると毒素が発生して、頭痛やめまいなどの中毒様症状を起こすことが知られている。
青梅のまま食べるのは危険!
ただ、アミグダリンは果実が熟すか、酒、塩、砂糖などで加工することで毒性が無くなる。
梅を煮付けたり酒や砂糖・塩に漬けて強制的に熟成を進めるのはそのためだ。
今年の梅仕事もやっと終わった。
梅の木にお礼の肥料をあげようか。
大変だったが、なった梅の実をゴミとして捨てずに加工したのは、少しだけSDGsに貢献したような気持になって嬉しかった。
早ければ3ヶ月後には口にできる。
梅の健康効果で、暑い夏が来ても乗り切れそうだ。
最後までありがとうございました。