エッセンシャルワーカー最前線の記録 プロフェッショナル仕事の流儀「自分を拾う、夢を運ぶ〜ゴミ収集員・岳裕介〜」
「すごい、かっこいい!」という言葉が、自然に口をついて出た。
コロナ禍でスポットライトが当たるエッセンシャルワーカー、ゴミ収集のプロに密着したドキュメンタリー。一晩で200カ所の事業所ゴミを回収し、3トンを一人で運ぶゴミ収集員・岳裕介。徹底して効率を追求する一方で、散らかったゴミステーションを入念に清掃する姿に心を打たれた。志を持って仕事に臨む姿に惹きつけられた。
効率を追求する理由
ゴミを回収する順番、車の留める場所、乗り降りのスピード、どこをとっても一流の仕事人の姿だ。ゴミ収集員・岳裕介は徹底して効率を追求している。しかし、それはただ仕事を早く終えるためではない。カラスに荒らされて、散らかったゴミステーションがあれば徹底的にそのポイントを清掃するのだ。普通の収集人はそこまでしない。一つのポイントに30分かけることもある。その理由を問われて「やっぱり街がきれいだと気持ちいいじゃないですか」と笑顔で答える。
また、収集ゴミの中に分別されていないものを発見すると、ひとつひとつ取り除いて分別する。一瞬でも注意を怠ると事故になることもあるのだ。岳は、仕事が終わった後に分別を守っていない店などを訪問してゴミの出し方をお願い・指導することもある。違法投棄がなされた場合は、ゴミの中身を徹底的に調べてその会社の人と話し合うのだ。ケンカを売りに行くのではない。顔と顔を合わせて「一緒にきれいな街をつくろう」と語り掛ける。
目の前の仕事から逃げない
今では、まるで天職のようにゴミ収集の仕事に集中している岳も、最初からそうだったわけではない。仕事を始めて数年後に、大学のキャンパスをゴミ収集している最中に「くせ~!こんなところ走るんじゃねえよ」と学生たちに嘲られた。その言葉はナイフのように岳の心に刺さった。
その日から岳はゴミ収集の仕事を恥じるようになった。しばらくの間、休みの日も外に出ることができなくなったほどだ。何よりも、自分自身が、この仕事を「臭い」「卑しい」と思っていることに気づいていたのだ。しかし、きっかけが訪れる。それは、ある日、収集ポイントに置いてあった一枚のねぎらいのメモだった。この仕事を認めてくれる人がいる、必要としてくれている人がいるということに気づいたのだ。
スイッチが入った岳は、一度決めたからには仕事から逃げないことを自分に誓った。誰よりも早く出勤し、誰よりも遅く帰宅した。会社に帰ってからはゴミ収集車を徹底的に磨き上げ清掃した。何十人ものスタッフをまとめるリーダーになってからも、危険な場所やトラブルには率先して対応する。やがて岳には夢ができた。自分の子供に、ゴミ収集の仕事を「かっこいい」と思ってもらえるように、全身全霊で仕事に打ち込むようになったのだ。
密着期間中には、クラスターが発生した病院からの事業所ゴミを感染を予防しながら必死で回収する岳の姿が映し出される。彼はリーダーだから部下に任せても良いはずなんだけど、そうはしない。目の前の仕事から逃げないのだ。不法投棄のゴミを捨てた会社を探して口頭で指導するために何日も張り込む岳の姿もある。
自分の仕事に誇りを持つ
岳と話すと、すぐにこの男が本気であることに気づくだろう。自分で自分の仕事を恥ずかしいと思っているうちはプロの仕事はできないことが分かった。どんな仕事をしているかということより、どんな姿勢で仕事をしているかの方がはるかに重要なのだ。自分が納得して仕事に集中しているなら、誰かから嘲られても、軽く見られても心を乱されることはない。
岳の仕事ぶりを見ていると、仕事に対する誇り・その仕事から恩恵を得る人への心配りが感じられて、まさにプロフェッショナルの仕事を見せつけられた気がした。今の働き方を見直さざるを得なくなるとても良い番組だった。
大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq)